第15話 福岡県民、皆とお出かけする。




 いつものティータイム。

 コーヒーと手作りのお菓子を持って執務室に向かった。


「団長、ついでに副団長、飲み物とお菓子をお持ちしました」

「あぁ、置いておいてくれ」

「ついでは余計ですよ」


 ちらりと応接スペースを見ると、団長のお昼ご飯は手付かずで置かれたままだった。

 食べなかったのかと聞くと、お腹は空いていない。コーヒーもいらない。と言われてしまった。


「……はい、承知しました。ハンス副団長は飲んで……くれる?」

「っ…………」

「ええ、もちろん。いただきますよ」

「うん。ありがとう……ございます」


 なんとなくロイ団長が息を飲んだ気がしたけれど、怖くて振り返る勇気はなかった。

 副団長は飲んでくれるらしい。ホッとしたことで、自然と笑顔になれた。


「後で下げに来ます」


 ペコリと頭を下げて団長たちの執務室から出たとこで、ジョージと数人の団員に出会った。


「お、カリナじゃん。今日、元気ないって聞いてたけど、体調でも悪かったのか? 大丈夫?」

「ううん。体調は悪くなかよ、大丈夫」

「カリナ、カリナ! ほら、街で買ってきた飴! 分けてあげるよ」


 まだ十五歳のケニスくんが、私の手を取ってカラフルな紙に包まれた飴玉を乗せてくれた。

 彼は私のことを妹扱いしている。優しいお兄ちゃんぶりたい、可愛い男の子だ。


「ありがと!」


 皆の優しさに支えられて、異世界でもなんとか頑張れてる。

 頑張ってここで生活出来ている。

 もっともっと、頑張らないと。




 私が落ち込んでいるのがバレているからなのだろうか、使用人棟のお姉様たちは何も聞かず、ただ楽しくおしゃべりしてくれる。


「今度の休みは、平民街に皆で出かけましょうよ!」

「えー! 私、その日は夜勤なのにー」

「いこー! いこー!」


 そうして、一週間なんとかやり過ごした。


 めいっぱいおしゃれして、使用人棟の前で皆で待ち合わせ。

 女子五人でキャッキャとおしゃべりしながら歩いていると、騎士団の顔見知りの男の子達が六人で固まって何かモソモソと話していた。


「ケニスくーん! 何してんの?」

「はい? え? あれ……もしかしてカリナ? そんな可愛い格好するんだねぇ」


 誰か分からなかったと言われてしまった。


「えー? そんなにいつもと違うやかぁ?」

「お化粧もしてるでしょ? 大人っぽいね」

「えへへ、ありがと」


 ――――まぁ、いい大人なんやけどね。


「「騎士様たち、今からお出かけですか?」」


 お姉様たちがキラキラというか、ギラギラな目なのにキュルルンとした笑顔と声で、騎士団の子たちに話しかけていた。


「え、ええ。今からカフェに出かけようかと話し合っていたんですよ」


 ――――おや? おやおやおや?


 男子も女子もモジモジ。何だか懐かしい雰囲気。

 これは、双方ともに出逢いを求めていたパターンな気がする。

 ここは年齢的に真のお姉さんがリードしてあげようではないか。


「おー! じゃ、一緒に出かけん?」


 私の一声で、全員がいいねと賛同してくれた。


 女子組は平民街に行く予定だったけれど、騎士組は全員が貴族のご子息で行く予定だったのも王城すぐの貴族街。

 予算的な問題で平民街でもいいかと聞こうと思っていた。


「カリナ、お願いがあるんだけどさ」


 ジョージがコソコソと耳打ちしてきた。

 どうやら貴族街に新しく出来た『スイーツメインのカフェ』に行きたかったそうなのだ。

 ところが、女子ウケ抜群のカフェだったため、お客さんがご令嬢ばかりで、男子のみでは入り辛くどうしたものかと、モショモショと話していたらしい。


「あははは! 可愛かね! 甘いもの同盟なん?」

「しーっ! 聞こえるっ! 笑うなって! でさぁ、上手いこと話してくれないか?」

「まぁいいけど? カフェはおごり?」

「ああ! もちろんだとも」


 『最近出来たカフェがとても良い雰囲気だから、一緒に行ってみないか。皆と仲良くなりたいから、どうせならデートみたいな雰囲気にしよう?』という提案があったと女子組に伝えると、女子たちはキラキラとした顔になった。


 ――――うむうむ。よか雰囲気になった!



 

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