第111話 バーベキューパーティ
【一人称・主人公の視点】
・俺
・花凜
・結菜
・翔子2
で、さらに2時間ほど狩りを続けた。
「うーん。なんか腹が減ってきたな」
「今日、お弁当もってきてないよ。もっと早く終わると思ってたから」
俺の言葉に花凜が答えた。
「大丈夫だ」
「地上に戻って、サイゼとかでも行く?」
「マジで、腹ペコなんだけどー!」
「ですぅ?」
「一人だったらコンビニのおにぎりとかで適当にすませるところだが、今日は、おまえらがいるからな。少しばかり
幸いダン校の校長に魔石を売ったりしているので、それなりに金はある。
ダンジョン内の安全地帯にまで行くと、ゲーム『ファースト・ファイナル』の有料DLCのひとつを2000円で購入した。
購入したアイテムを、大山のぶ代さんの声まねをして、アイテムボックスから取り出す。
「どこでもアジトぉ~!」
出てきたのは、マンションの扉だ。扉しかない。外見は、ドラえもんの『どこでもドア』にそっくりだった。
「え? 扉だけ?」
花凜がキョトンとなる。
「でも、超高級そうね、この扉」
実は超セレブなお嬢様である
「ですぅー!」
「まあ、見てろって」
扉をあける。中は、超高級マンションのエントランスホールになっている。
「えーっ。どうなってるのー?」
花凜が扉の裏側を確認するために回り込む。でも、そこにはなにもないんだよな。
俺が扉をくぐって、中にはいる。不思議そうに見てる花凜たちのほうを振り返って、
「こうしてだな」
バタンッ。扉を閉めた。
俺は、玄関の扉を閉めただけにすぎない。奥には実際のマンションと同じように廊下がつづいている。
たぶん驚いてる花凜たちの表情を想像しながら、10秒ほど待つ。
再び、扉を開いた。
「わあーっ、消えた扉から直くんが戻ってきたぁーっ!」
「マジで、どゆこと?」
「驚いたですぅー!」
俺が内側に入って扉を閉めると、花凜たちがいる外側から見ると扉が完全に消失するのだ。中にいるかぎり異空間にいるという設定。扉が消えるので、外部から敵意を持ったプレイヤーたちに襲撃されることがない。扉が閉まっている間は、内部の安全が完璧に保証され、安心して休息できるアジトなわけだ。
「超、すごすぎない?」
「光ってるぅー」
「うわーっ。高級感がすごいんだけどーっ!」
「すごいですぅー!」
靴をぬいで特注のラグジュアリースリッパに履き替え、廊下をすすむ。
「わあー、ひろいー……」
「天井、高っか!」
「豪華ですぅ!」
そこは、天井高5メートルを超える広大なリビングルーム。
『どこでもアジト』は、ゲーム『ファースト・ファイナル』内でも使ってたけど、クソゲーのしょぼいグラッフィクと、現実は大違いだ。現実世界で見ると、高級感や開放感が半端ない。
中は麻布台にある某超高級マンションの最上階、地上64階の設定になっている。現実世界なら、そのマンションは購入しようとすれば300億円をくだらない代物だ。部屋は、壁一面が天井から床まで巨大なガラス窓になっていて、仮想の東京都心パノラマビューを一望できる。
バルコニーにでると、地上の喧騒からはなれた空中の静寂に身を置ける。
「ここでバーベキューしようぜ!」
火災のリスク、煙などの問題があって、多くマンションではバルコニーでの火気使用を禁止されている。が、この異空間内でなら気にしなくていい。
またもや、ゲーム『ファースト・ファイナル』の有料DLCの一つを購入した。
『松阪牛もびっくり。超高級ドラゴン肉(シャトーブリアン)とバーベキューパーティセットぉー!』
再び大山のぶ代さんの声まねをしながら、アイテムボックスから取りだした。
食材とコンロ、着火剤、
本来のゲーム『ファースト・ファイナル』内では、肉などをゲーム内で調理すれば、そのまま食べるよりHPやスタミナなどの回復量が増加するアイテムがつくれる、……というものだったが。
現実世界でどんな味がするか気になっていた。
ジュウーッ……。
コンロで肉を焼く。たちまち食欲をそそる香りが立ちこめた。
いかにもうまそう。
「なんか、見ただけで、いつも食べてるスーパーのお肉とぜんぜんちがう感じ」
「まじヤバっ! もう匂いだけでお腹ぺこぺこ。早く食べたーい!」
「おいしそうですぅー!」
「よーし、たべるぞーっ!」
「「「はあーい」」」
4人で一斉に、焼いたドラゴン肉に箸をのばす。
肉を口にした。
「うわっ」
思った以上だ。「ヤバイ……。口の中で肉がとろける、ってのはこういうことを言ってたのか……」
「すっごく柔らかい。特に肉の旨味がすごいね」
「マジで、これすごすぎ!? お肉ってこんなに美味しいんだ」
「とっても美味しいですぅーっ!」
今まで口にしたことないような美味さだった。
「お肉ってこんなに甘かったんだね。しらなかったよー」
「もう、他の食べ物いらない。一生これだけで生きてけるぅーっ」
「いくらでも食べられますですぅー!」
美味しすぎる肉のおかげで、みんなの顔がキラキラしていた。
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