第6話 専属執事の正体
緩慢に瞼が上がる。白銀色の睫毛が目下に影を落とした。宝石と見まがうほどの輝きを放つオパールグリーンの瞳が現れる。霞がかる視界の中、何度か瞬きを繰り返す。
苦痛を訴える体に無視を決め込み、無理に起き上がる。上体を起こしただけだと言うのに、体が悲鳴を上げている。激しい頭痛に、吐き気。体は
「姫様……?」
何者かに呼ばれたことにより、回想は強制終了する。アリアリーナは自身を呼んだ人物を確認するべく、声がした方向を見遣る。
「目覚められたのですね。よかったです」
まったくもって「よかった」とは思っていないであろう淡々とした声でそう言ったのは、黒色を基調とした執事服を身に纏った少年であった。
名は、レイ。アリアリーナの専属執事。年齢は16歳。フルネームは、レイ・エルンドレである。ありとあらゆる任務を完璧にこなす最強の暗殺者一族、エルンドレ家の次期当主。直系の中の直系。アリアリーナのかなりの遠縁に当たる。
アリアリーナの母方の祖母は、このエルンドレ一族の末端の生まれ。母方の祖父が、かの最強の呪術師一族リンドル家の直系の生まれ。ふたりの間にアリアリーナの今は亡き母、アイーダは生を
リンドル家の長年の
「姫様?」
レイはコップに入った水を差し出しながら、心ここに在らずの状態のアリアリーナに声をかける。
「あなたにそう呼ばれるの、なかなか慣れないわね」
レイの手からコップを奪い去り、一気に水を飲み干す。濡れた唇を人差し指と中指の腹で
「俺も、アリアと呼ぶほうが性に合ってる」
レイはふわりと微笑む。花が
「ところで、なぜ私はベッドの上にいるのかしら」
「……覚えてないのか? ディオレント王妃を殺すための毒を自ら飲んで倒れたんだよ。呪術が施された毒を飲んで生きているのが奇跡だ」
レイの説明に、アリアリーナは先程中断してしまった記憶の回想に再度取りかかった。
皇族を滅ぼすため、ツィンクラウン皇帝の異母妹に当たるディオレント王国の王妃アデリンを
15歳で私生児の皇女となったアリアリーナは、この約二年間、皇族の血縁かつ過去にツィンクラウンを一度でも名乗ったことのある人々、つまりかつての皇子や皇女、それも
だからと言って、毒を自ら飲むなど、どうかしている。アリアリーナは、自身の
「アリアが意識を失ってから七日。俺が
レイは天使さながらの雰囲気を醸し出しながら、笑った。
毒入りのワインを渡した男が自白し、彼の自室にあらかじめ仕組んでおいた空き瓶も見つかったことだろう。しかし毒を飲んだアリアリーナは
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