第27話 作戦会議
それからの夏休みは体力を無駄に使うくせ割に合わない依頼をこなす。
しかもその全てが街中で出来る重労働……。単純でなにも難しくないんだけど私たちのやりたいことはこれじゃない感じというか。
私を含めた4人は依頼に満足していない。
ある日、私たちは集まって作戦会議をすることになった。同じ部屋なのだから外で集まる必要もないのに約1週間分依頼でこなしたお金を外食で全て消費する。
運ばれてくる料理はいつになく美味しく感じた。大食いだと思っていたショナはお金が無くてあまり食べられないでいた。
ユウリはなぜか沢山注文していたけど……。
「まあユウリは仕送りあるからねぇ~」
「愛されてるのね」
「私はまあ……そんなにお金があるわけじゃないから。ユウリはお金持ちで私は庶民だから」
ショナの家計は消して裕福ではないが貧困というわけでもない普通の家だけど仕送りができるほどの余裕はないのだろう。
そのためユウリの食べているものを物欲しげに見ている。
「あげないよ!わかってるでしょ」
「……まあね」
ユウリは身体のエネルギーを使う。ユウリの話だと脂肪と寿命を使うことで強力な魔法を使えるようになるとか。
そのため沢山食べておかないと最悪寿命を削ることになるから食事の横取りはできない。
ユウリ自信も自分が食べられるギリギリの量を毎回食べているという。そうしないと命に関わるのは難儀なモノだ。
さすがに毎日大食い選手並みに食べていては貴族やお金持ちでも仕送りだけでは間に合わない。
フーリアは学校に通い続けるためのお金を稼ぐ必要があるという。
フーリアの義理の両親はエステリア学校に入ることをよく思っていないらしい。
それもそうだクレスト王子から私は話を聞いているけど、ホワイト家を乗っ取ろうとしているのがフーリアの今の両親だから……。
そのため学費は自分で稼ぐ必要がある。
ということでショナは冒険者として名を上げるために。ユウリは仕送りだけはいずれ命を消費する魔法を使うことになるからお金を稼ぐ目的があり、フーリアは学費を稼ぐ必要がある。
そして私は……とりあえず今はフーリアと仲良くなるためにお金を稼ぐ。
フーリアは大変だから外食なんてなかなかできない。そこへ私が「奢るよ」と声をかければどうなるだろう。
きっと仲良くなれて昔みたいに話せる関係に戻れるはずだ!!!!
もちろん美味しいものを食べたり、買い物とか娯楽を楽しみたいという欲望もある。
「そのためにはもう少し割りのいい依頼を受けたい!!!!」
外食中の飲食店ということも忘れてショナがバンッとテーブルを叩く。
回りの視線が一点に注がれる。すごく冷ややかな視線だ。
私とフーリアとユウリは目をそらす。そんな逃げる私たちの視線を他所に軽々しく動き回るショナ。
反応しなければ逆に視線を浴びる行為をするので仕方なく3人ともショナの方へ向き直る。
「それはやめて」
「じゃ、人の話は聞いて」
「「「はい……」」」
私たちは話し合いを進めて行く内にその原因となったものを思い出す。
それは女性冒険者が未だに昏睡状態に陥っている原因……あのとき襲ってきた怪しい男について。
そもそも良く分からない怪しい魔力が街の外にまだあるかもしれないわけで……。
「それさえいなければどうにかなるんじゃない?」
「倒すの?解決するの?それはさすがに危険じゃない?」
「危険だと思う!だけど私たちはあの学校の1年全員の試合で沢山勝ち進んだ実績がある。1年の中じゃ最強チームのはずだよ!!」
フレイヤやクレスト王子は分からないがチーム戦なら勝てる可能性はある。
それくらいに実力はあるだろう……が……。
「だとしてもそれは1年だよ。それにあの男がどこにいるかわからないし」
「確かに……せめて居場所だよね」
「いやいやわかっても行かないから」
ショナとユウリは普段から仲が良い。だからこういう話し合いは得意なのかお互いに意見が飛び交う。
私とフーリアはその話を静観しているだけ、意見するのは苦手だけど多分フーリアはあの怪しい男を相手するのは嫌だと考えているはずだ。
私も正直アレには関わりたくない。
しかし、私の考えとは裏腹に以外にもフーリアは乗り気だった。
「……まあありね」
「なっ!?フーリア?さすがに危険だよ!!」
「でしょうね。だけど冒険者は危険が付き物、これくらいはこなさないと」
「正気?あの怪しい男はまともでじゃないし、多分強いよ?そこまでしてお金が欲しいの?」
「……そうよ。悪い?」
「いや……まぁ……」
フーリアは学校に通うためのお金が必要だから切羽詰まっているのかもね。
どうやら反対しているのは私だけみたいだ。
「別に嫌なら来なくていいわ」
「そんな言い方……」
「ちょ、ちょ、ちょっと!!喧嘩はダメ~!!!!」
私とフーリアのやり取りに我慢ができなくなったのかショナが割って入ってくれる。
ショナとユウリのお互いの事が分かっているようなスムーズな話し合いと違い、どうして私達はここまですれ違うのか……。
悲しい気持ちになりながらも一旦落ち着く。
と言ってももうここまで来たら私の選択肢は1つしかない。多数決でどうするか決ったのならそれに従う。
前世でも主張せず大多数の意見に賛同して付いていたその通りするさ。
「はぁ……分かった私も行くよ」
「嫌なら本当にいいんだよ?そんなまだ半年も一緒に居ない仲なんだし……」
「ありがとうショナ。意見のすれ違いはあってもこのチームは大事だから……」
「うぅ……ルーク!よーし、じゃああの怪しい男を捕まえよう!!!!」
ショナが腕を掲げる。
「おーっ!!」
しかしその意気込みに誰も反応しない。
「……三人とも掛け声くらいは出してよチームなら」
ショナ一人で号令を上げる。
それに乗らなかった事でショナに怒られた。しかしそこへすかさずお店の店員さんが現れてうるさいから出て行けと言われてしまった。
幸先の悪いスタートを切った怪しい男探しが幕を開ける。
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