第96話 城壁案内

次は城壁を案内する。


「ここがテオドール防衛の要、城壁です」

 全方位完成したので今は綺麗に星形になっている。階段を上がってもらい上からも見てもらう。


「普通なら丸かったり四角だったりしますわよね? ずいぶんと不思議な形をしてますのね」


 エリーゼ様はさすがは英雄の娘なのか、要塞の形についてもちゃんと知識があるようだ。


「ええ、ちゃんと理由がございます。‥‥‥」

 以前パーシヴァルさんに伝えた事と同じ内容を話す。


「ほほう‥‥‥、これがモンスターの群れを村民だけで追い払えた理由の一つか」

「発明等も含めた活躍ぶりで言えば貴方以上ですわね」


「ふむ、まさに。エドガーライフルもあるしな」

 その名前が浸透しつつあるんだな、少し恥ずい。


「あれが見張り塔になります。あそこにこの村の守護者とも言うべき狙撃手スナイパーがおります。フルル、降りられるか?」

「はーい! 今降りまーす」


 フルルが見張り塔から飛び降りた。

「キャー!?」

 エリーゼ様が悲鳴を上げ、手で目を覆う。


 だがフルルはふわふわとゆっくり降りてきた。風精霊の力で落下の勢いを殺す事が出来るようになったそうだ。階段を降りるよりはずっと早い。


 ちなみに上がる時は普通に階段を登る。空を飛ぶ程の事は出来ないらしい。


 フルルがかしこまり、臣下の礼を取る。

「エドガー様にお仕えしておりますエルフのフルルと申します。以後お見知り置きを‥‥‥」


「「エルフ!?」」

「‥‥‥珍しい種族ではないか。大森林の奥に住むと聞いた事はあったが。まさかこのように目にするとは思わなかった」


「フルルが居なかったらテオドール村はモンスターにやられていたと思います。メッサーラからここに来る途中で名乗りと身分証掲示をした箇所があったかと思いますが‥‥‥」


「あぁ、確かにあった。パーシヴァルの指示でその通りにしたが‥‥‥」

「あそこをスルーしてしまうとフルルに撃たれます。私であってもそうです」


「えっ? ‥‥‥ここから相当離れてますわよ?」

「あの辺まではフルルのライフルの射程圏内です。手に摘んで掲げた落ち葉のみを撃ち抜く事だって可能ですから」


「「「‥‥‥‥‥‥」」」

 辺境爵ご一家は苦笑いの表情に変わった。

 しまった‥‥‥引いちゃってる?


「フルル、自己紹介ありがとう。見張りに戻ってくれ」

「はーい、失礼致します」

 フルルはそう言うと頭を下げて退出した。


「あのような少女が‥‥‥そんな事が出来るのか‥‥‥」

「エドガー様、わたくしエルフの方とももっとお話ししたいですわ! 夕食はご一緒出来ますかしら?」


 興奮気味のエリーゼ様に強めに揺さぶられる。

「あー、可能だと思います。夜は非番だと思うので」

「わー! ありがたいですわ! 今から楽しみですわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る