第5話 かわりゆく世界
神官長様に招かれ人には王族でも無理強いが出来ない事や、特別な使命はなく、知識も気にせず使ってよい事などを教えてもらう。
神様がちゃんと管理しているはずの世界で、機械文明が崩壊しちゃったのは、神様と人間の時間感覚の違いかな。
向こうは億年単位なんじゃないの。
そうなの、もうほんのちょっと、百年くらい目を離したら滅びかけちゃってたの、まいっちゃうわ、みたいな。
え? 今の誰?
持って来たおやつを食べて休息している間に、親父様は判らなくても良いのでもう一度話して欲しいと、自分の部隊と太守館に連絡してレーダー関係の説明を聞きたい者を集めた。
車の中でカタカナは止めて日本語のつもりで親父様に理解できるか話して見て、大丈夫そうだと言われた。
索敵は森に入ると無意識に発動するが、待ち伏せをする事もあるので意識的に切れるそうだ。
屋敷に戻ると出迎えの衛士に、希望者が多いので兵舎の食堂に集まったと言われた。食堂に近付いただけで、異様に大きな気配を感じる。
「どなたか、凄い方がいらしてませんか」
「判るのか。先ほど言っていた受身の索敵だな。おそらく太守閣下がいらしている」
砦は実質小国家で、太守閣下は国主だ。親父様を含めた砦の衛士も国から配属されたのではなく、ここを選んで太守閣下の家臣として仕えている。
挨拶の仕方を教えてもらうが、失礼でなければいいらしい。世界的に実力原理主義みたいなところがある。
食堂に入ると、お袋様よりは大きいけどご大父様と殴り合いしたらどっちが勝つんだろうと思ってしまう女性が仁王立ちしていた。
「戻られたか懸河准将」
「只今戻りました。息子の高志であります」
片膝を着いて、手の平を見せて両手を下げる。
「懸河剛継の一子、高志です。宜しくお引き立てをお願い致します」
「当砦太守
全世界的に質実剛健なので、すぐに講義を始める。判っても判らなくても、一方的に話して終わりにしてもらう。
途中で質問をされたら、おそらく収拾がつかなくなる。
能動的な索敵の例えに、暗い洞窟に明かりを持って入り、その明かりの反射を見ているとか、受動は音を聞いているようなものとか、それなりに工夫した。
太守閣下に、他に何か気付いた事はないか聞かれたので、大狐と跳狼の間が開き過ぎているように思っていたのを話す。
群狼は大狐より強いのに、跳猫は一身格だ。
化身獣は霊核の大きさが近くても化身玉にならない。
隠猫、吼猫、野干は群狼が化身玉になるが、大狐は全部だめ。次は一身格を獲らないといけない。
大狐より強くて一身格までいかない化身獣がいてもいいんじゃないかと思う。
「身の丈で言えば、孤狼がおるのだが、一身格には届かないが深層の縁より奥にいて下る事がない。化身獣かどうか判らぬものを獲りに命を掛ける者もおらん。が、そなたが気になるのであれば、丁度群狼を獲るまで修行が進んだ孫がおる。呼び戻して確認させよう。これは我が一門の務めであると思う」
「よろしいのですか、ただの思い付きなのですが」
「心配ない。それなりに鍛えてある。群狼を獲る危険とも然程変わらぬよ。創り神が下さった転機と感じた」
魔窟殲滅で下層を残して一泊し、早朝に下層と主を討ち取って、霊気の過飽和状態みたいにして運動力と霊力を一時的に底上げして挑むそうだ。
結果を言ってしまうと孫の人はその方法で無事に孤狼の化身を得た。
招かれ人の祝辞を賜りたいとか言われてお呼ばれされたりして、大騒ぎだった。これは無理強いには入らなかったようだ。
意識的な索敵をしない事で大狐が比較的に獲り易くなり、大狐、孤狼、跳狼が主戦力用の最強ラインナップになる。
猫二種類は索敵をしなくてもそう簡単には獲れなかった。
勤務年数に関係なく招かれ人の親で三人半格持ちなら少将に昇格基準が変わって、親父様は最初の適応者になった。
それを態々伝えに来たのが王様の孫のミドルティーンだったが、はい、ご苦労様で帰ってもらった。
巨乳までは行かないくらいの、なかなかいい線だったんだけど、あざとい。
どこから情報が行ったのやら。
大人達が新たな神の御恵みに沸き立つ中、三歳児のする事と言えば虫捕りである。
砦の中にも主食の白黍(トウモロコシサイズの粒のホワイトソルガムみたいの)の畑があり、これにでかいイモムシがたかるのである。
イモなのにタラバガニの足みたいにトゲトゲしていて、顔は蛾の怪獣の悪役の方の幼虫そっくり。
角はないので怪光線は撃ってこないが、でかい牙をクワガタみたいに開いて「キイィ!」と鳴いて威嚇してくる。
この威嚇を聞いていると魔獣の咆哮や威嚇に耐性が付く。
竹を曲げて作られているトングで挟んで、ブチっと頭を潰す。
たまに花咲ガニがバッタに化けてるんじゃないかと思われる、盛大にトゲトゲしたものが飛び出してくる。
