1-5
ぷかぷか、ぷかぷか。
小さな金色の羊の姿になったソランジュは、夢の世界を泳いでいた。
暗い森の中を抜けて、たどり着いたのは
そこに、夢の主である黒髪の男性が座り込んでいた。
「なんだお前は?」
(ひっ!)
人を殺せそうなほどに
「とっ、通りすがりの者です!」
黒髪の男性は、眉根を寄せた。非常に整った目鼻立ちをしているせいで、圧がすごい。
「…………犬か?」
「羊です……一応」
「羊?」
男性は
「羊はもっと、
「失礼な! この
ソランジュはまんまるな身体を
「なるほど。非礼を詫びよう」
男性は思いのほか
(顔は|怖《こわ)いけど、悪い人じゃなさそう)
よくよく見れば、彼が身に着けているものはどれも上質で、立ち
ふいに、洞窟の奥から
「な、何?」
「
「居候って……?」
「
そう言う男性の顔には
「あなた、眠れていないの?」
「眠っているつもりなんだが、どうにも眠りが浅いらしい」
男性は明らかに
「ちょっと失礼」
ソランジュはぽてぽてと男性に歩み寄り、彼の膝に前足を載せた。
(この人に、眠りと癒しの加護をお
心身の疲労が消え去るように。そして、
ソランジュは心を
すると、どうしたことかソランジュは
(何……?)
「どうした?」
男性の声が遠い。ソランジュはまぶたが重くなっていくのを感じた。
これまで、姉たちや救貧院の子どもたちの夢の中に何度か潜ったけれど、これほど激しい疲労を覚えることはなかった。
(この人を
暗い洞窟の奥から聞こえてくる唸り声。
(あれは一体……?)
小さな羊の身体が、ぱたりと倒れ込んだ。
力を使わないという、父との約束を破った
ソランジュは初めて、人の夢の中で意識を手放した。
目が覚めると、ソランジュは人の姿で見知らぬベッドに横たわっていた。
現実の世界へ戻ってきた。
(あの人は元気になったかしら?)
確認できないまま、どうやら気を失ってしまったらしい。誰がここまで運んできてくれたのだろう。
終わると同時に顔も知らない女官たちが数人、部屋へなだれ込んできて、自分のドレスに
訳がわからず続き間へ案内されると、そこに見知った顔があって安堵の息をついたのも
リディアのそばには、長身の
「おめでとうございます。ソランジュ・レアリゼ王女
「え……?」
ソランジュは状況が飲み込めずに
(どうして……?)
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