8.王国最強聖騎士が謝りながら喧嘩屋を引き取りに来た件

「うちの妹が本当にすまない」

「いやロサリア兄様が謝る事じゃねえよ」

「誰のせいだと思ってるんだレイラ!」



 ロサリアさんが頭を下げるとまじでなんか申し訳なくなるからやめてほしい。てか妹だったんかい。道理で格上との対戦経験少なそうな訳だ。王族の喧嘩屋とかマジで喧嘩したくないもん。勝っても死ぬやろそんなもん。全員負けるわそれ俺冷や汗ダラダラなんだが。



「いや俺もうここに住んでるし、このパーティーに入ったし」

「勝手に住み着いただけだしパーティー入るの認めてないからロサリアさん引き取って下さい」

「はあ!? 俺『五龍』だぞ!? 断る理由あるのか!?」

「まあぶっちゃけ……邪魔かな」

「おいおいおいおい俺にそんな口利いた奴初めてだぞ! 流石俺の旦那だな!」

「なんで嬉しそうにするし。旦那でもねえよロサリアさん助けて」

「いや……本当にすまない」



 まじで空き部屋に勝手に住み着きやがったからなコイツ。家の中で暴れられたら堪らないからなんとか説得してたけど無意味。謎にテーブルマナーとかふと出る仕草に気品があって絶対貴族出の放蕩娘だわとか思ってた。どこからか聞きつけたロサリアさんが駆け付けてくれた時マジで神だと思ったね。



「レイラさんがパーティーに入るなら私も入ってもいいんじゃないですかね?」


 バーンと扉が開かれた先に現れた聖女。

 ……いやなんでやねんほんと。


「クルス!? 何故ここに君が!?」


 ロサリアさん、露骨に狼狽える。え、仲悪いの?


「え、なんでクルスさんまで来るの」

「あ、やっほークルス久しぶり!」

「お久しぶりですレイラさん」



 あ、クルスさんとレイラも知り合いなの。へーそう。マジで頭痛くなってきた。……!? シルがプルプル震え出した!?



「……『五龍』が二人も加入して……しかも一人はクルス様……もう……私用済み……」

「シル、一回落ち着こう。用済みなんて絶対そんな事無いし、そもそもあの二人パーティーに入れないから」

「そうだぜシル、あんたが居てレオも最大限の力を発揮するんだから必要だろ。それになんでかクルスは入れないらしいから安心したら?」

「元凶のお前が言うんじゃないレイラ!」



 そうだお前は怒られろ。頑張れ皆のお兄様。



「白魔導の使い手が二人居ても問題無いんじゃないですかね?」

「クルス、君は神殿騎士団の最高位の騎士達とパーティーを組んでいたんじゃないのか? 彼らに問題が?」

「辞めましたよ? 問題、ええ些細な事の積み重ねですが」

「……その問題は後で私に詳しく聞かせてくれるかい?」

「たまに不埒な視線を感じるとか、命を賭す程の信用はしてもらえないとかそんな事です」

「聖女である君にそんな……」

「いやクルスさんはそのちょっと胸の露出があって謎の下穴開いてる改造修道服着るのやめろ」

「でもレオさんはそんな視線私に向けないじゃないですか! 後この穴は蒸れ対策です!」

「……神殿騎士団に正式に抗議文を送るか」

「ロサリア、王国と教団の関係が微妙な時期にやめてね?」

「しかしクルス、君が……」



「え、なんやコレ。『五龍』が四人もおるやんウケる」



 ロサリアさんとクルスさんがなんか聞いちゃまずそうな話まで始めて帰りたくなってきたが、ここがお家なのでどうしようもねえ詰んだわとか思っていたらうちのパーティーの常識枠がこのタイミングで帰ってきた。



「あ! スズおかえりー!」

「おーマジクただいま! 相変わらず可愛いなあ!」

「おースズおかえり。いま取り込み中でな」

「見たら分かるわ。クルスさんおるからシル震えてるやん」

「え、シルさん震えてるの私のせいなんですか? 私はシルさんと仲良くしたいのですが。シルさんの付与魔導凄いですよ? 私では絶対にあの効果は出せませんし」

「いや、あの違くて、クルス様が悪いんじゃなくて!」

「うーん。なあレオっち。ちょっち状況が分からんから説明してくれるか?」




「なるほどなあ。『蒼麒麟』が王族って話は初耳やなあ」

「俺が内緒にしてもらったからな!」

「んでレオっちがその『蒼麒麟』ど突き回したら旦那宣言されたと。んー、ロサリア様。レオっちの首は大丈夫なん?」

「王家としては、『蒼麒麟』の私闘に関して結果に関わらず一切の口出しはしないとしているから問題無いよ。まさか勝った相手を旦那にする為に旅をしていたとは思わなかったが」

「だって素性がバレてたら本気でやってくれねえだろ。それに俺、大体の奴はカスれば勝ちなんだぜ。全戦全勝だったんだからいいだろ」

「だからあんな射線も動きも素直だったのか……」

「おい待てレオ。めちゃくちゃフェイントも混ぜてたろ脳筋みたいに言うな。流石にそこまで脳筋だったら『蒼麒麟』にまで成れてねえわ」

「……え? あれで?」

「うわ、本気で言ってやがるコイツすげえ!」

「レイラ、嬉しそうにするな。ふむ、レオ。君は身体強化無しでこの私と試合をしても技量のみで立っていられた。この意味を考えたほうがいい」

「え、ロサリア兄様と……? 何それ化け物じゃん」



 王族兄妹が呆れた顔で俺を見る。そんな顔で見られても困る。



「んー、話それたわ。で、レオっち的にレイラ様もクルス様もパーティーに加入は認めんっちゅー訳やな」

「もち」

「おいおい別に前衛が一人増えてもいいだろ」

「そうです。白魔導の使い手が一人増えてもいいじゃないですか!」

「いやレイラ様は……旦那の件は置いといて、なんでそんなに『白獅子』に入りたいん?」

「ここに居ればレオといつでも手合わせ出来るだろう!」

「……思ったより脳筋やったわ。んー、ロサリア様。王家から『白獅子』への依頼で『蒼麒麟』との合同訓練みたいな形に取れへんかな? レイラ様が手合わせしたい時は毎回王家から依頼してもらう形で」

「それなら私から話を通しておけば可能だが」

「なら依頼で頼むわ。それなら王家も『蒼麒麟』の現状把握も出来て一石二鳥やろ? レオっちも、依頼が来た時に手合わせ付き合う形ならええやろ?」

「まあ依頼なら」

「ロサリア兄様! すぐに依頼してくれ!」

「レイラ、分かったから。……放蕩娘に首輪が付くか。スズ、君に感謝をしなければならないようだ」

「かまへんかまへん。うちはレオっちの為に言うてるだけやし。……で、まあクルス様は……今回はとりあえずあきらめてもろて」

「そんな!?」

「クルス様、ぶっちゃけうち今回のやり方、気に入らんからなあ。気付いとらんと思うてたら大間違いやで?」

「う……でも、だって」

「いやクルス様が純粋な気持ちで暴走しちゃったのは分かるから。レオっちにも言いはせんけどな。せやから今回は引いてや」

「……はい、分かりました」

「何の話?」

「女同士の話やレオっち。クビ突っ込んだらあかんで?」

「へーい」

「よーし話は纏まったな。て訳でロサリア様。二人をよろしゅう!」

「あ、ああ。君は凄いなスズ」

「孤児院のチビ達に比べたら可愛いもんや」



 あれだけカオスだった場がスズが来て一気に纏まった。流石孤児院皆んなのお姉さんなだけある。

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