その辺でイモムシ獲りしていたお子達が、一斉に追い掛ける。一緒に追い掛けたい気持ちを抑えて、独り害虫駆除に励む。
狐が傍で待っていてちょうだいちょうだいをするので上げる。狐は鼠を獲るので益獣。
他の子は獲ったのを畑の管理人に持って行くと小遣いが貰えるのだけど、少将閣下の若様はそんな端金はいらないので、全部狐にやる。
下々の子が買い食いの話なんかしてても気にしない。一番年下でも中身は子供じゃないんだから。
休憩の時はみんなで麦茶みたいなの飲むんだけど、若様の側には家中の付き添いの者しかいない。
狐は貰うだけ貰ったらどっか行っちゃう。撫ぜたいんだけど。
普通は高位職の子が他にもいるもんだけど、たまたま尉官の子までしかいなくて、親父様の子と言うだけで恐れられている。
一番上で六歳だから、寄って来られてもそれはそれで困るけど。
親父様がこの国に来た時も、恐れられて隊員が集まらなかった。三身半格持ちは討伐隊頭として深層の魔獣の間引きが任務になる。
常識的に三身半格の化身持ちがいきなり他国に仕官しない。自国に仕官していたならば三身半格持ちになれば自動的に少将になる。
化身獲りに合わせて取り巻きを増やして行き、一身格持ち二人に二十人くらいの郎党は連れているものだが、親父様は二身格持ちとはいえ、お袋様と二人だけだった。
通常一身格を獲れるかどうかと言う年で三身半格を獲ってしまったのも非常識で、化身持ちが自分より若い他国人に仕えるはずもない。
流石にいきなり討伐任務をやれとは言われず、家臣の育成に五年の猶予があったのだが、募集に応じたのは兵頭一人、兵長二人、十五人の兵士と番頭一人、番卒一人だった。
誰でも良いとの募集に、番卒の中でも能力の低い者が集められた非常勤的な与力組から応募したのが、十三歳だった剣蜂だ。
彼女は物入れの初期量が衛士の採用基準の十五枡より二枡少ない十三枡しかなかった。本来なら与力組にも採用されないのだが、武技の修練を頑張って採用された。
断られてもともとで、更に今より上に行ける可能性の藁のつもりで応募したのだった。
いくらなんでも本来なら少将の最初の直臣に与力組はないと太守閣下は怒られたのだが、親父様は応募してきた者を育て上げるのが勤めだと感じて、五年見ていて欲しいと頼んだ。
そして、ざっくりした鑑定のような識別の授かり技を持つお袋様と二人で深層に行き、霊気量の多い魔獣や、果物、薬草類を採って来て、隊の者に与えて体力霊力を強化。
装備を揃えて中層での害獣討伐でパワーレベリングをした。
部隊の食事は評判になり、たいして用もないのに太守閣下の文官が頻繁にやって来た。
狙いは文官の能力を上げる果物のおすそ分けである。翡翠の忠誠心の半分はこれだと思う。
一年後に剣蜂が兵士になり、その間に入隊希望者も増えて厳選しても部隊は五十人を越えた。
更に一年後には魔窟殲滅を定期的に行えるようになった。
深層での狩りは潜水漁のようなもので、能力の低い者は連れて行っただけで霊圧負けみたいなことになる。
魔窟まで行ける人数を揃えるのも、結構大変なのである。
親父様とお袋様が深層で狩りをするのは、それだけで討伐任務を果たしている事になる。
砦での立場も安定したが、親父様が特別扱いなのは今も変わらない。
三十歳が地球の二十歳くらいなので、親父様は、外資系から入ってきたむちゃくちゃ仕事の出来る二十代の専務、みたいなものなのだ。
ちょっと寂しい幼年時代を過ごしていたら、一月足らずで精気が出るようになった。
他の子の何倍か虫を潰しているので、一旦体に入った生命力の吸収できない分が出てしまうのである。
女が吸収すると経験値になるので、垂れ流すのはもったえない(もったいない?)ので紅ヤンマに吸ってもらう。オムツが取れたと思ったら、別方向の下の世話をまたしてもらっている。
女にも
はっきり言っちゃうと三歳と十二歳で一晩中入れっぱなしなんですよ。
この世界の男は主気説で、陰茎起立筋じゃない方法で勃起しているので持続勃起症にはならない。
能力が高いと早目に精気が出るようになり(三歳は早過ぎるけど)、同世代の恋人がいてもそっちも吸収力が低いと、年上の周りの女が余る分を吸うのは常識。性行為扱いされない。
家臣なら添い寝役と呼ばれていて、逆乳母みたいな、誰それ様のお添い寝役だったと胸を張って言えるお仕事。
添い寝役は手掛けにはなれないが主筋に気に入られている者で、その子は乳兄弟的な扱いを受けるので、将来男は選び放題なのだそうだ。
で、もう子供じゃないからと部屋を与えられた。紅ヤンマと二人きりにはならず、部屋付きの世話役も付く。
当然勝手にやって来る女もいる。翡翠とか翡翠とか翡翠とか。
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