第228話 バードキス

「うにゅぅ、苦しいのじゃ」

 ゼスはそんな声を上げてはいるものの、抱きつかれる事は嬉しいようで、ちょっと言葉に喜びが混じっている。

「もう大丈夫。ありがとう、ゼス」

 私もそんな言葉をかける。こうやって情を交わして仲を深めて行くのだろう。良い環境だ。


 そんな抱きついた状況で、何もしないはずがなく、ゼスは爪先立ちになって私の唇に自分の唇を重ねる。

ちゅっ

と、可愛い軽い音と共に、柔らかい感触が一瞬だけする。

「ふふふふふ」

「へへへへへ」

 ふたりとも、なんとも間の抜けた笑い声を出して顔を崩す。そうそう。こういうのが私たちには心地よいのだ。こうでなくては。


 抱きついていた身体を離して、とりあえず元の仲に戻る。

「そうそう。ゼスに新しい寝間着を買ってきたから、着てみて」

 買った寝間着を取り出すと、ちょっと不服そうなゼス。

「ワシにそんなの必要ないのに。どうせ脱ぐんじゃし」

「ベッドの上で裸でいるのも、目のやり場に困るのよ。それにそんなにしょっちゅう抱き合う訳じゃないじゃない」

 ちょっとした反論だが、服を脱がされるのは毎度の事なんだよな。


 まあそんな女子会パジャマパーティーも考えつつ、ゼスに寝間着を渡す。着てくれるかは、本人次第だ。

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