第131話
食事が終わった後、俺は再び先程の部屋に連れて行かれた。
そして朝まではこの部屋を出ないよう命令された。
俺は部屋まで連れてきた小物感漂う男がいなくなっただろうタイミングで、部屋の扉を少し開け、廊下の様子を観察した。
しばらく廊下を見ていたが、人の気配は無い。
三人の他にも団員はいるという話だったが、たぶんハッタリだろう。
このアジトに大勢の人間が潜伏しているようには思えない。
俺は扉を閉めると、今日分かった盗賊団の内情をまとめることにした。
この盗賊団の力関係は、グリフィンが一番上、バーナードが次、小物感漂う男が一番下で間違いないだろう。
小物感漂う男は、料理を運ぶ際、最初にグリフィン、次にバーナードの順で運んでいた。
さらにグリフィンのことはグリフィン様と『様付け』、バーナードのことはバーナードさんと『さん付け』で呼んでいた。
だから、上下関係は…………あれ。
そこまで考えたところで、頭の中に引っかかるものを感じた。
盗賊団の件ではなく、別のこと。
そう、以前出会った魔物のケイティとレイチェルのことだ。
ケイティとレイチェルは、俺と魔王リディアに対してどのような対応をしていただろうか。
「……俺のことは『ショーン様』、魔王リディアのことは『リディアさん』と呼んでいた」
さらに夕食に何を食べるか質問をする際、魔王リディアよりも先に、俺に質問をしていた。
「二人はリディアさんが魔王だと気付かなかった?」
いいや、そんなわけはない。
ケイティは出会ったとき、開口一番「魔王様」と呼んでいた。
…………誰のことを?
考えられる人物は、一人だけ。
俺だ。
「いやいやいや、俺は魔王になったことなんてない。そもそも人間が魔王になれるわけもない」
では、やはり魔王リディアが魔王なのだろうか。
魔王リディアは自分で魔王と名乗っているが、彼女が誰かに魔王と呼ばれているところを見たことがあっただろうか。
……いや、ない。
誰一人として、彼女のことを「魔王」とは呼んでいなかった。
「じゃあ彼女は、誰?」
彼女は何の目的があって魔王を語っているのだろう。
どうして俺に魔王の名を語りながら近付いてきたのだろう。
「彼女は……俺は…………誰だ?」
突如として、今まで信じてきたものが崩れ去ってしまった。
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