第80話 助けられる、だけじゃ
行けると踏んで、さらに2人同時に突っ込んでいく。
しかし俺たちの攻撃に、八岐大蛇はパワーで殴り返してきた。
力いっぱいの攻撃に対し、攻撃を受ける。しかし、ただ受けるのではない、籠められ力を円を描くように体を回して受け流す。
「回転技 ──円輝──」
そして、力そのものを循環させ──その力で八岐大蛇にカウンターを浴びせた。後方に吹き飛ぶ八岐大蛇。
そこに、ネフィリムや加奈とろこの攻撃が炸裂する。一度吹き飛ばして距離をとれば、こっちも遠慮なく攻撃ができる。こういうチャンスを作ることが、こっちの勝ち筋だと思った方がいい。
かなりの威力、ダメージにはなっているはず。このまま八岐大蛇を追い込んでいこう。
「敵の力を利用してのカウンターですか、すごいですね」
璃緒が感激して、目を輝かせながら話しかけてくる。
「力がすごい敵は──今までにもいっぱいいた。そういう敵に、真正面から戦うとこっちも消耗しちゃうからね。強敵と連戦になっても負けないようにって、編み出したんだけどね」
「そうなんですね、技術的にも相当高いものを要求されますよねそれ、それをこんな真剣勝負で、すごいですよ」
「まあ、力ではとても勝てない敵に使う技だから──自然とこういう真剣勝負でしか使わないけど、もう慣れたよ」
そう、この円輝は八岐大蛇や、それ以上の超大型魔物との戦いで──そいつらの力に負けないために生み出した技。
当然難易度は高い、それは璃緒も理解しているようだ。
ちょっとタイミングがずれただけで打ち込まれた衝撃に体がダメージを受け、致命傷になる、失敗のリスクがある難易度の高い技。
魔力もそうだが、精神力や集中力も相当要求される。
まあ、圧倒的な力の差をひっくり返せる可能性があるのだからそれくらいのリスクはあるよな。
そして、気配がして再び八岐大蛇に視線を向けた。
「まあ、安心するにはまだ早いか」
「そうですね」
改めて八岐大蛇は立ち上がった。首は半分、息が上がっていてだいぶ消耗しているみたいだ。
加奈とろこが遠目から攻撃するが、口から光線を吐いてはじき返す。
そして、こっちに突っ込んできた。大丈夫、あいつの動きは読んでいる。
もう一度円輝を発動させて接近、殴り掛かってくる相手に合わせようとする。
次の一撃で、八岐大蛇は倒せる──そう考えて俺の剣に拳が当たろうとしたその時。
八岐大蛇は素早くこぶしを引いた。予想外の行動に、俺はとっさに身を引く。
そして、引いた瞬間に俺がいた場所に八岐大蛇の拳が炸裂。
なんとフェイントをかけてきたのだ。
本当にとっさだったので尻餅をついてしまった。倒れこみながら、拳が地面に激突した後を見る。木々が倒れ、見事にクレーターになっていた。
危なかった、さっきと同じようにしたら思いっきり攻撃を食らっていたところだ。
「学習するんでしょうね」
「そうだね」
油断大敵という事か──こういう奇襲みたいな技は、一度しか通用しないな。勝負を決めるとき以外に、みだりに技を見せるのは危険かもな。
そして、八岐大蛇は再びこっちへ突っ込んでくる。加奈とろこの援護は全く効かない。
そのまま思いっきり蹴飛ばしてきた。
至近距離出たのでかわしきることができず、俺と璃緒の身体は吹き飛び10メートルほど吹き飛んだ。
やはり2人だときついか──。
正直かなりダメージを受けている。それは璃緒も同じだ。どこまで持つかわからない。早く勝負を決めないと。
しかしそんなことお構いなしに八岐大蛇は俺たちに突っ込んできた。円輝はすでに見切られてる。2人で今度は左に突っ込んで攻撃をかわす。
かわしてもさらにそこに一気に突っ込んでくる八岐大蛇。立ち上がった瞬間に再び八岐大蛇が突っ込んできた。さっきよりも、強い魔力で倍近くの速さがある。
慌ててよけようとするが──璃緒がこっちに倒れこんだ。
「璃緒」
「すいません。足が──」
右足首を抑えている。無理に飛んでよけようとして、足をひねってしまったのだろうか。かなり痛そう、これじゃあさっきまでのような身のこなしは出来なさそう。
「私はいいです。からすみさんだけでも」
「そんなわけにはいかないよ」
璃緒は俺だけでもというが、そんなわけにはいかない。俺に璃緒を見捨てるという選択はとれなかった。
そして、八岐大蛇の攻撃がこっちまで迫ったその時。
「させません!」
「いかせんわ!」
何と、加奈とろこが前に立ちはだかったのだ。
「待って、ここはいいから」
「よくないわ!」
八岐大蛇相手に無茶だ。現に体が恐怖で震えている。しかし、2人はこの場に立ちはだかり逃げようとしない。
「そや! あんたらがワイらを守ってくれたように、今度はワイらがあんたらを守るんや!」
「でも、今は無茶だ」
「そんなことないよ。一方的に守られるのなんて嫌だもん。澄人君があたしたちを守ってくれたみたいに、私たちだって澄人君たちを守りたいもん」
そして、二人同時に手をかざすと大きな障壁が誕生。俺たち全員の身体が隠れるほどの円形の障壁。
「これ、一度使うとしばらく使用できなくなる代物や」
「でも、澄人君のためなら大丈夫」
ああ……いつもより強力な術式の代わりに反動があったり次に使えるようになるまでの時間が他の術式より長かったりするタイプか。
しかし、この障壁の魔力なら防げそう。その通り、障壁に八岐大蛇のこぶしが直撃しても多少ひびが入っただけで崩壊はしなかった。
2人は手をかざしながらこっちを向いてくる。
「うちも一緒や、後ろで見ているだけのヒロインなんて、うちには似合わへん」
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