第94話 完成 テオドール温泉

 テオドールに入浴施設が出来た。初日には農作業を早めに切り上げたのかたくさんの人が並んでいた。


「これ、みんな入れますかね?」

「うーん、失敗したな。各地区毎に分ければ良かったかもしれないな」

 こんなに期待されるとは思わなかった。さらに並んでしまうテオドールの民。


 バスと相談する。

「これじゃダメですね、人員整理をしましょう。事情を話して別の日に来てもらいましょう」

「みんな、楽しみにしてくれていただろうにな。‥‥‥そうだ!」


「何か思いついたのですか?」

「お詫びクーポン作戦だ」


「? お詫びクーポン?」

 知らなくて当然だろうな。そんなシステムこの世界では見たことも聞いたこともない。


 お詫びクーポンとは並んでくれたけど入れなかった人のために次回割引サービスがつくから今回は諦めてもらうクーポンの事だ。

 これで次回でもいいやって人がいたらそれで良い。毎日入りに来られるほどは村民は裕福じゃない。


 結果、クーポン作戦で施設内に人が溢れる事はなかった。


「そろそろ開店致します。エドガー様、ご挨拶を!」

「わかった、今行く!」



「えー、皆様。大変長らくお待たせ致しました。『テオドール温泉』本日これより開始させていただきます。お風呂をご存知ない方もいらっしゃると思います。どうぞルールを守ってお寛ぎくださいませ」


 ゾロゾロと入っていく。

 何処の世界でも一番乗りというノリがあるようだ。クーポンを提示しても引き下がらなかった人達はそんな感じなのだろう。


 入浴に関するルールを遵守してもらうために絵で説明をしている。せっかくの温泉の本当の意味での一番風呂を汚されては困るからな。


•湯船に浸かる前に身体を石鹸で隅々まで洗う

•洗う布は湯船に浸けない

•湯船に飛び込まない、静かに入る

•会話は騒がしくない程度の音量で


 とりあえずはこんな感じだろうか。

 

「見回りと称して俺も風呂に入るか」

「楽しみですね!!」


「‥‥‥ティナ、お前は女湯だ。こっちじゃない、ついてくるな」

「えっ、そんな‥‥‥!? エドガー様ぁぁ!」


 いやいや、男湯に女が入るとかないだろ。

 AVかよ‥‥‥。

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