第12話 ルエリアの王子
入学式から1ヶ月程経った。
結局私は亡き母上の願いを叶えるためにこの名門学校に合格した。
とりあえず当初の目的は果たせたので他に目的を設定しようと考えている。
まずは私の前世の死の原因がこの世界にあるという事でその解明……だけどこれは個人的にあまり興味が無い。
ルーク=バレンタインとして生活していくうちに前世の事なんてあまり気にならない。
今はこの人生を全うするべきじゃないだろうか!
そしてもう一つ目的が出来た、これは今の私の最優先事項。
それは……フーリアと仲直りすることだ……!!
ちなみにこの1が月間、仲は良くなるどころか悪化する一方だった。
フーリアとは同じクラスになったんだけど実技の授業になるとやたら私と勝負したがる。
当然嫌われたくない私はその勝負に応じるものの、勝ってしまうと可哀そうだと手を抜いた……それがダメだった。
フーリアは剣の腕なら私を超えているから手を抜いているとすぐにバレてしまう。
フーリアの方が上なのに私の方が勝率が高いのには理由がある。
それは私は聖剣を使っていてフーリアはどこかの鍛冶師が打った本当に安い無名の剣を使っているという所だ。
要は武器差で私は圧倒的な差を付けている。
そんなので勝っても何も嬉しくないし、ずっとフーリアを不機嫌にさせるだけなのでいい加減勝負したくない。
しかしフーリアは強さに拘っている。
やはり子供頃離れ離れになってから何かあったと考えるべきね。
それを聞くことも出来ないこの関係性がとっても歯がゆい……。
そして今日も実技の授業がある。
当然の如く、フーリアが勝負をしかけてくる。
目が合ったら即バトルみたいな感覚でフーリアに話しかけられるのは嬉しいのに嫌な感じに……。
彼女を嫌いになった訳じゃなくて、これ以上嫌われるのが嫌になっただけ。
そんなことを考えながらフーリアの誘いに返事をどうするか考えていると――
「君達、同じ者同士で競い合いすぎじゃないか?」
「は?なんですか?」
どこかチャラい男子生徒が話しかけてくる。
このフーリアの圧に屈しないなんて凄いわ……。
「あはは、なかなか荒っぽい口調だ貴族なら実家の印象が悪くなるよ」
「……」
「まあいい俺はクレスト=ルエリア=フォン=エステリアこの国の第4王子様だ!」
「自分で王子様って……きも」
「おっと……」
フーリアもまた王子様を相手に退かないどころか……不敬罪に当たるようなことを平然と放つ。
大丈夫かな……不敬罪で死刑と敵ったらさすがに嫌だ。
「まあいいけど、それよりルーク=バレンタイン君と戦いたい」
「え……わ、私ですか」
「うん、気になるんだよね。魔導士を排出しているバレンタイン家の剣士。それもその歴史上最強の剣士と呼ばれたルークの名を冠する君のね」
「……」
ルーク=バレンタインは私の400年前くらいに居たというご先祖様の名前でもある。
クレストの言う通り歴史上最強の剣士なんだけど、バレンタイン家はいつの間にか魔導士の家系になっていた。
「ほう……あの子がバレンタインの……魔導士ではなく、剣士は珍しい」
「ルークって男の子の名前だと思ってたけど、歴史上最強の剣士だったんだ!」
「ああ、そんな名前を貰っているんだからさぞ素晴らしい剣技を持っているんでしょう」
どうやら名前だけで持ち上げられているみたい……。
剣術の方は残念ながらダインスレイブ
それでも剣士の道を歩みたいのはせっかくかっこいい刀の聖剣と契約で来たから使いたい!!
というのが理由……。
本当は私……魔法の方が得意なんです……!とは今更言えない。
そんな事を考えていると突然私の前にフーリアが立つ。
「待ってください。どうしてこの子なの?」
「そりゃ、君より強いから」
「ーーッ!!」
迷わずそんな言葉を放つクレストとそれを恐ろしい形相で睨みつけるフーリア……。
相手は王族なんだけど……。
しかしフーリアは止まらない。
「私の方がこの子より強いわ」
「でも君、負け越してるよね」
「……クレスト王子こそどうして入学式の挨拶に来なかったんですか?主席ですよね?コネで主席へ入れてもらったとか?」
「実力は伴っていると俺は思っているが……痛い所を突いてくるね」
どうやらクレストの地雷を壮大に踏んでしまったのか今まで穏やかだった空気が一変する。
にらみ合う2人の間に入っていける勇者なんて居ない……そう思っていた時!!
勇者ショナが2人の間に入って仲裁する!!
「うわぁ!!フーリアァァァァアアアア!?今日は私と勝負する約束でしょ!?」
勇者とは思えない慌てぶりだけど……とりあえず様子を見よう。
「ショナさん……そんな約束――」
「それじゃあ王子様、この子は私が貰っていくので!」
「ちょ……勝手な――」
フーリアは何か言おうとしていたけどそれを手で口を押さえて言わせない。
2人は仲良く……?去っていったけど、この状況は私にとってもあまりいいモノじゃない。
だってこの国の王子と勝負することになるから。
しかしフーリアがクレスト王子に対して不敬な事を言い出しそうだった……嫌言ってたけど。
最悪首を跳ねられていてもおかしくなかったから……助かった。
だからこそここは私が引き受けないと!
「分かり……ました」
クレスト王子は金色の短髪に赤い瞳。体格は流石に剣士だけあって良いし、背も高い。
まあ私が女だからそう見えるだけかもしれないけど……。
そんな王子様は私のその返事に納得したように頷く。
「それでいい」
なんだか腹立つけど……ここは精神的に大人である私が譲歩するべきよ……!!
怒りを抑えながら身体にしまっている剣を取り出す。
「ほぅ……鞘がない聖剣か。自分の意志で呼び出せるのは便利だが……サイズが合っていないようだな」
「あ、ありがとうございます……でも結構馴染みますよ」
「ふむ……まあいいか……」
逆にクレスト王子は体格に合った聖剣を鞘から抜き放つ。
この国の王子であり1年の剣士主席との模擬戦が始まる。
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