第18話 再出発

 ナナのマナが大爆発した後、警官やら消防士らがビルに踏み込み、そこでぶっ倒れていた連中はあらかた確保された。拳銃も多数押収され、どうやら暴力団の内部抗争という線で、警察が調べている様だ。


 エリカは麻美と共に、児相の吉村さんに来てもらって助けを求めた。


 そして、エリカの口から、理人や芳野、そして先輩達の所業が明らかになり、まあ学校も警察もてんやわんやになった様だけど……それはまあ専門家プロにお任せしよう……桂浜先生、首にならなきゃいいけど……。


 麻美の口から、ナナの売春を斡旋していた事も明るみに出て、麻美の勤め先や高橋などのクソ虫たちにも、警察の手が回った。


 エリカも麻美も、児相の用意した収監場所で一ヵ月程すごし、面談を重ねた。

 そして、麻美の希望もあって、一度、親子で離れて暮らす事にした。

 麻美は、罪の償いをしながら、シックマザー用の再教育プログラムを受けるつもりらしい。


 吉村さんが言うには「虐待やネグレクトをする親のほとんどが、幼少時に同じ経験をしていて、どうすればいいのか分かっていないケースが多い」のだそうで、まあ本人がそれを自覚して、やり直そうというのであれば応援するしかないよな。

 

 リヒトや芳野達の行いは、もう単なるいじめの枠を大きくはみ出しており、鑑別所というのに送られるらしい。

 理人はまだ病院だが、理人の養母も逮捕されたと聞いた。

 まあ、あの先輩達やビルにいた反社の連中は、お縄になってもしょうがない人達なので、どうでもいいのだが、例の悪夢のせいで供述が一定しない様で、エリカに火の粉は飛んでこなさそうではあるが、捜査の邪魔になったのは勘弁かな。

 なお、警察はもっと反社の上層部を捜査出来ないか、調べているとの事だ。


 そして……今日。

 

 エリカは、吉村さんに付き添われて、これから暮らす事になる福祉施設に向かっている。


 電車の窓から、初夏の相模湾が見える。


 ああ……ナナは、あそこに身を投げたんだよな……。


(そうだよ!)


 あっ! ナナ。勝手に出てくんな……ま、いっか。外の景色見っか?

 そしてエリカは、ナナと入れ替わった。

「うわー。昼間見る海も、本当に綺麗だねー」


 あの時……確かにナナの魂は、部屋の中のマナと一緒に消えたはずだった……のだが、なぜかマナの収束と共に、またナナの身体の中に戻ってしまったのだ。

 しかも、前より簡単にエリカとナナが深層と表で入れ替われる様になっていた。


 エリカとしては、ちょっと残念でもあり、ホっとした様でもあり……。

 でも、ナナがたまに麻美に会いに行く事が出来るのは、二人にとっても良い事なのだろう。


 しかし……三年か……。

 その時が来たら、あたいはどうすればいいんだろう。


 でもまあ、今考えても仕方ねえか。

 せっかく新しい環境で、メシの心配がいらなくなるんだ。

 

 これからナナといっしょに、ゆっくり考えていく事にしようか。


(第一部・終 続く)


※第二部、近日中にUp開始予定です。









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