第23話 上戸刑事爆死

 宇都宮のオフィスビルにあるエレベーターに爆弾が仕掛けられ、乗客達が閉じ込められる事件が発生。東武署刑事課長である葛城は、上司の日向副署長や部下の上戸刑事たちと共に爆弾を除去し、乗客を救出する。さらに身代金を要求してきた犯人を追い詰めるが、もう一息のところで逃げられる。


 逃げた犯人は後日、とあるライトレールを爆破して葛城に電話をかけた。その電話は宇都宮東口発ダ芳賀・高根沢工業団地行きに爆弾を仕掛けたという内容で、葛城に対応させると同時に身代金を要求する。信管は速度測定系に連動し、ライトレールの速度が一度でも50 mph (80 km/h)を越えると安全装置が解除され、さらに速度がこれを下回ると爆発するという仕掛けがなされていた。


 爆破を阻止するために、警察バッジを掲げて標的となったバスに飛び乗った葛城だったが、不法滞在している乗客の一人が自分を追ってきたと思い込んで発砲し運転手のサム印出が負傷。彼の代わりに、スピード違反で免停中のため電車通勤していた獄門路美が運転を任された。


 次々とライトレールに襲い掛かるトラブルに立ち向かう中、誘導された先の区画で15メートルほど道路が寸断されている工事区間があることが判明する。最大の危機が迫る中、葛城は上り坂を利用してジャンプさせることを考えライトレールを加速させる。道路が途切れる寸前でライトレールは大きく跳ね上がり、15メートルの隙間を飛び越えることに成功した。その後もライトレールは走行を続け、葛城の機転で清原地区市民センター駅へと向かう。


平行して犯人を調査していたところ、爆弾の一部に使われていた金時計が、警察官の退職記念の金時計と判明し、その手がかりから、犯人が爆発物処理班員の宇田川と断定。宇田川は処理中の爆発事故により左手親指を失う障害を負って退職せざるを得なくなったが「命がけで何十年も働いてきたのに、警察当局は退職記念の金時計と障害年金を寄越しただけで、他に何も補償してくれない」と逆恨みし、警察に挑戦をしていたのだった。宇田川の自宅を突き止めた上戸達が自宅に突入するが、もぬけの殻の状態の中、仕掛けられた爆発物で命を落としてしまう。身元特定につながる金時計をわざわざ爆弾の一部に使ったのは、宇田川が自宅におびき寄せるために仕掛けた罠だった。


 上戸の死を知った葛城は悲しみにくれるが、バスの中の状態がマスコミを排除した後でも犯人に筒抜けになっていることを不審に思い始める。その謎を解決する糸口になったのは、宇田川が、電話連絡のみで姿の見えないはずの路美のことを「ワンピースの姉ちゃん」と再三にわたって呼んでいたことだった。路美が着ていたルフィが印刷されているシャツを手がかりに、宇田川が設置した監視カメラを発見した葛城は、車内の映像を録画してループ再生で流して見せて、犯人を欺く作戦に出る。宇田川が状況を知らずにいる中、人質は続々と別の車輌に移され、最後まで残った葛城と路美も床面の点検蓋でライトレールを離れ、乗客全員が無事脱出に成功する。無人となったライトレールは貨物列車に激突し、同時にスピードが50mphを下回ったことで、無人の貨物機共々大爆発する。その後、葛城の元に宇田川から身代金の催促の電話がかかってくる。脱出したことを知らない宇田川に対し、葛城と日向副署長は受け渡し場所に東京から応援に来ていた佐藤刑事を配置し、罠を仕掛ける。


 しかし、宇田川が録画された車内映像に気づいてしまったことで激昂し、警察官に扮装して受け渡し場所近くにいた路美を連れ去る。異変に気付いた葛城は、現金の投下地点として指示されたゴミ箱に駆け寄るが、ゴミ箱には宇田川によってそのまま地下に中身が取り出せる細工が施されてあった。葛城が地下に入ると、そこには身体に爆弾を巻き付けられた路美と宇田川がいた。宇田川は路美を人質に取り、貨物列車を乗っ取って逃走する。


 やがて電車の運転士を射殺した宇田川は、葛城が屋根の上にいる事に気づき現金を山分けしようと持ち掛けるが、袋に仕掛けられていたカラーボールが炸裂し、現金は全て使い物にならなくなってしまった。これに激怒した宇田川は屋根上の葛城に向けて銃を乱射し、直接屋根に登って葛城と格闘するが、トンネル内の信号機に頭を打ち付け首を切断され、電車から転落して果てた。


 路美のもとに辿り着いた葛城は起爆装置を解除するが、列車無線を通じて呼びかける日向副署長の声で電車が工事区間へ向かっていることを知る。葛城は電車を止めようとするが、宇田川が運転士を射殺した際に流れ弾で無線機も運転台も破壊されていたため、応答して救援を求めることはおろか、停止させることも不可能となっていた。葛城はこの先に曲線があることに気づき、速度を上げて電車を脱線させ停止させようと考える。


 工事区間に突入した電車は脱線して地上に飛び出し、横転しながら道路を滑走して停止する。群衆が大惨事に驚き車両の周りに集まってくる中、葛城は路美と抱き合う。

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