975 タイミングと組み合わせ

 崇秀が、眞子の怒りを完全に沈めてしまった上で、全員との仲直りにも成功させた。

それにより、この場の空気が良くなったので……


***


「さてと、もう馬鹿共の友情ゴッコは終了にしたみたいだし、オマエ等、良かったら飯でも食うか?喰うなら、音楽室に全部準備してあんぞ」

「「「「「「えっ?」」」」」」

「あっ、うん、食べる、食べる」

「「「「「「えっ?」」」」」」


えぇっと、なにをそんなに驚いてるのかな?

私は、どうせ、そんなこったろうと思ってましたよ。


だって、ライブの途中で、崇秀が急にステージの袖からも居なくなってたんだよ。

それ=どうせ『またなんかやってるんだろうな』って想像が安易に付くじゃない。


まぁまさか、ライブ後の打ち上げを兼ねて、第二音楽室に料理の準備をしてたとまでは、流石に読めませんでしたけどね。


でも、例えそうであっても、そんなに驚く様な事でもないんだよね。


なので私の感想としては『本当にマメだねぇ』って感じですね。



「あの、眞子ちゃん。ヒデ君が、ご飯用意してくれてたの知ってたの?」

「あぁ、うん。まぁ、なんとなくだけどね」

「凄い……なんで解ったの?」

「えっ?なにが?崇秀が居なくなったら、なにかしてる合図だよ」

「はぁ~~~、愛だねぇ」

「えぇっと、なにが?そんなの常識だよ」

「2人の関係じゃあ、それが常識なの?」

「あぁ、うん、常識だねぇ」


だから、いつもの事じゃん。

こんなの、なにも珍しい事じゃないよ。

寧ろ崇秀が、ただ単に居なくなっただけで、その後、なにもない方が、私は驚いたりするけどね。


まぁ多分、崇秀の性格からして、そんな事は一生無いと思うよ。


……そう言う、一生治らない不治の病だもん。



「けど、仲居間さんが料理を作れるのは良いけど。……それって、ちゃんと食べれる様な物なの?糞マズイ料理なら、あたしはパスね。イラナイよ」

「ミラー。なにを聞いても、仲居間さんだけは侮っちゃダメだよ。……この人の料理は、もぉビックリするぐらい美味しいから。あれはもぉ反則の域だよ」

「いや……そんなに言う程、なにも特別な事はしてねぇぞ。普通に作ってるだけのこったからな」

「また、そう言う事を言うでしょ。……ホント、嫌味の塊ですよね」

「あの、向井さん、ヒデ君の料理って、そんなに美味しいんですか?」

「もぉ絶品!!思い出しただけで、お腹が空いてくるもん」


ですね。

お腹空きましたね。

さっき怒ったのもあって、大量のカロリーが消費されましたしね。



「あの、仲居間さん。それって、私達もお呼ばれして良いんですか?」

「おぉ、心配しなくても、此処に居る全員分を作ってあるから、適当に喰ったら良いんじゃねぇか。まぁ、近くのスーパーで食材を買っただけだから、あんま味の保障はしねぇけどな」

「またそんな事を言って。この間の奴も、出来が悪いとか言ってたクセに、滅茶苦茶美味しかったですよ」

「そぉかぁ?あれ、かなりソースの作りが甘くなかったか?短時間で作った分、出来悪かったと思うんだけどなぁ」


うぅん、そんな事ない、そんな事ない。

寧ろ、滅茶苦茶美味しかったよ。

ホッペが、床にポロッと落ちそうに成ったもん。


完璧でしたよ。


でも、あれだよね。

多分これは、崇秀が謙遜して言ってる言葉じゃない筈だから。

彼が納得した味って言うのも、一度は食べてみたい気がしないでもないですね。


まぁ、そんな完璧な物を食べたら、二度と他の物が食べれなくなっちゃう気がしないでもないけど。



「うわ~~~、きっと凄い拘りなんだろうね」

「でも、由佳チン。仲居間さんって良いよね。男の人で料理出来るなんて尊敬。……私、仲居間さんを狙おうかなぁ」

「あぁ、そう言う見解で見たら、確かに完璧だよね。……じゃあ私もぉ」

「えぇっとねぇ、そこのお2人さん。……そんな事をちょっとでもしたら、マジでグーで殴るよ。泣いても殴るよ。病院送りに成っても、殴りに行くよ。それでも良いなら、崇秀を狙って良いよ」


君達はなにかい?

