第68話 原発を作るその前に

 両親が久美子を気に入ってくれたのは嬉しかった。

 次は久美子の両親と会わなきゃな。


 俺は受け入れて貰えるだろうか?


「母子手帳と幟を貰ってきました~」


 久美子が俺にその妊婦アイテムを示してくる。

 とうとう、久美子も妊婦アイテム持ちか……


「じゃあ、これから四天王出動の話が来たら、俺1人で出撃なんだな」


 そういうと


「え? 私も出るけど?」


 笑顔のままそんなことを言う。

 俺は反射的に言った。


「流産したらどうするんだ!」


 すると


「しないしない。物理攻撃も火炎攻撃も効かないんだから、絶対にしない。構造的に大丈夫」


 笑いながらそう言った。

 ……考え方が合理的……


 そういえば……


「……何で心を決めたのが俺の土下座した姿を見たときだったのに、行動を起こしたのが結果的に最後だったの?」


 と聞いてみたとき


「……だって、使命で四天王のメンバー全員と妊娠を伴うセックスをするのは決まってるわけでしょ? で、私は最初から「あなたとのセックスは双転写で」って考えていたわけで。それなら、他のメンバーの魔力が転写された後の方が、後々あなたのパートナーとしては有利。それだけの話」


 ……それだけの話ってさ……。

 まあ、そういうのなんか「らしく」はあるんだけど。


「そういうわけだから、臨月で物理的に動きにくくなるまでは働き続けるから、それまでは一緒に頑張ろうね」


 ……分かったよ。

 とはいえ気分的に悪いから、キミのことを庇わないではいられないんだけど。


 すると


「おい、大河と山本」


 進美が声を掛けてきた。

 おや……?


 進美が幟を背中につけたまま、のしのしと歩いてくる。


「会議だ会議。来い」


 ……早速仕事か。

 俺たちは、その後ろについて行った。




「原発を作るうえでね、華族の住宅地を作らないといけないわけよ」


 会議室で翔子さんの話を聞きながら。


 ……翔子さんも大変だな。

 多分、打診あったと思うし。


 原発を作るから、引っ越せ。


 的な。

 小石川家は、その対象になったんだろうか?


 ……華族はこういうとき、転居を要求されるんだよな。

 こういうところ、本当に大変だと思う。


 ゴミ処理場だとか。


 屠殺場だとか。


 化学工場だとか。


 刑務所だとか。


 近隣住民が建設に反対するような施設を作るとき、住民を納得させるために華族が率先して近場に転居する。


 ……別にさ、どこかに作らないといけない施設なんだから、条件に合うところに作ればいいと思うけど。

 人間はやっぱ感情の生き物なのかね。こういうことをやるんだね。


 高貴な身分の華族が近くに転居したぞ。反対派はこれで納得しろ。


 こういう理屈。


「そのために、近場の山を一個開発するんですね?」


「そうね」


 翔子さんは頷いた。

 ……その山は……


 なるほど。

 マンティコアが居るのね。

 あと、ユニコーン……


 こいつらを駆除するか、動物園に転居してもらないといけないわけね。


 めんどくせぇ……


 特にユニコーン……

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