街で過ごしながら、魔物を倒す ①
フォンセーラにクラを紹介した後、しばらくこの街で過ごすことになった。
適度に予定が合う時は会って、それ以外は俺とフォンセーラは別行動である。
「なんで咲人はフォンセーラと一緒に過ごさないの?」
「俺もフォンセーラも一人の時間も好きだからなぁ」
「博人と乃愛は凄くずっとくっついているのに」
「父さんと母さんはそうだけど、俺とフォンセーラはそういうのではないからなぁ」
クラには不思議そうな顔をされたけれど、寧ろ俺の両親ぐらいにラブラブな方が珍しい。付き合い立てとかならともかく、そうでないのならばあれだけべったりくっついているのは中々ないしなぁ。
そもそも友人たちに聞いた限りも、普通に比べて俺の両親は仲が良かったし。
クラはそういう両親とずっと一緒に居たから色々不思議らしい。
「咲人、一人がいいなら僕もどっか行ってた方がいい?」
「あー……、クラはどうしたい?」
俺は正直クラが一緒だと楽しいは楽しいけれど、別行動でもどちらでもいいとは思っている。クラだって家に居た時もずっと俺たち家族にべったりしていたわけじゃないし。というか、猫ってそこまで人にくっつくものじゃないしな。
「僕はどっちでも! ここ、異世界だから咲人にくっついてた方がいいかなって。でも僕だけでぶらついていいなら探検する!」
「探検してもいいけれど、目立たないように出来るか? 誰かに捕まったりしたらちょっと面倒だからな」
「大丈夫。姿隠すよ。ほら、見て」
クラは自慢げにそう言って、ベッドの上で「にゃぁ」と鳴く。
それと同時にクラの姿がひゅっと消えた。
「えっ」
俺が驚いて声を上げると、何もない所からクラの声が聞こえてくる。
「咲人、見えないでしょ」
「……ここにいるのか?」
「うん。触れはするよ?」
そう言われておそるおそる先ほどまでクラが居たところに手を伸ばせば触り心地が良いふわふわの毛並みの感触がする。
おおっ、本当にこんなところにいるんだと思って撫でまわす。
「咲人、そこ、目!」
「あ、ごめんごめん」
見えないからと撫でまわしていたら目を触っていたらしい。不快な気持ちになっただろうに、クラの声は怒ってないようでほっとする。ああ、でもこれ、俺がクラにとって家族の枠だからこそ許されているのであって、そうでない人がこんなことをしたらクラはそれはもう怒るんだろうなと想像が出来た。
「それならばれないかも。でもそういうの感じ取れる人とかいないかな?」
「いてもどうにかする! 最終的にダメなら乃愛に頼む」
「母さんに頼むのは最終手段な」
……うん、クラにとって母さんは本当に身近な存在で、なんでも頼みやすいんだろうなと思う。
俺にとっても母さんは母さんだから、軽く頼みごとをしたりはするけど! でも、母さんはこの世界にとっては神様なんだよなぁ。出来れば母さんに頼むのは本当にやばい時にしたい。
「駄目なの? 乃愛は何かあったら言っていいよって言ってたよ」
「俺とクラで解決出来た方が母さんや父さんだって褒めてくれると思う。そっちの方がクラもよくないか?」
「確かにそうかも。じゃあそうする」
「うん。そうしような。でもどうしてもだめな時は母さん呼ぼう。細かいことなら家族会議で報告できるしな」
クラはすぐに姿を現したので、頭を撫でる。撫で心地がいい。
その後、クラは「探検してくる」といって去っていたので完全な俺の一人時間である。俺もこの街には着いたばかりだからぶらついてみることにする。しばらくはこの街に居る予定だから、お気に入りの飲食店とか作っておきたいし。
そういう食事面で気に入った場所が出来ると嬉しくなるからな。
でもそういう食事処ってペット的な存在を連れ込める場所少ないみたいだ。クラも一緒に連れ込める場所があればいいのだが。
姿を隠してもらって一緒に行くは出来るけど、なるべくそのあたりのルールは守っておきたい。
ルールの穴をついたりとかは、魔法を使えばどうにでもなりそうだけど……うん、そういうのはしない方がいいだろう。
そうなると、クラでも一緒に行けるお店どっかにあったりするかな?
表向きには宿と店の外しか行けないだとクラにもなんだか悪い気がする。だから俺はその日はクラを連れ込めそうな店を探した。
それで見つけたのは使い魔と一緒に入れるお店だった。
……使い魔って凄くファンタジーな響きだよな。大抵は魔力で結ぶ契約みたいなものらしいよ。俺は詳しくないけど。使い魔の中には凄くかっこいいものもあるみたいだ。例えばグリフォン的なものとか。
うん、そういう使い魔にのって飛ぶって凄くかっこいいよな。絵になりそう。この世界だと空の旅がそういう魔物を使ったものになるんだろうか? あとは魔法?
地球では飛行機があったけれど、この世界ではそういうものは流石にないしな。空かぁ。魔法で飛んでみると楽しそうかもなどとどうでもいいことを俺は考えるのだった。
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