副王とティンダロス

「うっ・・・・ここは?」

 

そうだった。保健室で寝てたんだった。

 

「しかし、頭まだ痛いな。」

 

水に戻ってしまった氷枕を頭から退けて、額を抑えながら起き上がった。

 

「今何時だ?」

 

首を動かして時計を見たら11時だった。

 

「1時間ちょっと寝ていたのか。・・・・そういえば初香先生はどこに行ったんだ?」

 

辺りを見渡したがどこにも姿はなかった。

 

ふと机を見ると何かが置かれていた。

 

「あれは何だ?」

 

机の上に謎の赤色の錠剤と手紙があった。

 

「ええと、手紙はなにが書かれているんだ?」

 

 

健二くんへ

 

これから私は、少し行くところがあるので少し席を外します。お昼頃には戻って来れると思いますから安静にしていてください。後、机に置かれている錠剤は頭痛薬です。起きてもまだ頭が痛い時は飲んでください。

 

初香より

 

「なるほど。アレは頭痛薬か。」

 

ありがたい。早速飲もう。

 

棚にあったコップを借り、頭痛薬を飲んだ。

 

すると、さっきまで頭が痛かったのが嘘みたいに良くなった。

 

「おぉ。頭痛が消えた!凄いな。どこの薬なんだろう?」

 

今度聞いてみようかな?

 

「・・・・さて、どうするか。」

 

このまま授業を受けるか、それとも帰って安静に過ごすか。

 

「授業は1日ぐらいなら休んでも大丈夫だと思うから、今日は家に帰って安静にするか。」

 

一応手紙を書いとくか。

 

そして、手紙を書き終わりカバンを取りに行こうとしたら、急に扉が勢いよく開かれた。

 

「健二センパーイ!大丈夫ですか!」

 

狛星きららがそこに立っていた。

 

「びっくりしたぁ。全く驚かせるんじゃない。」

 

「えへへ、すみません。」

 

きららは笑顔で謝った。

 

可愛い。なんだこの生き物。

 

「で、なんできたんだ。」

 

すると

 

「先輩が頭が痛い、という噂を聞きまして尋ねてきました!」

 

あれ?俺瑠衣にしか言っていないはずだが?まぁ、瑠衣が伝えたんだろうか?

 

「そうか。けど大丈夫だぞ。さっき薬飲んだからな。」

 

「へぇ。どんな薬ですか?」

 

「ん?普通の頭痛薬だか?あぁでも、色は赤色だったな。」

 

「あの副王やりやがったな。」

 

ん?どうしたんだ一体。

 

「じゃあ先輩。今は頭痛はしないっていうことですか?」

 

「そうだな。」

 

「この後先輩はどうするんですか?」

 

「今日はそのまま帰ろうと思っている。別に1日授業受けなくても大丈夫だしな。」

 

明日は土曜だから月曜になんかテストがないことを祈らないとな。

 

「じゃあ先輩。一緒に帰りません?」

 

「お前はちゃんと授業受けろ。」

 

全く。成績危ういんだからちゃんとしないと。

 

「えー、じゃあ先輩。」

 

「ん?なんだ?」

 

「頭撫でてくれません?」

 

なんだ急に?まぁいいが。

 

「分かった。それじゃあ、頭出せ。」

 

「はい!」

 

きららのブロンドで綺麗に手入れをされている髪を撫でた。

 

「えへへ!」

 

可愛い顔しているな。

 

そして、きららの頭を撫で終わった。

 

「ありがとうございます!先輩!これで午後も頑張れそうです!」

 

「それは良かった。それじゃあ、俺は帰るな。」

 

「分かりました!気をつけて帰ってきてくださいね!先輩!」

 

「あぁ、分かっている。」

 

きららに見送られながら保健室を後にした。

 

 

 

 

「これで先輩の残り香を楽しむことが出来る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、クトゥルフは倒せなかったか。」

 

仕方ない、また今度殺すか。

 

「健二が待っているだろうし、早く帰るか。」

 

まるで瞬間移動並みの速さで学校の屋上から保健室へ戻って行った。

 

「さて、健二は寝ているかな?」

 

そう言いながら保健室のドアを開けて入って行った。

 

そこには

 

「えへへ〜。センパ〜イ!」

 

瞬間、机に置いてあったコップが割れた。

 

「何をしている駄犬。」

 

「あん?副王か。私は今健二先輩の匂いを楽しんでいるんだよ。邪魔をするなら、今ここで殺す!」

 

「貴様如きにやられる訳がないだろう。」

 

「何を言っている。私は1人ではない。複数いる。お前を殺すことになれば、私達は全力を出す。何せ私達は曲がった時空が嫌いだからな。その曲がった時空の支配者であるお前を殺すことは我々の悲願でもある。」

 

「塵を何匹集めたところで何に成る?」

 

「ほう?塵かどうかはやってみないと分からないぞ。」

 

「それでは来るがいい。格の違いを見せてやろう。」

 

「調子に乗るのもいい加減にしろよ。副王という名前も過大評価ということを証明してやるよ。」

 

この日、世界の時計が狂った。

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