第78話 現れた2人は?


 人質を取られ、中々有効打を与えられない俺たち。


 八岐大蛇はそんなことに構わず、どんどん攻撃を放ってくる。そして、ネフィリム相手に突っ込んでいく。ネフィリムはかわしきれず右足にけがを負ってしまう。慌ててネフィリムの前に立ちはだかった。



 あっという間に口の中が強い光で満たされた。すぐに攻撃が来る。またよけても、また追撃が来るだろう。いつまで攻撃をかわし続けられるられるのだろうか。

 そして攻撃がこっちに来たその時。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 俺たちの後方から大きな攻撃が放たれ、八岐大蛇の攻撃に直撃。相打ちとなり大きな煙が舞う。そして、俺たちの前に2人の人影が現れた。


 誰かが俺たちを援護してくれたんだ。しかし誰だ? 人質になったやつ以外はみんな逃げてしまったはず。


 こんな強敵相手に、立ち向かっていったのは誰なのだろうか。


 そこにいたのは──2人の姿だった。


「何とか間に合ったな」



 クリーム色のセミロングのストレートヘアー。ちょっと吊り上がった目。あれは、加奈。それと黒髪のろこ。

 攻撃を防ぎ、自信を持った表情でこっちを見ている。


「大丈夫か? 危機一髪だったな」


「澄人君、無事だった?」


「ああ、2人のおかげで無事だった」


 事実、2人がいなかったらただでは済まなかっただろう。しかし、疑問が残る。

 何でここにいるんだ?


「なんでいるのじゃ?」


「そうです。トラウマは大丈夫なんですか?」


 ネフィリムと璃緒も驚いて目を丸くしていた。2人は──まだ難易度の高いダンジョンにはいかない約束だったはず。


 簡単なダンジョンから復帰させて、少しずつ難易度を上げていく予定だったんだけど──。

 じっと加奈を見ていると、加奈は罪悪感を感じているのか申し訳なさそうな表情になって俺たちから目をそらした。


「確かにさ、まだ不安はあるよ。今は大丈夫だったけど、いざピンチになったらどうなるかわからないかな」


「いきなり恐怖で、足が動かなくなってもおかしくないかもしれへんで」


 ろこの表情が、笑みを浮かべながらも軽く引きつっている。本当なのだろう。恐怖がなぶり返すかもしれないということを理解しているのだろう。


「でも、澄人が心配で──居ても立っても居られなくなっちゃってさ。相談していくことにしたの」


「まあ、結論は簡単出たけどな。うちらを助けてくれたように、今度はうちらが3人を助けるってな──」


 ろこがにかっと笑顔を作って、腰に手を置いた。表情からして、出したその答えにかなり自信を持っているのがわかる。


「加奈──ありがとう。そこまで心配してくれて、本当にうれしいよ」


「澄人君──」



 加奈は顔をほんのりと赤くして、俺の顔をじっと見る。ここまでまじまじと見られると、こっちまでちょっと恥ずかしい気持ちだ。


「だから、無理しないでね」


「うん、わかった」


 加奈は嬉しそうな表情でコクリとうなづいた。そうだ、今は大丈夫でもピンチになるとどうなるかわからない。トラウマがなぶり返して、動けなくなってしまうかもしれない。


 加奈の意思は尊重するけど、そういう可能性があるってことは頭に入れておこう。絶対に、2人を守り切る。2人が俺たちを守ろうとしてくれたように、2人は俺たちが守る。

 そして、俺たちは再び八岐大蛇に視線を向けた。



 さて、どうしたものか──2人が来てくれたおかげで、このピンチは潜り抜けたものの根本的に状況は変わっていない。どうすればいいか考えていると、ろこがこっちを見て言った。


「うちらに任せてくれんか? 手があるで」


「あるんですか?」

「はい璃緒さん」


 ろこの言葉に、全員の視線が集中する。


「寸分の狂いもなく、狙えばいいんですよね?」


「うちらならできるで」


「出来るんですか?」


「それはすごいのじゃ」


 十数メートルの距離から攻撃を放ち、人質に当てずに首だけに直撃させる。

 相当難易度は高い。恐らくそれに関するスキルを持った人がいないと難しいだろう。



 やったとしても、人質に当てないことに神経や魔力を注ぎ込むことになってしまうためかなり威力は落ちる。


「えーと、私たちは奇襲することも多々あったので、遠距離から敵を打ち抜く練習を何度もしていました」


「あの数と距離なら十分打ち抜ける。そいで、打ち抜いて人質が口の中から落ちたところを澄人と璃緒が突っ込んで他の首を切り落とせばええ」


 確かに、2人の配信動画を見ていたけど遠距離からの正確な攻撃はすごいものがあった。俺では難しいような距離でも、2人は正確に直撃させ、無防備な相手に奇襲をかけていた。


 威力的に八岐大蛇に打撃を与えられるかは未知数だが、他に手はない。


「わかった」



 現状、それに掛けるしか手はなさそうだ。俺が頷くと、2人の表情に自信が灯る。任せてほしいと言わんばかりだ。それなら、任せる以外にない。

 そして、俺たちの前に2人が立つ。


「行くで!」


「はい」


 2人がそれぞれ武器に魔力を集中。そして、武器を薙ぎ払うと切っ先から魔力を伴った攻撃が放たれる。


 放たれた攻撃が首元に直撃。一瞬だけ、人質を加える力が緩んだのがわかる。せっかく2人が作ってくれたチャンス、逃がすわけにはいかない。


「行こう璃緒」


「はいからすみさん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る