第11話 入学式
学校生活が始まった最初の寮入りの日。寮の部屋割りは本来であれば喜ぶべきものだった。
けれど今の私達……というか私とフーリアは違った。そりゃ昔のような仲良しならなんの問題もなかった。
ただ今のフーリアは……。
「私の個室は端がいいんだけど」
4人部屋の間取りは部屋に入るとリビングがあり、そこから等間隔に4つ部屋に小部屋に分れている。
ただリビングと言ってもほぼ廊下と簡易キッチンと共用のトイレとお風呂がほとんどであまり広くはない。
フーリアは4人部屋に入って一番奥の部屋をご所望らしい。
ちなみにどこも狭い寝るだけの部屋。
「私はいいけど、ショナとユウリはどう?」
ユウリとは同じ部屋の子でちょっとぽっちゃりとした女の子。この子はショナの友達らしい。
私はフーリアと友達……だった。
ショナとユウリも友達ということはもしかしたら部屋決めの時にそれも決める要因じゃないだろうか。
それかユウリは外国の貴族みたいだから配慮されたのかもしれない。
私とフーリアに関しては子供の頃の事件が王都でも一時期話題になっていた。
バレンタイン家とフーリアの家の事件は有名という。
学校の教員の中にバレンタイン家とホワイト家が仲が良かったことを知っていればこの組み合わせにすることもできる。
本当にそういう理由で割り振られているのかは分からないけど可能性としてはあるだろう。
じゃなきゃこんな偶然はないだろう。
「私はいいよ~!ユウリは?」
「私もいい……というか部屋に入る時あまり歩きたくないから私は手前が良い」
「あははさすがユウリ~!一杯動いて痩せたら可愛いのに~」
「興味無い」
「あらら……まあそれは仕方ないとして……私はいいけどルークは?」
完全に会話の主導権はショナが持っている。
彼女の明るい性格上、まとめ役が会うみたいで私もそういう人が居てくれると助かる。
「私も大丈夫……ショナはどうする?」
「私は余りでいいよー」
「そ、そう……」
私は咄嗟にフーリアを見る。
フーリアはこちらを睨んでいる……まるで隣の部屋には来るなと言わんばかりに……。
私はそれに怯んでしまう。中身はこの子達よりも長生きなはずなのに……気圧された結果私はユウリの隣を選んだ。
するとショナは少し意外と言わんばかりに――
「そこでいいの?」
「え……うん。あ、もしかしてショナはこっちがいい?」
「あ、ううん。本当にどこでも大丈夫だったから!ただ意外だなぁ~と」
「……意外?」
ショナの目線は私にじゃなくフーリアの方へ向いていた。
フーリアは機嫌が悪そうに俯いている。
え……私はちゃんと部屋を離したような。
どうしてフーリアは怒ってるんだ……?
まさかもっと離れろってこと?でもそれは2q無理だし……じゃあむしろ隣に来いって目配せだった……?
