第7話立花栞の日常1

俺の目の前で、最愛の彼女の無残な亡骸を、俺は

見つめていた。「何だよ。これ・・・・・・」

理解ができなかった。何で、彼女が死んでるんだ。

何で、こんなに体中に大量な切り傷があるんだ。

何で・・・・・・。俺は、それを見て。美しいと

思っているんだ。頭の中で、彼女との思い出が

蘇る。初めて、デートをした事を。彼女を

駅まで送っていた。あの時に、俺たちは

キスをした。人生で、初めてのキスをした。

それを妹にバレないように。いつもの感じで

振る舞うのが大変だった。それぐらい、彼女との

初めてのキスは、俺にとって、特別だった。でも

その特別な思い出が霞むぐらい。今の彼女の表情の方が

俺にとっての特別を塗りかえった。もっと、近くで

彼女の死体を見たいと思って。俺は、足を一歩前に

動かす。だが、目の前に警察官が立ち。彼女の死体を

ブルーシートで隠した。「ここから先は、関係者以外

立ち入り禁止です」大きな声で、言う。警察官の声が

うるさかった。「俺は、彼女の彼氏です」俺が、そう

言っても。警察は、俺を捜査線に通しくれなかった。

それどころか「君の昨夜の午前二時。どこで、何を

していましたか?」それどころか。俺の事を疑ってきた。

まぁ、そんな時間。家で、寝っていた。そう言ったら。

「それを証明してくる人はいますか?」って聞いて来た。

何を言ってるんだ。俺が、家で寝っている証明を誰が

できる。家族も全員寝っているし。警察の意味不明な

アリバイ聞きにうんざりしていると「お兄ちゃんなら。

その時間。確かに、家にいましたよ」突然、俺の後ろから。

声が聞こえた。この馴染みのある。声は・・・・・・

「杏?・・・・・・お前・・・・・・どうして?」

俺が、後ろを振り向くと。そこには、妹の杏の姿があった。

「お兄ちゃん。大丈夫?」俺の事を心配してくる。妹の

 声が、体に沁みる。結局、妹の証言が効き。俺は、警察から

 疑われずに済んだ。その後、妹と一緒に家路に帰ろうとしていた。

 「ありがとうな。俺のアリバイを証言してくれて」妹に、礼を

 言える事ではないが。その妹も「お兄ちゃんが、殺す訳ないのにね」

 可愛らしく。微笑む妹の顔が一瞬。死んだ。彼女に見えた。

 俺は、腕で目を擦り。もう一度。妹の顔を見る。「どうしたの?」

「いや、何でもない。何でもないよ・・・・・・」妹の前で泣く訳には

 いかない。俺は、悲しみと彼女の死体を見て。恍惚した。あの感情を

 押し殺し。妹の顔を見つめる。「なぁ、俺さぁ・・・・・・ちょっと

 コンビニを寄るから。先、家に帰ってくれないか?」「だったら、私も

 一緒に行くよ」「いや、少しだけ。一人になりたいんだ。すまん」一人に

なりたい事を妹に言う。すると、妹は「わかった。じゃあ、コンビニの肉まん

食べたいから。お兄ちゃん。買ってきて」妹が、肉まんを俺に頼む。俺は、少しだけ。笑って「あぁ、わかった」短く了承すると「じゃあ、よろしくねぇ」そう言って

妹は小走りに。俺の元から離れる。それを見送ると。俺は、近くのコンビニと反対の道を歩く。俺は、彼女が殺された。あの場所に向かった。彼女が殺された。

あの公園に走りながら向かう。まだ、あるかもしれない。彼女の死体をもう一度。

警察に邪魔されない所で。もう一度、見たい。そう思って、走り出す。俺の前に

女子高生が現れ。そのまま、ぶつかった。「あぁ、ごめん。怪我はない?」俺と

ぶつかった。女子高生は「大丈夫です」と言って。俺の差し出す手を掴み。ゆっくり

体を立ち上がる。「本当に大丈夫?」念のためにもう一度。聞くと「大丈夫です。

何ともありませんから」そう言われ。俺は、心を撫でおろした。「よかった。あぁ

じゃあ、俺、急いでるから」そう言って、俺は、再び。走り出す。でも、この時の

俺は、ある大きな過ちを犯した。俺のズボンのポケットには「あれ?写真?」

拾い上げる女子高生。俺のズボンのポケットには妹の写真が入っていた。その事に

気づかず。俺は、もう一度。彼女の死体を見る為に。走っていた。杏。ごめんな。

この愚かなお兄ちゃんを許してくれないか。今と思うとそう思うよ。俺は、あの

美しい彼女の死体を警察が回収する前に。もう一度見る為に。大切な人を

また失うなんて・・・・・・。

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