第15話 余ったパンが、エルルお手製サンドイッチに!
お昼はパンとソーセージとチーズの盛り合わせ、それから燻製肉とキャベツのスープを注文してみた。
燻製肉は複数のハーブやスパイスに漬け込んで作られているようで、その出汁がキャベツの甘さとともにスープに行き渡っている。ひよこ豆もたっぷりと入っていて、そのホクホクとした食感がまたたまらない。おいしい。
「――けど、さすがにおなかいっぱいだな」
まさか何気なく頼んだスープがメイン級だとは思わなかった。
でも残すのも悪いしな……。うーん。
そんなことを考えていると、それに気づいたのかエルルがこちらへやってきた。
「食べきれない分は、お持ち帰りもできますよ」
「それならお願いできますか? すみません」
「いえいえ。――そうだ、少し待っていてください!」
エルルは、まだ手を付けていないパンが残っている皿を持って、奥へと引っ込んでいった。そしてしばらくして、紙袋を持って戻ってきた。
「これ、ほかの人には内緒ですよ♡」
「えっ!?」
袋の中を見ると、サンドイッチが入っていた。
先ほどのパン一枚を半分に切ったものに、焼いた燻製肉とキャベツの酢漬けが挟んである。そしてもう一つ、サイズの小さいパン二枚で同じものをサンドしたものが追加されていた。
「……これ、エルルさんが作ったんですか?」
「はい。まだまだ修行中の身なので、お口に合うかは分かりませんけど……。いらなかったら捨ててください」
自信がないのか、エルルは少し赤面し、視線を逸らしながらそう言った。
――なんかいいな、こういうの。心が温まる。
宿屋にいた男たちも、多分こういう気持ちのことを言いたかったんだろうな。
リディアさんは不満そうだったけど!
「ありがとうございます。家宝にします」
「えっ!? そ、それよりは食べてくださいっ! 腐ります!」
「あはは、冗談ですよ。おいしくいただきます」
「もうっ! アサヒさん意地悪ですっ。ふふっ」
エルルはわたわたと焦っていたが、冗談だと分かるとおかしそうに笑った。
平和って素晴らしい。
「お金、ちゃんと追加で払いますよ」
「いえそんな! パンの切れ端もキャベツの酢漬けもまかない用ですし、燻製肉もそんな大した量ではないですから。女将さんの許可も得ています」
「そうですか? それならお言葉に甘えます。また来ますね」
「はいっ。いつでもお待ちしてます」
もらったサンドイッチの入った袋を布袋に入れ、女将さんにもお礼を言い、レジで支払いを済ませて店を出た。
思わぬところで今日の夕飯を手に入れてしまった。ありがたい。
今日の夕飯は、これとスープってところかな。
あとでレスタショップに寄って食材を買い足そう。
――そういや、西地区にもう一軒食品が売ってる店があったな。
たしか食品店「ファーム」とか何とか書いてあったような……。
せっかくだし、こっちも見に行ってみるか。
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