第30話.マリベルの買い物②

 食事を終えた二人は、厨房で女将さんを呼んだ。


「ティト、あんたは部屋で待ってな」


 女将さんはそう言うと、マリベルを連れて奥へと行ってしまった。残されたティトは、黙って部屋へと戻る。

 しばらく待っていると扉を叩く音がする。


 ティトが扉をあけると、恥ずかしそうな顔をしたマリベルがそこに立っていた。


 白いシャツに、濃い茶色のふわっとしたロングスカートを合わせている。そのうえから、カーキ色のカーディガンを羽織はおっていて、頭には薄茶色ベージュのキャペリンハットを被っていた。

 ボリュームのある尻尾はロングスカートの中に完全に隠れていて、大きな狐耳はキャペリンハットの下で見えない。


「どう……かな?」


 上目遣いにティトを見上げると、はにかむような微笑を浮かべてマリベルは小さな声で呟いた。

 ティトは、一瞬その姿に見惚れてしまう。

 その視線はマリベルに固定されたまま、尻尾がピンと伸びる。

 そんなティトに、マリベルはコテンと少しだけ首を傾げた。


「変じゃないかな?」


「あの……とてもよく似合っています」

「そう? よかった」


 ようやく言えたティトの言葉に、マリベルは、ほっとしたように小さく息を吐く。


「あ、そうだ。これから買い物に行きましょう。服とか、その……下着とか、いろいろと揃えないといけないですし。兄さんほど頼りにならないかもしれませんが、護衛代わりに同行します」

「うん。ありがとう。頼りにしてるね」


 ティトが恥ずかしそうにしながらそう言うと、マリベルはティトの顔を下から覗き込むようにして、笑顔を見せた。

 ティトの尻尾が再びピンと伸びる。


「はい。では、さっそく行きましょう」

「あっ、待ってよ~」


 そう言うと、ティトはいそいそと宿の出口へと向かってしまう。

 そんなティトをマリベルは慌てて追いかけた。




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 🔸緊張すると、尻尾がピンとまっすぐに!

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