第18話 カラバ王国2
シズフェ達はカラバ王国の城門の前へと辿り着く。
城門は昼だからだろうか開かれている。
その城門には1人の初老の男性が立っていてシズフェ達を見ると驚く顔を見せる。
「お~い! モンシュ爺さん! 俺だボンプだ! 入れてくれ」
初老の男性を見たボンプが馬車から降りて手を振ると近づく。
「お、お前はボンプ? どうした? 確かソノフェン王国にこっそり行くんじゃなかったのか?」
「いや、モンシュ爺さん。それがな……」
ボンプはモンシュに対してこれまでの事を説明する。
「何とそのような所にそんな蜘蛛が? そして、美人さん達に助けられたじゃと! ほほう! これは運が良いなボンプ。儂からも礼を言おうボンプを助けてくれてありがとう」
モンシュが馬車に乗っているシズフェ達を見て言う。
お世辞だろうけど美人と言われ何だか気恥ずかしくなる。
「はは、美人とは嬉しいねえ。ところで入って良いのか? このままここで止まっていたくないんだけどな」
ケイナは入って良いかどうかを聞く。
国によって馬車で入って良い場所が決まっている。
通りが狭くて馬車が入れない箇所があったりするからだ。
また、交通量を規制するために許可された馬車しか奥まで入れなかったりもする。
そういった国は城門近くの宿屋に隣接された馬舎へ馬車を預かってもらうことになる。
ケイナが聞いたのは馬車でどこまで行って良いかを確認する意味合いもあるのだ。
「おお、それはすまなかった。陛下の館まで案内しよう。ソノフェンの王子様の使いならばまずは陛下のところに案内するのがよろしいじゃろう」
モンシュはそう言って付いて来るように促す。
「おい、良いのか? 今陛下は……確か……」
「わかっておる。しかし、報告しないわけにはいかんじゃろ。それよりもお前は儂が戻るまで門の番をしてくれよ」
「わかったよ、爺さん……」
ボンプとモンシュが小さく話すが聞こえている。
どうやらこの国の王には何か問題があるようだ。
シズフェ達はボンプを残し馬車でモンシュの後に付いて行く。
王の館までの道は馬車が一台通れるぐらいには広い。
シズフェはその道を見て少し驚く。
道がしっかりと石畳で舗装されているからだ。
城壁がきちんと造られていないのに国の中の道はしっかりしている。
そのちぐはぐさが少し気になったのである。
幌の窓から外を見ると建物もかなり立派なのが多い。
これはかなり変であった。
「こりゃ! お前達どきなさい! 陛下へのお客さんだぞ!」
モンシュの大きな声が聞こえる。
カラバの住人がシズフェ達を取り囲んで来ているようだ。
別に敵意がある様子はない。
ただ、珍しい物を見ているような目だ。
ボンプの話ではこの国にはあまり外から人が来ないらしいのでシズフェ達が珍しいのだろう。
やがて、王の館へと辿り着く。
かなり立派な建物だ。
やはり、ソノフェン王国や大国であるアリアディア共和国でもなかなかお目にかかれない程である。
「ここで降りた方が良さそうね。さすがに馬車で中に入れないでしょうから」
シズフェが言うと仲間達は頷き馬車から降りる。
馬車から降りると付いてきた住民達がどよめきの声を出す。
立派な馬車であり、どんな人が乗っているのか気になっていたようだ。
「何か……。すごく注目を浴びているね」
注目を浴びる事に慣れていないマディアが居心地悪そうな声を出す。
シズフェも同じ思いだ。
戦乙女になってから注目を浴びるようになったが、未だに慣れない。
「はは、戦乙女様の仲間になっているんだから。慣れるんだな、マディ」
ケイナは笑って言う。
シズフェとマディア以外は平然とした顔をしている。
ノヴィス等はむしろ注目を浴びて当然という様子だ。
そんな事を考えていると突然館の門が開かれる。
外からシズフェ達の馬車が見えていたのだろう。
門が開かれると現れたのは鼻から下を布で隠した女性である。
目元しか見えないがまだ若そうだ。
30歳以下ぐらいだろう。
白い衣を纏った彼女は前に見た医療従事者のようである。
鼻から下を布で隠した女性はシズフェ達を見て怪訝な顔をする。
「モンシュさんですか……、どうしたのですか? その方たちは?」
「フィトクィア様。この方達ソノフェンの王子様から頼まれてこの国に来たのです。あの……、陛下とお会いできますでしょうか?」
モンシュは鼻から下を隠した女性フィトクィアに言う。
フィトクィアはそれを聞いて困った様子を見せる。
「陛下ですか……? あまり、話せる状況ではないのですが……。聞いてきますので、少々お待ちを」
フィトクィアはそう言って館の奥へと入っていく。
「モンシュさん。彼女は?」
シズフェは先程現れた女性の事を聞く。
少し気になる女性であった。
「ああ、フィトクィア様は癒し手でな。1月程前に流行った病を癒してくださったのじゃ。ただのうほとんどの者は治ったが、なぜか陛下だけはなかなか治らず今も看てくださっとる」
モンシュは首を振って言うと説明する。
フィトクィアは病がはやる1月程前にこの国に来た。
そのすぐ後にカラバ王国は病が流行ったである。
その病を治したのがフィトクィアである。
彼女は癒しの魔法が使えて、その奇跡を使い瞬く間に流行り病を治してしまった。
カラバの人々は彼女に感謝した。
ただ、王だけは治す事ができず、フィトクィアは付きっきりで看病する事になり今にいたる。
優秀な女性であり、王に代わり様々な事務までもしている。
王が病で臥せっている今無くてはならない存在だ。
「それはすごいな。外から来た者が国を動かすなんてな」
ケイナの言う通り、これは珍しい事であった。
王に何かあった時は王の親族が代わりに政務を取る。
1月前に来たばかりの女性が代わりを務めるのは珍しい。
「はい、本来なら王弟殿下が代行するのですが、行方不明でして。姫君もまだ幼いので……。仕方なく。全く病といい、行方不明者といい。何が起きているのでしょうか? フィトクィア様がいなかったらどうなっていたか……」
モンシュはさらに説明する。
そもそも、辺境で人の往来が少なく、魔物の脅威が少ないこの国では王の役割は少ない。
ほとんどの取り決めもそれぞれの家の代表の寄合で決まる事が多く。
王はそれを追認するだった。
ただ、もしもの時は王の判断が優先されるので、全く役割がないわけではない。
異変が起きている今、王が病に臥せている事で住民は不安に思っているようだ。
「なるほどな。でも俺達が来たからには安心だ。この国の問題を解決してやるよ」
ノヴィスがそう言ってガハハハと笑う。
(全く、そんな簡単に言って……。解決できなかったらどうするのよ……)
シズフェはノヴィスの笑い声を聞いて頭が痛くなる。
この国の異変を解決するために尽力はするつもりだが、絶対に出来るとは限らない。
場合によっては撤退する必要もあるだろう。
「お待たせしました。陛下がお会いになるようです。どうぞこちらに」
そんな事を考えているとフィトクィアが戻ってくる。
シズフェ達はフィトクィアに誘われて館の中へと入るのだった。
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