983 会話の始め方

 倉津君と奈緒さんと別れたので、崇秀と2人に成った眞子。

そして、次の瞬間には崇秀が、なにやら眞子に『見せたい物がある』っと言い始めたのだが……


果たして崇秀の見せたい物とは?


***


 ……っで、此処からはですね。

校門の近くに堂々と停めてあった単車の所まで、崇秀を引っ張っていって。

恒例に成りつつある、背中に2本の楽器を紐で括りつけられて、崇秀の単車で3分程走る。


勿論、単車を3分しか走らせないのは、いつもの地獄スピードのせい……


それで行き着いた場所は『人が賑わう駅前の繁華街の一角』

そこは相も変らず、帰宅で、バスを待つ人や、これから遊びに行く人でごった返している。

特に今日は11月3日文化の日も重なってか、国民全体の祝日だから、これから夜に向って遊びに行く人の比率が高い。


そんな人で溢れかえった繁華街の、とあるビルの前で崇秀の単車はピッタリと停まった。


……でね。

その単車の停まったビルの横のビルに、なんだか妙に長い行列が出来ているんだけど、なんだろうね、これ?


到着して早々、早速、怪しげな物が出現したね。


でも、その前に……



「もぉ、崇秀。……運転怖いって、いつも言ってるでしょ」


……っと、この長い行列が、なにかと気になりながらも『これが、なにか?』と聞く前に、まずは会話のジャブを打って話を開始する。

勿論、そうするのには、ちゃんとした理由があってね。

会話って言うのは、自分の聞きたい事だけをストレートに聞き始めるだけじゃ、あまりにも無骨者過ぎるし、どうにも能が無いからなんですよ。


普通に、こう言う質問をするにしてもだね。

その前の下準備に成る会話のキャッチボールってのも、実は、結構、大事なもんだったりするんですよね。



「そぉかぁ?……つぅか、俺の運転のなにが怖いんだよ?どこを見たって普通の運転じゃんかよ」

「なにを基準にしての普通なのかは知らないけど……あのねぇ、崇秀」

「んあ?なんだよ?」

「去年のアリーナの時にも、ちゃんと言ったとは思うんだけど。2本も楽器を背中に背負ってたら、バイクの後ろじゃバランス取り難いの。だから、これからは、もっと、ゆっくり安全運転で走る様に心掛けようね。仕舞いに、大切な楽器を落しちゃうよ」


そして、もしそうなったら、私も同時に、単車から落っこちている。


だから出来ればですね。

是非、ソッチの方でも困って欲しいもんですね。


ちょっち期待♪



「おぉ、そりゃあ大変だな。俺のUV-7は、世界に1本しかない『骸カスタムのスペシャルなギター』だからな。そんな事程度で簡単に落されちゃあ困る。……まぁそう言う事なら、これからは、もぉちょっと気を付けて運転するわ」

「えっ、ちょ?……ソッチだけの心配?私は?私は落ちても良いの?……それって私が頑丈だから、少々は転げ落ちても大丈夫だろうって事?……酷いよぉ……」


Σ(゚д゚lll)が~~~ん。


密かに、言うんじゃないかなぁとは思っていたけど。


まさかの!!『UV-7>私』


この現実は余りにも悲し過ぎるんだけど。



「ハハッ……なにを真に受けてるのかは知らねぇけど、そんなもん冗談だろ冗談。幾らUV-7貴重な物だって言っても、ギターは所詮、何所まで行っても物だ。人より価値が有る訳なんぞねぇだろが。……なにマジになってんだよ、オマエは?」

「えっ?じゃあ、ちょっとは私を心配してくれる方向?」

「いや、全然心配はしねぇよ」

「なんでよぉ?ちょっとぐらい心配してもバチは当たらないよ」

「やだね。……大体にしてオマエなぁ。オマエは、俺の半身を名乗ってるんだから、そんなにドン臭ぇ様じゃ困るんだよ。俺は、そんな間抜けな半身を持った憶えはないからな」


いや、あの、それって……遠回しに言ってますが、この悪魔な運転に慣れろって事なんですかね?

もしそうならですね。

こんな私みたいな可愛い女の子に、平然とそんな酷い事を言うんじゃありませんよ。


いや寧ろ、ちょっとぐらい労わる方向であっても良くない?


鬼ですかアンタは?



