第14話 聖女ステラとの再会

「す……ステラ……」


 なんとラビア先生の卒業試験を一緒に受ける生徒とは、聖女ステラだった。


「フフ、ご無沙汰でしたねアビロス」


 その透き通るような綺麗な銀髪を揺らして、微笑む聖女。


 いやいやいや―――


 ちょっと待て!


 ゲーム主人公はどうした?


 あいつの強さは、ラビア先生の鍛錬がベースになっているはずだぞ。


 じゃあ誰に教わってるんだ?


 俺に危害を加えられるのは勘弁だが、あいつには強くなってもらわないと困る。

 ゲーム原作ストーリーがいよいよ動き出すんだ。大きなイベントはゲーム主人公にクリアしてもらわないと。



 ヤバいな……これはストーリー改変がマズイことになってしまっている気がする。



「な、なぜステラなんだ……」


「あら? 相変わらずのお言葉ですね。私と一緒じゃ嫌なんですか?」


 やべぇ、あまりの動揺に口が滑ってしまった。


「い、いや、そんなことはない。また会えてウレシイヨ」

「ふ~ん、なんだかあまり心がこもっていませんけど。まあ、私も卒業試験のために来ましたから! あなたに会いたくてとかじゃないですから!」


 顔を赤くして口を尖らせる聖女さま。

 そんな強調しなくても、アビロスが嫌われていることなど知っているよ。


 なんで、破滅フラグである聖女に再会せにゃならんのだ。

 ま、それはゲーム主人公にしても同じだが。


「ご主人様~~ご飯の用意ができましたよ~~行きましょう~」


 ララが俺の手を取って、食堂に連れて行こうとする。ルンルンだ。

 そこへなんだか冷たい視線が、後頭部に刺さる。


「ふ~~ん、随分と可愛らしいメイドさんに慕われているんですね」


「あ~~聖女さまです! 失礼しました~~ララです!」

「まあ、ステラよ。よろしくね」


 ララがステラの手も取り、食堂に連れて行く。

 もう片方には俺の手。


 自然と俺とステラの距離が近くなる。


 にしても5年か……


 以前あった時も美少女ではあったが、この5年でさらに超絶美少女となっていた。完全にゲームパッケージのキャラデザそのものだ。スレンダーながらも出るとこがすごい主張してるし。

 ララに引かれて、自然とタユンポヨンと揺れまくっている。いや……これララも凄いけどステラも負けていないな。


「ちょ、アビロス近いです!」

「あ!……ごめん」

「ま、まあいいですけど」


 しまったガン見してしまったようだ。

 ステラの顔が真っ赤だ。いや、これ以上好感度を下げるのはマズイ。どこかで挽回せんと。


 その後、ステラとラビア先生、俺の両親というよくわからん組み合わせでの夕食をとったあと、お風呂タイムとなる。


 母上が「アビロスちゃん! がんば!」とか意味不明のエールを送っていたが。

 風呂でなにを頑張るんですか……母上。



「ふ~~~、ようやく1人になれた」



 湯船に肩まで浸かる。なんか疲れた。


 明日は卒業試験なんだ、風呂あがったらもう早く寝よう。

 とか思いつつぐったりしていると、壁越しに隣の風呂から、女子たちのキャッキャッウフフな声が聞こえてくる。


「ふわぁああ~~ステラさまの気持ちいいです~」タユンポヨン~

「ウフフ~ララちゃんのも凄くいいわ~」タユンポヨン~


 ララとステラは仲良くなったようだ。夕食の時も楽しそうに会話してたし。


 俺? さして会話はなかった。そもそもヘイトキャラ設定だしな。向こうが積極的に話したくないだろうし。


「ちょ……ララちゃんダメだって。大きいんだから自分のでしないさい!」タユンポヨン~

「だって~~ステラさまのがスベスベぷにぷにで最高です~~」タユンポヨン~


 する!? 自分ので!? 最高!?


 タユンポヨンってなんだよ!


