18.

いつも迷惑かけている為、こういう時にゆっくり過ごしてほしくてそう伝えると宇都宮君が無表情になったような気がした。


見間違いかなと思い目を擦ると、宇都宮君は微笑んでいたので直視できずあわてて目を逸らす。


ふぁーバイト前に推しの笑顔が見れた、幸せ。無意識に顔がニヤける。



「そっかバイト頑張ってね昴、また明日の朝迎えに行くから」



「う、うん…ありがとう宇都宮君。また明日ね」



幸せの余韻から急に現実に戻った僕は宇都宮君と別れ、助っ人を頼まれたバイト先へと向かった。



「…あれ?」



バイト先へ向かう途中、見た事のある人がいたような気がした。

そうだ、宇都宮君とよく笑い合ってた女の子だ。最近は宇都宮君と一緒にいるの見かけなくなったけど…別れちゃったのかな?



「…もしそうだったら僕のせい?」



どうしよう、推しとの生活に浮かれすぎてて宇都宮君の彼女さんの存在忘れてた。

バイトのある日以外宇都宮君の手料理ご馳走になってたけどそれ本当は彼女さんのポジションで僕がいたらダメなやつじゃん!!

2人の邪魔をしてた事に今頃気づく。


とりあえず後日宇都宮君と彼女さんに謝ろう。手土産持ってかなきゃ。


でもなんでだろう、宇都宮君の彼女さんの事を考えてたら胸がズキズキして泣きそうになった。

その理由は分からない。



「うーモヤモヤして気持ち悪い。一旦考えるのはやめて働こう」



昴は心のモヤモヤを忘れようと裏口から店の事務所に入り、店長に挨拶してから出勤したのだった。




「高城君、これゴミ出ししてきてくれる?」



「わかりました」



「ごめんね、また急に出勤してもらっちゃって」



「大丈夫です、今日は大学午前中だけだったので」



「そうだったの?助かったわ、特別に今回は時給上げておくわね。休憩しておいで」



「はーい!」



わ~い、今日だけ時給アップ~嬉しい。ルンルン気分でゴミ出しに行く。

それにしても今日はなんだか忙しい。いつも平日は7人でまわしてるんだけど今日は4人休んでしまい助っ人は僕だけ。

もうすぐ遅番の子が出勤するんだけどそれまで4人体制の為、ホールもキッチンもバタバタだった。


やっと休憩をもらえたので少しおやつを食べて糖分補給をする。

むふふ、チョコクッキー美味しいなぁー。



「ちょ、高城君!あの人来てるわよ!!あのイケメン!!」



「…あ、青木さんお疲れ様です。誰ですか?イケメンって」



「イケメンはイケメンよ!!高城君の好きな人!!」



「青木さん、確かに僕はイケメンが好きですけど恋愛の意味で好きなわけじゃないですからね?」



「あれ?そうだった?」



「そうですよ~」



もう…桜ちゃんといい青木さんといい僕がイケメン好きだから同性が好きって勝手に思うのやめてくれないかな??

僕は女の子が好きなんです!!



「それよりもいたのよイケメンが!!高城君と同じ大学の子よ!!」



「…もしかして宇都宮君ですか?」



「いや、わかんないけどとにかくイケメン。とりあえず休憩終わったらホール来てね!店長と交代で」



「わかりました」



嵐のように来て言いたいことだけ言って去っていく青木さんを見送り休憩を再開する。


…もしかして宇都宮君が来ているのかな?詳細はわかんないけど休憩終わったらレジ担当だろうし確認しよう。

ふぅ…あと3時間頑張るかー。

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