第72話 酷過ぎるから
ユニコーンに関しては、彼らが暴れてきそうな理由を取り除けたので除外して。
その後、大量のマンティコアを、山の麓に待機していた輸送車に積み込んだ。
そして檻に入れられてドナドナと運ばれていく彼らを見送って。
その帰り道。
高速列車に乗り込んで、王都に帰る俺たち。
しばらくふたり、静かに高速列車を堪能するように座っていたが。
……俺はふと、思ったことを口にする。
「マンティコア、だいぶ動物園送りにしたけど、オークションに掛けるんだっけ?」
確かそういう話だった。
動物園としても無限に引き取れるわけではないし。
地球帝国内部の動物園で、どの子が欲しいのかをオークションで決めるとか。
……そこで売れ残ってしまった個体は、どうなってしまうんだろうか?
「うん。オークション。個体ごとに引き取り手が立候補して、その中で一番高い値段をつけたところが引き取るの」
高速列車の2人掛けの席で、並んで座りながら、彼女は答えてくれた。
通称デビルオークション、なんて言うらしいな。
「そこで売れ残ると、どうなるのかな?」
そこでそう、思ったことを口にすると。
「……殺処分じゃない?」
少し思案し、久美子はハッキリそう言った。
うーん……。
ちょっと、酷いなぁ。
だけどさぁ……
あの山に華族の住宅地を作るのは確定事項なわけだし。
しょうがないのかな?
危なすぎるからな。マンティコアなんて近場に居たら。
と、しばらく考えて
ふと
「……なぁ、久美子」
「何?」
ふたり、顔を近づけて。
俺は彼女にこう提案した。
「……魔界に放逐できないか? 無論、洗脳掛けてこっちの土地に足を踏み入れないように制限つけて」
すると
「……できるかなぁ? 彼らに領土の概念あるかどうか不明でしょ?」
そう、難色を示す。
洗脳で支配強制できるのは、本人に理解できる内容のみ。
例えば、九九を知らない相手に、割り算を強制することはできない。
だから「地球帝国の領土に入って来るな」という命令をしても、そもそも地球帝国の領土が理解できなければ命令自体が無効になる。
だけど
「でも、酷過ぎるだろ」
「うーん……」
まあ、進言してみよう。
通ればヨシ。無理ならしょうがない。
久美子は思案中だけど、俺はそうしようと思った。
久美子の家族に会う。
とうとうその日がやってきた。
……彼女の家族に認めて貰わないと、彼女と本当に家族になれない。
「……ここが私の実家」
王都の西洋風の一戸建て。
大きさは結構デカイ。
3階建てだった。
まぁ、学者の家だしね。
「……大きいねぇ」
素直に感想を口にする。
すると
「建てたの祖父の代なのよね」
……そうなんだ。
で、入ってくれと言われたので、俺は彼女について行った。
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