日記

めかけのこ

夢と不安と

 小さい頃の夢は何か、そんな話になった。

「ぼんやりと生きてきたからなぁ…」なんて笑って誤魔化したが、昔から物書きになりたかった。

 小学校、中学、高校と歳を経るにつれて、思い描く物だった”将来”が音を立てて近付いてくるうちに、言いようもない世の理不尽を感じていた。

 今日まで許されていた”甘え”が明日には許されない。向こうからやって来ていた明日は、自分で作るものになっていた。

 周りの連中が、やれ警察だの小学校の先生だの間口の広い”成れる”夢を語ってる中、物書きなんて俺は犯罪者予備軍かのような疎外感を感じていた。

 いつの間にか、皆と同じように”夢”の無い”計画”を口にするようになっていた。

 気付けば大学で理工学を学んでいた。

 知的好奇心に促されていた学びは受験のための訓練に。今日の充実の証だった睡眠は明日を乗り切るために。…楽しんでいたはずの創作は夢を生活に変えるために。そんな風に歳を重ねてきた。

 かつて純粋だった心がどんどん輝きを失っていくのがわかった。1度たりとも大人になんてなりたくなかった。

 おかしいだろ。

 俺は社会的悪か?不安定な道がそんなに悪いことか?俺は事案なんてラベルで、近所の小学校の保護者にメールが回されてんのか?

 ただ俺は俺の心を満たすついでに、人の心を動かせるような語り草で日銭を稼げりゃあ良いってのに。ついでのついでに近所の子供に挨拶してるだけだってのに。

 今日もFANZAで”ロリ物”のAV見て、その偽物で満足してやってるってのに。本物には手を伸ばそうともせずに目の前のちり紙に手を伸ばしてやってるのに。

 なぁ?俺はそんなに異常か?

 お前らは世間にレールを敷いてもらってるから明日を歩けるだけだろうが。俺は細い細い綱の上をどうにか渡り切ろうと向こう岸に手を伸ばしてるだけだろうが。

 お前らと俺で何が違うんだ?

 頼むから”偉い”なんて言葉を使って既定路線を肯定しないでくれ。頼むから壁紙が小学生の足でも通報しないでくれ。

 俺の生き様を否定しないでくれ。

 本を読む度に、物語に触れる度に、心揺れる度に、憧れの思いが燃え上がったって良いだろうが。子供の頃から尽きることの無い衝動だけで今を生きてたって良いだろうが。足の指が7本だったらもっとシコいのになぁなんて思っても良いだろうが。

 そんなに企業就職や公務員が嬉しいか?理性で動くのがそんなに楽しいか?

 俺はただ、物書きになりてぇんだよ…。俺はただ、嫌なことを嫌だと、好きなものを好きだと言ってるだけなんだよ…。

 こんな些細な夢くらい、許してくれよ…。


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