 いったいなにやっているんだ、あいつら……


 よし、出よう。ここにいるとなんかダメだ。俺は15歳の青年だからな。もうなんかダメだ。

 俺は早々に風呂を出て、自室のベッドにドカッと寝転がった。


「しかしステラと卒業試験とは」


 このゲーム世界ブレパのストーリー改変は、どこまで進んでいるのだろうか。

 ステラに再会するなど思ってもみなかった。しかも同じ先生のもとに指導を受けているなんて。


 ―――いや、今はそれよりも集中しなきゃいけないことがある。


 明日の試験は必ず乗り切ってやる。

 5年間の成果を出し切るんだ。


 そう1人胸の奥に決意を固めた俺は、静かに目を瞑るのであった。


 ―――って!


 ―――全然寝れないじゃないか!



 タユンポヨンってなんだよ……




 ◇◇◇




 ステラが来た翌日。


「よし! おまえたち。今日までよくワタシの鍛錬についてきた!」


 俺たちの前で声を張り上げるラビア先生。


「ちょっと目をつぶって今日までの5年間を振り返ってみろ!」


「「………」」


 5年か……色んな地獄があったなぁ。


 う……うぷっ!


 ―――やべぇ、吐きそうになった。


 ステラの方に視線を向けると、彼女も「うぅうう」とか言いながら涙目になっている。

 彼女も頑張ったんだな。その気持ち、わかるぞ。


「うむ、まあそこそこきつかっただろう!」


 そこそこどころか、滅茶苦茶きつかったですけど!


「そんなおまえたちにとって、ワタシからの最後のプレゼントだ!

 ――――――オークダンジョンにて、オークキングをぶっ殺してこい!」


 え?


「―――以上!」



 オークダンジョンだと?



 これはゲームにおけるメインストーリーのはず。しかもそこそこ中盤にでるイベントだ。

 ゲーム主人公が、パーティーを組んで挑戦するイベント。


「せ、先生! 俺はいいとして、ステラはオークダンジョンまずいんじゃ……」


 そう、イベント難易度もそこそこ高いのだが、なによりもっとマズイ理由がある。


 オークは敵を倒すと交尾するのである。

 種族に関係なく。

 オークダンジョンはその名のごとくオークの巣窟だ。


「せ、先生。オ、オークって、女を見たら見境なくアレとかコレとかしちゃう魔物ですよね?」

「ああ、そうだアビロス! ワタシも一度行ったことがあるが、凄まじい勢いで群がってきてなぁ~」


 ああ……ラビア先生の色気なら、そりゃもうオークたちもウホウホでしょうね。


「めちゃくちゃ楽だったぞ~~向こうからドンドン来てくれるんだ~順番に首を斬っていけばいいだけだ」


 いやいや、それ出来るのごく一部の人だけだから。


 ラビア先生とか。


「しかしなあ……仮にも聖女だぞ……」


「ちょっと、アビロス! なぜ私の身体をジロジロみてるんです?」

「いや、ごめん……」


 だけど……


 今のステラはタユンポヨンがすぎるんだよぉおお! 法衣からこぼれ落ちそうじゃん、それ!


 ―――たぶんオークの大好物だ。


「なあステラ。教会も流石にダメっていうんじゃないのか?」


 聖女自らオークダンジョンに入るとか……マズくないか。


「じゃ、じゃあ危なくなったら……助けてくれたらいいじゃないですか! アビロスが……」

「え?……俺が?」


「アビロス! あなた、私がオークにアレとかコレとかされてもいいのですか!」


「………いや、ダメです」

「なにか不穏な間があったような気がしますね」

「そ、そんなことはないぞ!」


「アビロス! 私の純潔、ちゃんと守ってくださいね?」

「お、おう……」


 なぜか上目遣いの聖女さま。俺の視線の先には……


 タユンポヨン~~

 タユンポヨン~~

 揺れてるな~2つのアレが~~


 ―――いやいやこの試験、違う意味でも難易度高くない?



 ……なんでこうなった?




―――――――――――――――――――


いつも読んで頂きありがとうございます。


色々と成長してそうなステラ。2人で仲良く?ダンジョン攻略です。


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