詩
好きなもの、好きなこと
イヤホンで耳をいじくって
最近のイヤホンはものがいいので
音が生まれ 染みて無に戻っていく あの減衰はとても心地がいい
主旋律が用意したその出番に向けて スティックを溜めて 万事良好とたわませるように振り下ろしながら 立てる音はかっちりとした
期待通りを涼しい顔で だから何回も進行を待つ 君がいい
弦を断然
音を立てる時を待ちかねて はっきりと鳴って「はっ」とさせて そして暗闇をあとに残す
かと思えば「びん」と戻ってきて 跳んで 「ここはとてもいいところさ」と目配せをくれる
君がいなかったら きっと生きている幸せの 何割ぐらいかはわからないはず
たまに聞こえない時がある
聞こえはする でも減衰がわからない あの暗がりがいない
具合がぱっとしないのだろうと思うことにしている でもつまらない
耳を澄ますと気が抜ける 身体が緊張していても
逆の順序で夢を見ている、そんな感じだ
夢から居眠りが起こるから 夢の居場所に君らがいて 何ともまあ 何もない
これはまあまあ好き
石を投げ上げて てのひらに染ませるように受け止める
慣性の名残をやぶってまた飛ばし 消えた重さを注ぎ足したらまた飛ばす
そういう遊びが好きだった
僕の好きなもの、好きなこと 丸まって聞く音楽が連れてきてくれたいつかの加速度
君は裏打ちスタッカート 充溢消散マルカート
待たされて満たされる この暗がりのまんなかは いいところ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます