第4話 協力者


 

「失礼します……」


 僕は第一資料室へと、静かに入室した。独特な紙とインクの匂いが鼻を擽る。今日は国枝先輩から、資料を集めて来て欲しいと頼まれたのである。資料室には様々な本が並び、まるで図書館のようだ。


「よし! 頑張るぞ!」


 与えられた仕事をこなす為、資料のリストを片手に僕は気合いを入れた。


 〇


「くっ……届かない……」


 順調に資料を集めていると、ある資料が高い位置に収められていた。僕は背伸びをしながら懸命に、右手を資料に向けて手を伸ばす。しかし如何しても手が届かない。


「これで、最後なのに……」


 渡されたリストの最後に書かれているのが、この資料である。成人男性の平均身長より少し低い僕は、あと少しのところで手が届かない。


「……え」


 脚立を借りに行こうかと思案し始めると、背後から白い腕が伸び資料を掴んだ。そしてその本を僕へと差し出した。


「あ、ありがとうございました……あれ?」


 資料を受け取り、お礼を言うために振り向いたが誰も居なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る