第007話 貫通弾(ピアッシング)

「────えっ?」


「スキルっていうのは、各ユーザーに一つ備わってる固有の能力! これもあとで、自分のユウから詳しく聞いてっ!」


「いきなり名前呼び……なの?」


「反応してるのそこぉ!? 言っとくけど、きみを名前で呼んだのに深い意味ないからっ! ああんっもぉ……さっさとここクリアーしよっ!」


 未来さんがスクリーンを消してから、身を翻し……。

 あのロボットへと……駆けていくっ!

 それからバンド巻いている右手を、ロボットへ向けて……突き出すっ!


「やっ!」


 ──ダダダダダダダダッ!


 ……えっ?

 黒いフィンガーレスグローブを嵌めてる未来さんの手から、オレンジ色をした鏃状の光弾が切れ目なく連射されて……。

 それが一直線にロボットへ──。


 ──ドゴーンッ!


 ロボットが爆発っ!

 いや……爆散っ!

 爆炎、粉塵、全身のパーツを四方へ吹き飛ばして……バラバラにっ!

 ……………………。

 ……えっ!?

 地面に散らばった破片が、フェードアウトしていって……。

 き、消えたっ!?


「……ンしょ。さすがにもう1-1イチイチの敵だと、書道の半紙より装甲薄いわね。さ、次に出てくる敵は、あなたが倒して?」


「倒してって……俺に言ってる!?」


「なあに? 名前で呼んであげないと反応しないつもり?」


「いや、そうじゃなくって……。もしかして俺もきみみたいに、掌から光の弾を出せる……わけ?」


「そうよ。バンドを二回叩いて、ユウを呼び出して。それから『おまかせ装備』って言えば、自動で初期装備が着くわ。そのあとでトリガーワードっていうの聞かれるから……そうね。そこは『シュート』って答えて」


「りょ……了解」


 ……いつの間にか右手首に巻かれてた、プラスチックと革の中間くらいの感触の、黒いリストバンド。

 これを二回叩く……。

 左手で、トントン……と。


 ──フォンッ♪


 右腕のわきの宙にスクリーンが現れて、中にユウの姿が。

 さすがにもう驚かないぞ。

 ……ちょっとしか。


「はいはーい、あなたの頼れるアシスタント、ユウでーすっ! ご用ですか?」


「ん、んと……。『おまかせ装備』」


「了解ですっ! 桂馬さんはチュートリアルをキャンセルしていますから、ショットを撃ち始める合図となる、トリガーワードを設定してくださーいっ!」


「トリガーワード……。シュ……『シュート』で」


「『シュ……シュート』ですねっ!」


「ああああ、そうじゃないよっ! 『シュート』!」


「『シュート』ですねー、了解ですっ! では、確認を!」


 ……またスクリーンに「決定」と「キャンセル」の選択肢。

 ほんとゲームみたいだよな、このやりとり……。


「はい、決定……っと。このあと、再確認があるんだよね?」


「いえいえー。装備の変更は重要度低いですし、戦闘中の切り替えにも支障ありますから、再確認はありませんっ! それでは、ご健闘を祈りまーすっ!」


 ──フォンッ♪


 ユウがスクリーンごと消えて…………あとは特に変わりなし。

 ここから……どうすればいいんだろう、未来さん?

 ……ちらり。


「……いまので初期装備を装着できたから。あとはトリガーワードで設定した『シュート』って言えば、右手から弾を出せるわ! さあ、あいつで試してみてっ!」


 ──ガショッ! ガショッ! ガショッ!


 新手のロボットの足音。

 未来さんが指さした先に、二体目のロボットが出現。

 銃になっている腕を、すでにこちらへ向けている──。


「ひえっ!」


「さあ、あれを倒すのよ! 大丈夫、奴の弾は遅いから撃ってきてからでも避けられるし、十発くらいまでは被弾しても耐えられるからっ!」


「十発……って、そんなアバウトなっ! そこは正確に教えてよっ!」


「って言われても、1-1イチイチで被弾した人なんて会ったことないから、わかんないわよっ! この先この世界で生きていくためにも、戦ってくるのよ桂馬くんっ!」


「わ……わかった!」


 あうっ!

 名前呼ばれてつい、いい返事しちゃった!

 でも……それがここで生き残る術なら、やるしかないだろっ!

 ロボットめ……今度はこっちの番だっ!

 全速力で駆けて、右わきへと回り込んで────。


「────シュート!」


 ──タンッ! タンッ! タンッ!


 うわあっ!

 俺の手から……本当に光の弾が飛んでった!

 こうやって戦う世界なんだ、ここは……。

 し、しかし……。


「当たってない! 外したっ! 今度はもうちょっと間合い詰めて……シュート!」


 ──タンッ! タンッ! タンッ!

 ──タンッ! カンッ! カンッ!


「あ……当たった! 二発! けれど……爆発しないっ! 効いてないっ! 撃てた弾も……未来さんのと全然違って数少ないし、ピンポン玉みたいに小さいっ!」


「そりゃああなたはレベル1なんだから、わたしと同じようにはいかないわよ。それに……しても……」


「ん?」


「確かに貫通スキル……。貫通弾ピアッシング……だわ! そのまま攻撃続けてっ!」


「……うんっ!」


 ……このロボット、動きが遅いっ!

 追われてるときは恐怖で気づかなかったけれど、こいつが背後を振り向くまでに、俺がもう一周回り込めるほど鈍いっ!

 もう少し近づいて……確実に弾を当てていくっ!


「シュートッ! シュートッ!」


 一度叫ぶごとに、ピンポン玉大の白い光弾が、数十センチ間隔で三発飛んでいく。

 未来さんが撃ってたのは、矢のように先端が尖ってて、一本の線のように連なってたのに……。

 レベルって概念もあるみたいだし、武器も強化していける……のか?


「……アハハハッ! まごうことなき貫通弾だわっ! アイコンでわかってたとは言え、いざ目の当たりにするとちょっと感激ね! 桂馬くんのスキルがあれば、『LUNA MAREルナ・マーレ』…………海土泊現在を倒せるかもっ!」


「…………ええっ!?」

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