いや蛇をも怯ませるような、あの目を見てそれはないtと思う。
どうするのが正解だったのか。女心は分からない。
一応私は身体は女だが、魂がというか記憶が前世の男の時の残っているからか未だにそれだけは理解できない。
ただフーリアは私の部屋の位置に対して何も文句を言ってこなかったので結局これで決まった。不服そうではあったけどね。
部屋に入り、入り用になるものは全部魔法の収納用のキャリーバッグに入っているから服などはクローゼットに入れた。
ただ結構クローゼットだけど、私は服の種類に興味が無いので気にはならない。
ショナは不服そうだったけど……。
フーリアとユウリは特に何も言っていなかった、
オシャレに気を使っているのは貴族の私達ではなく、唯一の一般市民であるショナ一人だった。
ユウリは貴族みたいだけど、服には興味無いらしい。
まあ外見を気にしているのなら一番最初にお腹周りが気になるはずだ。
ユウリはそれを気にしている様子は無い。
本人がそれでいいのなら私から何か言う事はないよね、本人の自由だし。
ショナはそんな様子の私達に呆れていた。
「はぁ……全員元の素材は良いと言うか高すぎるくらいなのに……もったいない!!」
「「「はぁ……?」」」
「もういいっ!それよりこれからどうする?」
「学校を見に行きます。1人で」
「私は使用人のアナのいる宿へ。アナの様子を見たいので」
「食べて寝る……ムシャムシャ」
「……うわぁ……皆、自分勝手だね」
かく言うショナも観光しに街へ行きたいという。
本当は4人で観光したかったみたいだけど、もう既にそれぞれ予定が決まっていたので断念してくれた。
フーリアは学校へ、私はメイドのアナの様子を見に行く。
唯一予定と言っていいのか分からないがユウリは食べて寝るらしい。
そんなバラバラな4人の波乱万丈な寮での生活は始まった……。
ーー
入学式は寮入りの次の日。
私はショナに誘われてユウリと3人一緒に入学式に向かう。
一応フーリアを誘っていたのを見たのだが、あっさり断られていた。
あの子は昔はあんなんじゃなかった。
「ショナ……フーリアの事は悪く思わないで上げてね」
「うん!分かってるよそう言うタイプの子だもんねっ!」
理解ある子で助かる……そしてすぐに入学式の会場が近づいてくる。
そんな会場へ向かいながら話は続く。
「ねぇフーリアとは仲良いんだよね?」
「え、あー昔は良かった」
「昔……何かあったの?」
「あったにはあったけど……仲違いしたわけじゃないんだよね」
「なのに表向きはあんな態度を取られていると」
「表向きというか性格が変わったというか……。昔はむしろ懐いてくれてたんだけどね」
「性格……ふむふむ、もしかしたらそこはあんまり変わっていないかもよ?」
「すっごい睨まれたけど……」
あれが照れ隠しだとしてもそのリスクを負って昔のように接することは難しい。
もし違ったらもうショックで立ち直れないかもしれないから。
それだけあの子に睨まれたことが私には効いている。
精神が大人のせいか子供の頃から見てきたフーリアは自分の子供のように大切にしていた。
そんな子に嫌われてしまうなんて考えるだけで吐き気がする。
暗いことばかり考えていても仕方ないな。今は入学式に集中しよう。
どうやら首席で入学した生徒が一年生代表挨拶をするらしい。
「そういえば今年の首席は2人らしいよ」
「そうなの……?じゃあ代表の挨拶は2人?」
「なのかな……?でも、もう1人の子は壇上に上がってないね」
確かに壇上に上がっているのは1人の女生徒のみ。
フレイヤ=ブラッドローズと名乗る1年首席の魔導士の女生徒。
結構固いというか真面目というか。まあ首席に選ばれるくらいだし真面目なのはそうか。
ちなみにもう1人の首席は剣士の男子生徒でこの国の王子とか。
しかしどうしてこの国の王子が居ないのか……。
王子が入学式に来ないって問題だと思うんだけど……。
不良なのかな?
そんなことを考えていると入学式中ずっとお腹が鳴るのを我慢していたユウリが口を開く。
「私は入学試験の時に一緒のグループで試験したんだけど、名前はグレン=ジュピター……ものすごく強かった」
「どんな魔法を使うの?」
「氷の魔法、すっごく綺麗で私がお昼の弁当をつまみ食いするのを忘れるくらい」
「それはすごい!!」
ショナとユウリの2人ならではの通じる物があるんだろう。
「そういえば次席はフーリアだったらしいよ」
「え……というかなんでショナは知っているの?」
「あ……えへへ、そ、それより次席なんて凄いじゃない!」
「まあフーリアならね」
「凄いドヤ顔!本当に大切なんだねっ!」
「まあ……」
フーリアの事を褒められるのが一番嬉しかったりする……。
私は実技こそ真剣じゃなかったから本気でやっていたら分からなかったんだけど……。
まあどうせ頑張っても義母にとって迷惑でしかないからこれで良かったのかもしれない。
変に目立つと面倒な事をしてきそうだし。
私は義母への恐怖を感じながら平穏な学校を送りたいんだから!
そんなことを考えていたら長い入学式は終わった。
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