「あの、すみませんが。ご要望通り、落ちない様には努力しますがね。せ・め・て、ちゃんと女の子扱いして下さいな。半身と言えども女の子なんで、体力面では、崇秀と比べると非常に劣ってますんで」

「ほぉ。体力面『では』劣ってるって事は、精神面で勝ってるって事だよな。じゃあ、その強靭な精神面とやらで克服しろ」

「あの~~~っ、すみませんがね。そう言う詭弁の話じゃなくてですね。せ・め・て、ちょっとは労わって下さいな。こんなんでも、一応、性別は女の子なんで」

「ほぉ、んじゃそうするわ」

「ホント!!」

「嘘」

「……最悪だよ」


……っとまぁ、ジャブの会話は、そろそろこんなもんで良いか。

実際の所、崇秀の単車の運転には、少しづつではあるけど慣れて来てる面があるから、もぉ左程怖くないしね。

単車を運転中の崇秀の小さな動きを素早く察知さえすれば、多少なりとも単車の挙動が見えて来るからね。


そこを押さえれば、結構OKな感じ。


但し、スピードが尋常じゃないんで、ちょっとでも慢心したら、振り落とされかねないけどね。



「もぉ良いよ。頑張る方向で諦めるよ」

「賢明だな」

「あっ……ねぇねぇ崇秀。それはそうとさぁ。あの隣のビルの行列ってなんだろうね?なにに、あんなに並んでるんだろうね」

「んあ?……あぁあれか、あれはな。昨日オープンしたレストランの行列だな」


なぁ~~んだ。

人が、かなり沢山並んでるから、これは何事かと思って少し期待してたのに、やけに普通のオチが付いちゃったね。


話の下準備までして振った話題だけに、実にツマンナイオチだったなぁ。



「ふ~~~ん。じゃあ、あそこって、結構、有名なお店なの?」

「いや、店自体は、今のところ、そこまで有名じゃねぇよ。……まぁただな。実は、あの店のオーナーシェフってのが、結構、スゲェ奴でな。その辺が、口コミで広がって行列になってるんじゃねぇか」

「うん?ねぇねぇ、その口振りからして、崇秀って、そのオーナーシェフさんとは知り合いなの?」

「まぁな。そこまで親密な関係ではねぇが、ちょっとした知り合いではあるな。……まぁけど、今日は、さっき飯を喰った後だから、ソッチのレストランには用事はねぇだろ。それとも、まだ腹が減ってんのか?」


いやいや、滅相もございませんよ。

先程、音楽室で頂いた崇秀先生のお料理が非常に美味しかったので、十分以上に満足を得ておりますよ。

それどころか、あれ以上の物なんて、この世には存在しません。

私にとっては『絶対無二の料理』です。


まぁ敢えて言うなら、それに匹敵するのは『奈緒飯』ぐらいのものですね。

これもまた、極上にして最高の一品ですからね。



「うぅん。もぉお腹いっぱいだよ。もぉなにも入んない」

「だよな」

「まぁまぁ、お腹の話は良いんだけどさぁ。……それじゃあ此処に、なにしに来たの?なんの用事が有って来たのさ?」

「だから、そいつは、直接、見てのお楽しみだって言ってんだろ。……それを知りたきゃ、さっさとコッチ来いよ」

「あぁうん」


なんか崇秀が、子供みたいに楽しそうにしてるんだけど……なにをそんなに、はしゃいでるんだろうね?


そこまでして、崇秀が私に見せたいものって、なんなんだろう?



……そう思いながらも、此処は素直に、崇秀の後ろをピッタリくっ付いて行く。


するとね。

単車を停めたビルの、通用口みたいな所へ連れて行かれるんだよね。


こんな暗がりに連れて来て、一体、可愛い私に、なにする気だろうね?


あぁ……嘘です。

目一杯調子に乗りました。


……っで、そんな馬鹿な事を考えてるとね。

その通用口の鍵を取り出して、当然、徐に通用口の扉を開けて、崇秀が先に中に入って、その室内の照明電源を入れる。


そしたら……目を疑う様な、驚きの光景が現れた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


会話の始め方に関しましては「本命」の話を初めから持って行くのは野暮と言うものでして、お互い共通点に成り得る話題から始めた方が、滞りなく会話が進むと言うものなんですよ。


まぁ、当たり前の事と言えば、当たり前の事ですね(笑)


さてさて、そんな中。

眞子が気に成っていた行列が出来てるレストランは、崇秀の見せたい物ではなく「不発」に終わり。

此処からが本番の様なのですが。

勿論、崇秀が関わっていて普通なものである筈がないので、次回はどんなショッキングな事が飛び出すのでしょうか?


そんな感じのお話なので、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~♪

(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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