第83話 今日は──楽しいトーク
「え、澄人君。流石にそれは」
「でも、これが一番だって璃緒が行ってたし」
「おおっ、大胆なのじゃ!」
「はたから見れば恋人同士やなぁ」
「ちょっと、恥ずかしいよ」
「確かに、でも周囲に人はいないし加奈も嬉しそうだからこのままいくよ」
そして俺はこの場を去っている。加奈は──さすがにお姫様抱っこは恥ずかしいのだろう。顔を真っ赤にしてあわあわと手を振っている。
「まあ、澄人君が──澄人君がそれがいいっていうんならそれでいいけど」
けど、嫌がっているようではないのはわかる。おんぶするよりも、嬉しいならこっちの方がいいか。
それに、他の配信者は戦っている最中に逃げてしまったせいでもういないから周囲の視線を気にする必要もない。
加奈が喜んでくれるのが一番大切だ。
「加奈──お姫様抱っこされてすっかりヒロインやな」
「ろこちゃん。そこまで言われると恥ずかしいよ」
「じゃあ、帰るよ」
「う、うん」
証拠に、加奈は満面の笑みを浮かべて俺を見ていた。やっぱり、喜んでくれた。それが一番だ。これからも、出来るかわからないけれど加奈が喜んでくれそうなことを進んでやっていこう。
そして、俺たちはダンジョンから帰った。
今までで一番強かった敵。一人じゃとても勝てなかったけど、4人がいてくれたから勝つことができた。
これからも、みんなで力を合わせて戦っていきたい。
一週間後の日曜日。今日は5人で加奈の家にいた。
「お菓子おいておくので、よかったら食べてください」
たけのこの形をしたお菓子「たけのこ」を小皿に入れた。それから、加奈がコップを用意して、冷蔵庫から取り出した紙パックの飲み物を持ってくる。
「アイスティーしかないけど、大丈夫??」
「大丈夫だよ。気づかいありがとうね」
やはり、加奈はこういった気づかいが上手だ。常に周りを見ていて、どうすればこの場がうまく回るかを考えてくれている。
こういうところは、加奈の長所だと思う。
「ありがとなー、いただくで-」
ろこが皿に入っている「たけのこ」をパクパクと食べ始める。その間に、加奈と璃緒、俺のカメラのセッティングが完了。
身バレを防ぐために、カーテンを閉めて景色を見えなくして。
「じゃあ、コラボ配信。始めちゃっていい?」
「大丈夫です」
「おおっ、もう始めるんか。待ってな」
ろこが慌ててたけのこを食べる手を止め、配信の準備へ。
そろそろ始まる。俺たち5人。俺とネフィリム、璃緒、そしてかなろこ全員でのトークタイムが。
どうしてこうなったかというと、ダンジョンから帰って数日後。
みんなの体力も回復してきたあたりで、璃緒が提案してきたのだ。
「みんなで配信しながら色々話すのはどうですか? 絶対注目されますよ」
「配信者コラボのトークショーってやつか? うちらならやったことあるし、ええで」
「別にいいけど、うまくできるかなぁ」
配信者同士のトーク。他の配信者は、コラボ企画という形でやっているらしく、視聴者を増やす目的でよく行われてるのは知ってる。ただ、俺はいつも一人だったからトーク自体がうまくない。だからどうしても不安になってしまう。
だからあまり賛成はできなかった。が、その旨を伝えると──。
「大丈夫です。私がうまくフォローしますから」
「澄人殿。楽しそうなのじゃ。わらわもやってみたいのじゃ」
ネフィリムは乗り気、璃緒もかなり前向きな態度だったので、断ることができなかった。
結局、経験のある璃緒がその経験を生かしてリードすることで合意。ちょっと不安が残るが璃緒がいるなら、自然と出来る気がした。
「じゃあ、今度の日曜日──色々セッティングするのでその時はよろしくお願いします」
「よろしゅうな。うちらも経験はあるけど、璃緒はんがセットした方がうまくいくと思うしな。まあ、出来ることがあったら協力するで」
という事で、全員集まって配信しながらいろいろ話すこととなった。
初めての、コラボのトークタイム。俺だけ放送事故同然とかにならなければいいが。とはいえ、すでに5人でのトークタイムの予告は済ませていて、視聴者はもうそれを待ち望んでいる。やるしかない。
そして、璃緒が周囲を見た後スマホを手に取った。
「とりあえず、配信の準備をお願いします。コメントも、それぞれ見れるようにしてください」
「わかった」
「ほないくで~~」
「楽しみなのじゃ」
そして俺たちは、それぞれアプリを起動して配信の準備を始める。
「配信始まりです。よろしくお願いしますね」
初めての戦いではない配信、どうしても緊張してしまう。
「配信始まりです。よろしくお願いしますね」
挨拶をした後、配信のコメントがそれぞれ流れ始めた。
“今からからすみの4Pが見れます”
“かなろこに璃緒ちゃん、おまけにネフィリムとか豪華すぎだろ”
“色々聞いてみたいな。一緒にいて、感じたこととか”
俺のとこの視聴者たちがこの構図を見るたびはやし立てる。まあ、考えたら男1人に女の子4人だもんな。
まずは──どうすればいいんだ? それがわからず璃緒の方に視線を向けた。
「とりあえず、視聴者の質問に答えましょう。視聴者の皆さん、質問とかありますか?」
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