第17話 やっぱり不審者って思ってたのか!
町はざっと一通り見て回ったし、食材も買い足した。
それなりに歩き回ったため、今日はもう宿屋に帰って【ポータブルハウス】へインハウスしようかとも思ったが。
「どうせなら、町の外も少し歩いてみるか。ポイントも稼ぎたいしな」
現金(ボックル)が使えないPショップでも、欲しいものは結構ある。
直近のターゲットは、冷蔵庫(30000ポイント)と洗濯機(32000ポイント)と二口IHコンロ(15000ポイント)だ。
それぞれもう少し安いものもあるにはあるが、今後使い続けることを考えると、家電はある程度のスペックがほしい。
そういえば、昨日精霊に関するレポートと簡易ピザのレシピを送ったあと、ポイントの確認し忘れてたな。まあ今日の夜でいいか。
「――ええと、たしか俺がここに来るとき通ったのが、南地区と西地区の間の道だったよな」
なるほど、この道は「南西通り」で、町の出入り口になっている門は「南西門」っていうのか。分かりやすくて助かる!
俺は本屋ブクスで買った地図帳を眺めながら、これまで通った道を確認していく。
この南西通りは、中央にある中央広場を抜けたところで「北東通り」という名前に切り替わるようだ。位置的に、北地区の東地区の間になるからだろう。
「――よし、北東通りを通って北東門の先に行ってみよう」
再び中央広場を通り、レスタを横目に北東通りを歩いて北東門を出る。
門を抜けると、その先にはいい意味で何もない、美しい草原が広がっていた。
ところどころに黄色や白色、ピンクなど色とりどりの小さな花が咲き、若々しい緑とともに風でそよそよと揺れている。
ウェスタ町も活気に満ちているいい町だが、こうした自然だけの景色というのも悪くない。というか、俺は好きだ。
暗くなるまでにはまだ時間があるし、少し先まで歩いてみることにした。
「――ん? あれはもしかして……桜か?」
しばらく歩いてふと視線を遠くにやると、少し先に、淡いピンク色の花を咲かせている木が小さく見えた。
周囲には黄色い花もたくさん咲いている。雰囲気からして菜の花だろうか。
誰かが植えたのか自生しているのかは分からないが、かなり広範囲に及んでいるように見えた。
近づくと、そこは菜の花の絨毯と桜の木が密集している不思議なスポットだった。
適度な間隔で十本ほどの桜が生えていて、周囲には桜の花びらが舞い、幻想的ともいえる美しさを醸し出している。
――特別花に興味があるわけじゃないけど。でもこれは綺麗だ。
今日はここで晩ごはんってのもアリかもな。
こんなスポットがあるなら、レスタショップで酒を買ってくればよかった……。
桜の木の下に腰を下ろし、幹に背中を預けて空を見上げる。
「平和だな……」
こんなゆったりとした時間を過ごすのは、いつぶりだろう?
つい最近まで魔王討伐で受けた毒に苦しんでいたのが嘘みたいだ。
さすが、あの女神がドヤ顔で「ごほうび転生」と言っただけあるかもしれない。
そんなことを考えながらぼんやり空を眺めていると、目の前に一人のいかつい男が現れた。
「――――あ?」
「――――え?」
この男、どこかで見たような……?
「おまえはミスレイ雑貨店にいた不審――いや、旅の客の……。オレはあそこで店員やってるガラルだ。こんなところで何してるんだ?」
「ど、どうも……。俺はアサヒです」
というか、今不審者って言いかけたなこいつ!
やっぱりそう思って声かけたのかよ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます