第22話 ~三体のスカルワーカー~

「どうしてこんなところにスカルワーカーが三体もいるのよ!?」


 スカルワーカーたちの姿を見た途端、マリンが悲鳴のような声を上げた。

 俺はというと、こいつに頭を叩き割られた感触を思い出し、冷や汗を流していた。


(こんな奴らが三体もいるのか……逃げるのは余裕だが……はっ!?)


 ちらりと後ろを見たら入ってきた道がなく、いつの間にか退路が塞がれていた。


(やられた……! 戦うとしたら、この部屋しかないのか)


 広い空間さえあれば、動きの遅いスカルワーカーとの闘いは楽だった。

 だが、こんな限られた空間ではかなりの危険が伴う。

 5%で即死攻撃を繰り出してくる上に三体もいて逃げる場所がない。


(宝箱さえ諦めれば生還できるよな)


 スカルワーカーが鉄のツルハシを引きずりながら徐々に近寄ってくる。


「トールさんどうするのよっ!!」


 マリンが俺の背中に隠れるように縮こまりながら叫ぶ。


(諦める? 何を考えているんだ俺は)


 俺は一度死を体験したことで弱腰になっていたらしい。

 そうでなければ俺がスカルワーカー三体【程度】に怯えたりするはずがない。


「フフッ」


 恐怖から自分が冷静さを失ったことに気付いた俺は思わず笑ってしまった。

 この絶望的な状況でなぜ笑みがこぼれてしまったのか自分でもわからない。

 ただ一つ言えることは今の俺はかなり余裕があるということだ。


「ええ!? なんで笑っているのよ!!」


 マリンが化け物を見るような目で俺を見つめてきた。

 しかし、その反応でさらに落ち着いた俺は言葉を掛ける。


「マリン、お前は絶対に戦うなよ。防ぐことに専念しろ。万が一、攻撃が当たって即死効果が発動したら、俺はお前を蘇生できないぞ」


 俺の言葉でマリンはビクリと肩を震わせ、息を呑む。


「わ、わかった……私は回避に専念するわ」

「支援スキルが切れたときは頼む」


 マリンが無言でうなずくのを見て、俺は覚悟を決めて剣を構える。


(大丈夫、俺ならやれる!)


 深呼吸を繰り返して心を落ち着かせると一気に駆け出して距離を詰めた。

 一体目の懐へ入り込み、肩から斜めに剣を叩き込む。


「硬い!? やっぱり強いな!!」


 攻撃自体は命中したが、俺の力では骨を断つことは叶わなかったようだ。


(でも動きは遅い。これぐらいなら避けられる……!!)


 スカルワーカーは鉄ツルハシを振り回し、俺に叩き込もうと迫ってくる。

 後ろに下がって避けようとしたが、そこで俺の視界に別のスカルワーカーが映る。


「嘘だろっ!? どこから来た!?」


 いつのまにか別のスカルワーカーが迫ってきており、ツルハシを振り上げていた。


(避けていたら合わない! 前だ!!)


 攻撃を食らってしまうと悟った俺はなりふり構わずにスカルワーカーを押し倒す。


(背骨の部分を斬り抜けろ!!)


 刃こぼれを覚悟で背に剣を突き刺す。

 ゴリゴリと骨を砕く手ごたえがあり、大きな風穴を開けることができた。


「これでも倒れないのか!? グッ!?」


 スカルワーカーを押し倒した俺も地面の上に転がってしまった。

 そこに一体目と三体目が俺をめがけてツルハシを振り上げる。


「トールさん逃げて!!」


 マリンの叫び声を聞きながら、俺は横へ転がって逃れる。


(避け切れるか!?)


 そう思った時、俺の視界をツルハシが通り過ぎた。


ドガッ! ドガッ!


 スカルワーカーたちが振りかぶった一撃が地面を直撃し、ツルハシが火花を散らす。

 俺の両脇にツルハシが地面に付き刺さっていた。


(動き自体は遅い。三体の位置を把握すればいけるか!?)


 この調子なら時間をかければ倒せそうだと思ったとき、俺を影が覆う。


「え……?」


 見上げた先にいたのは、俺が風穴を開けたスカルワーカーだった。

 黄色く光る二つの瞳が俺を見下ろし、地の底から響くような奇声が聞こえてくる。


「グヴァアァァー!」


 振り上げられたツルハシを見て、俺は直感的に死を連想した。


(間に合ってくれぇ!!)


 スカルワーカーの腕が振り下ろされるのと同時に剣先を前へ突き出す。

 もう無我夢中でしかなかった。


カァン!


 剣とツルハシが打ち合ったとは思えない乾いた音が響く。

 俺の突き出した刃はツルハシの軌道をずらした。

 軌道がずれたツルハシはそのまま別のスカルワーカーへと向かい、その頭部に叩き込まれる。


「ガァァアアアアアア!!」


 ツルハシで頭蓋骨を粉砕されてもなお、スカルワーカーは動きを止めない。


【体 力:23/2,400】


「ほぼ瀕死じゃないか! チャンスだ!」


 勢いよく地面から起き上がり、なだれ込むように頭部の無いスカルワーカーに襲い掛かる。


「こいつさえ倒せれば!!」


 俺の全体重を乗せた剣を振り下ろす。


バキバキバキバキッ!


 剣先が胴体を音を立てて砕いていき、完全に体力を【0】にすることができた。


(これで形勢逆転だ!!)


【名 前】スカルワーカー

【種 族】不死

【レベル】32

【基礎能力値】

 体 力:0/2,400

 魔 力:25/25

 筋 力:21

 生命力:25

 敏捷性:1

 器用さ:36

 知 力:3

 幸 運:1

 スキル:急所攻撃Lv5《5%の確率で即死》

     状態異常耐性Lv1《10%の確率で状態異常を無効化》

 討伐者:トール

《能力値をステータスに変換しますか?》


「変換だ!!」


 俺はすぐにそう叫ぶ。

 俺は倒したスカルワーカーの残骸が消える前に能力を変換した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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