彼女である私の前で、そんな大それた宣言をするって事は、どうやら本気で命が……イラナイらしいね。


一応、此処だけはキッチリ言って置くけどね。

崇秀の件に関してだけは、全部が全部、本気の本気だからね♪

当然、一切合切容赦もしないよ♪

病院に入院してても、マジで執念深くそこまで行って、満面の笑みのまま『考えを改めるまで殴る』からね♪


それだけの覚悟があるなら、狙ってみたら……小娘共。



「ちょ!!眞子ちゃん目が怖いって……冗談冗談。冗談だから」

「そっか、そっか、なぁ~~んだ冗談かぁ。マジで殴ろうかと思ってたのに」

「本気だよ、この子……」


うん、本気だけど。


『ポカッ』



「痛い……」


そんなアホな事を言ってたら、崇秀に叩かれた。



「おい、アホタレ。いつまでもツマンネェ事を言ってねぇで、さっさと、みんなを連れて飯喰って来い。いい加減にしないと料理が冷めちまうぞ」

「あぁ、そうだね。……あぁだったら、崇秀、先に行って置いてよ。私、ちょっとだけ、まだ用事があるからさぁ」

「そっかよ。……んじゃあまぁ、シッカリやりな」

「あぁ、うん。……ヤッパ、なにするか解っちゃった?」

「ボケ。んなもん、この状況を見てわかんねぇ方が、どうかしてんだろ」

「……だよね」


うぅ~~~ん、理解されてるって良いね。

最高ですよ。


だから、その期待には応える様な働きをしないとね。



「おぉ~~し。んじゃま、軽く打ち上げでもすっから、暇な奴は、全員音楽室に行ってくれ。ホンで、テーブルにはネームプレートが置いてあるから、各自、そこで適当に座って飯でも喰ってくれ。……以上」

「「「「「「マメか!!」」」」」」

「んあ?人をもてなすなら、普通だよ普通。こんなもん常識だろ常識」

「嫌過ぎる……この人、やっぱり完璧主義者だ」

「横着な私には、ちょっと辛いタイプだね」

「やかましいわ。余計な事を言ってないで、サッサ行けつぅの」

「はいは~い。行くよ舞歌、琴ミン。早速ご馳走になりに行こ」

「うん、行こ行こ」

「待って下さいまし、2人様ぁ~~~」


そんな木根さんの間抜けな声を皮切りに、ほぼ全員がゾロゾロと音楽室に向って移動を始める。

それを見ながら私は……『崇秀の晩餐を、みんなでお楽しみ下され』等と、自分が作った訳でもないクセに、調子の良い事を思ってみたりする。


まぁそんな中、最後の方で崇秀が出て行くんだけど。

そこで1言、ある人に向って言葉を発する。



「あぁ、向井さん。ちょっと良いかな」


そぉ……崇秀は、この絶妙なタイミングで奈緒ネェに声を掛けてくれたんだよね。


ホント、良く解ってくれてる。



「あぁっと、なんですか?」

「悪ぃんだけど。飯を喰う前に、ちょっとだけ俺に付き合ってくれ。そんなに時間は取らせないが、大事な用件だ」

「あぁ、良いですけど。……あの、でも……」

「良いから。そこは気になる所だろうけど、兎に角、今すぐ5分間だけくれ。出来るだけ、話は端的に終わらせるからよ」

「あぁ、はい。……じゃあ」


そう言いながらも奈緒ネェは、最後に残ってる人を見ながら、崇秀と扉の向こうへ消えて行った。


勿論、その奈緒ネェの視線の先に居る、最後に残って居る人物は……真琴ちゃん。


今までの経過で、相当グツが悪いのか、俯いたまま壁に凭れていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


空気も一転して軽くなった所で、打ち上げで食事。

みんなの親密度を上げるには、中々良い感じのコンボですね(笑)


まぁ言うても、今回の件は、崇秀が食事を用意していたのは否めない話なのですが、眞子の件は偶然の産物。

崇秀自身が狙って、この状況を作った訳でないんですが。

眞子が、みんなに思いの丈をぶつけただけに『他のメンバーも崇秀の認識を改める切欠』に成ったので、ただ単に打ち上げをするよりも、より良い環境に成ったと言う感じでしょうか♪


さてさて、そんな中にあって唯一、この状況に適応しきれてない人物が1人だけ居ますので、後は、その人物をどうするかが問題。


果たして、どうやって彼のテンションを上げるのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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