第11話 スキル【レイヤー透過】ってそういうことか!

 フラムが去ったあと、俺は早速「火の初級魔法」を使ってみることにした。

 魔法書によって魔法を手に入れられさえすれば、あとはイメージしながら念じることで発動する仕様らしい。

 俺は手の平を上に向けて、その上に火の塊が現れるのをイメージしてみる。

 すると。


 ボウッ!


 手の平に、直径十センチくらいの火の塊が出現した。

 手からはわずかに離れているだけだが、心地よい温かさを感じるくらいで熱さはない。


「で、できた……! これが火の初級魔法か」


 前世でも魔法を使っていたおかげか、コツを掴むのに苦戦することもなく。

 火の塊は安定した姿を保ち続けている。


「よし、この調子で水と氷、光の初級魔法も修得するぞ。――これ、まとめて力を注ぐことってできないかな」


 俺は試しに『水の初級魔法①』『氷の初級魔法①』『光の初級魔法①』の三冊を並べ、両手をかざして、先ほどと同じように魔力を注ぎ込んでみた。結果。


 ポンッ! ポンッ! ポンッ!


 強い光とともに、水色の縦ロール髪に水色の瞳をした水の精霊、青いショートカットの髪と青い瞳の氷の精霊、白いふわふわ髪に金色の瞳をした光の精霊の三人がほぼ同時に出現した。

 みんな、互いに顔を見合わせて驚いている。


『魔法書を三冊同時に解除なんて……相当な魔力の持ち主ですわね!?』

『驚いた。こんなことは初めてだ』

『人間も侮れないものね~。うふふ、楽しくなってきちゃった♪』


 三人はそれぞれ、俺のまわりを飛びながら興味深そうに観察してくる。

 恐らくこの三人も、俺に姿が見えているとは思ってないのだろう。


「えっと……初めまして……」


 若干気まずい気持ちもあるが、火の精霊は快く受け入れてくれたわけだし。

 この三人もそうであってくれると信じよう。


 俺の「初めまして」という言葉に、三人は再び顔を見合わせて固まる。

 状況が読めていない様子だ。


「その……皆さんのこと、見えてます……」


 オレがそう告白すると、三人は「えええええ!」と驚きの声をあげ、一層激しく周囲を飛び回った。なんだろう、この反応は精霊の特色なんだろうか?


『し、信じられませんわ! わたくしが見える人間なんて!』

『この人間、いったい何者なんだ……』

『あらあら、私たちのこと知られちゃったわね~。うふふ』


 それぞれの反応を示す三人だったが、驚きはしているものの、特に嫌悪感や恐怖心は感じてなさそうだ。よかった。


「さっき、火の精霊フラムにも会ったよ。普通は見えないものらしいな」

『私たちはね~、人間とは少しだけ違う層に存在しているのよ~。たくさんの層が重なって一つの世界ができてるイメージ、と言えば分かるかしら~』

『そうなんだ。そして本来、人間は別の層にいる者を認知することができない。だけどあなたは……』

『そういうことですわ。あなた、本当に人間なんですの!?』


 あー、なるほど? そういう?

 これ多分あれだな、あの謎スキル【レイヤー透過】の効果だな!

 レイヤー透過ってそういうことか!


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