第199話 お風呂で


 「無理よ。私達がというより、日本中の協力を得られても無理ね。もう起こるものとして、その後の事を考えておいた方が良いわ」


 「やっぱそうだよね」


 家で一緒にお風呂を入りながら、コロナについて相談する。美しい身体に理性が飛びそうになるが、今は真面目な話をしてるので、鋼の精神で耐える。


 「どこかに大量に倉庫を借りて、マスクとか衛生用品をいっぱいストックしておくか。俺達がお金を出して今のうちから大量生産しておいて、流行り始めたら安価で放出したらほんの少しはマシになるだろ。別に赤字になっても良いし」


 マスクの転売とかあったからなぁ。マスクが2000円とか3000円とかするって世も末だろ。どんな時でも儲けようってする根性が凄い。被災地の火事場泥棒とやってる事は変わらんぞ。


 「正直、私達がそこまでやる必要があるのかって思うけどね」


 「起こるって知ってるのに、何もしなかったらバチが当たりそうじゃない? なんでか知らないけど、回帰して未来の知識があって、ステータスボードなんてのもあるんだ。多分正しい使い方ってこういう事だと思うんだよ」


 「まあ、それもそうね」


 今までは自分達の欲求を満たす事にしか、ほとんど使ってこなかったステータスボードと未来の知識。


 神様がいるのかは知らないけど、いるのなら今こそ恩返しのチャンスではなかろうか。いや、神様は人間の事なんて知らねって思ってるかもだが。


 「軌道に乗るまで散々脱税してきたからな。こういう時に還元しないと」


 「なんか予め準備してたらしてたで、陰謀論が立てられそうな話よね」


 「俺達が流行らせたとか言われそうではあるな」


 事前に分かってないと、マスクとか準備するのはおかしいもんなぁ。まあ、その辺の言い訳はなんとでもなるけど。


 「コロナって流行ったのはもう少し先だけど、海外では別の名前ですでに罹患者はいるんじゃなかったかしら? それが変異してコロナになったとかだったはずよ。その危険の対策してたって事で良いんじゃない?」


 「なるほど。それでいくか」


 それなら過剰防衛気味だけど、マスクやらを大量に保管しておく理由にはなるか。


 まあそれでも、知ってたならなんでもっと言わないんだとか文句垂れる奴は出てくるだろうけどな。


 言っても対策とか絶対しないくせに。人間は事前準備しとけよとか言っても、いざ事が起こるまでは何もしない人が大半だから。


 そんな人達までは流石に構ってられませんよ。


 まあ、それでも近いうちに配信で一回ぐらいは軽い注意喚起はしておくか。意味があるかは分からないけどね。


 「そうと決まればすぐに動かなきゃな」


 「忙しいって言ってるのに次から次へと仕事を増やすわね」


 仕方ない。

 やりたい事、やらないといけない事が多すぎるんだ。なんでも出来る故の弊害だな。


 昔は一日が27時間ぐらいあれば良いのにとか言ってる奴を馬鹿にしてたんだけど。働く時間が増えるだけじゃんって。


 でも今ならその人達の気持ちが分かるかもしれん。時間が足りないってこういう事だったんだな。


 あの時馬鹿にした人全員に謝ります。

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