第36話 テスト開始
「それでは始めて下さい!」
教壇には美月が試験官として立ち試験開始の号令を発した。いよいよ中間テストが始まったのだ。
『今日ばかりは美月に見惚れていられないな。試験の最初は数学か。大丈夫だ。自分の会社の開発したAIを信用しよう』
天翔は玲子の指示通りにAIが予想した問題のみをピンポイントで勉強しただけで試験に臨んでいる。
つまり試験のヤマをAIが張った形となっており、完全にそこしか勉強をしていない。
『新製品は開発した会社の者が効果の実証をする事が多いけど、まさか俺が事実上の実験台になるとはな』
と悲劇的に嘆いてみたが本音ではAI開発に携わったスタッフを信頼している。もうここまで来たらAIと、いやスタッフと心中という形になったとしても仕方が無いと腹は括っている。
万が一にもAIのヤマが外れた場合、赤点という形でトップである天翔が責任を取る事になってしまったが、気の迷いは無かった。
『これは…マジか』
天翔は問題用紙をみて驚愕せずにはいられなかった。
『凄い。数字が微妙に違うだけでAIの予想問題がほぼ当たっている!』
AIが作成したのは飽くまでも予想問題である。当然ながら若干の差異は有るが、ポイントは完璧に抑えられている。
ほぼ同じ問題を熟しているのだ。天翔は何の苦労も無く解き進めていく。
『これ、満点以外を取りようがないな』
大幅に時間を余らせて全ての問題が解き終わった。記名欄を含めて見直しを3回した。それでもまだまだ時間は残っている。
『これで残り時間は美月を見つめていられる』
クラスメイトが試験に苦戦している中、天翔は堂々と美月を見ると天翔の視線に気が付いたのか美月も天翔を見つめてきた。
暫くの間は誰にも気が付かれずに教室内で堂々と見つめ合えても流石にずっとと言う訳にはいかない。誰かに気が付かれたら終わりなのだから。
その内に美月は何やら口を大きく開けて声には出さずに天翔何かを訴えている。
『ちゃんと終わったの?』
と言いたい様だ。それに対して天翔はグーっと右拳した親指を立てて見せる。すると美月は満面の笑みを浮かべ、もう1度口を開く。
『他の教科も頑張ってね。特に英語を♡』
クラスメイトが居る中で美月とこんなやり取りが出来るなんて思ってもいなかった天翔は俄に興奮する。
『よし、AIを開発したスタッフには臨時ボーナスだ!』
益々調子に乗りそうな天翔であったが、そろそろ他にも解き終わる生徒が出てもおかしくない時間だ。
美月との見つめ合いは自重して問題用紙に再び目をやり考えた。
『教師の性格まで読むなんてAIをよく開発してくれたな』
開発したスタッフへの感謝を忘れない天翔だが、1つの疑問が湧いた。
『川﨑ならどんな問題になっていたんだ?』
そして嫌な事を思い出す。
『確か川﨑はそろそろ戻って来るんじゃないのか?』
本来の担任である川﨑は新学期の初日から入院している。
『嫌な事を思い出した。何か対策を練らないと美月や演劇部が危ない』
天翔は数学のテストの残り時間を川﨑対策を考える事に費やした。それに伴い表情は自然と険しくなる。
それを見ていた美月は思った。
『天翔くんの表情が突然険しくなったわ。まさか今になって実は間違いに気が付いたのかしら?』
天翔の思惑も事情も知る由もない美月は、見当違いな心配をしていた。
△△△△△△△
昨日、誤って34話の前に35話を投稿してしまいました。
申し訳ありませんでした。
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