958 事態の収拾に乗り出す

 コンクールが始まるどころか、佐藤さんと山中君のせいで、会場内は3Bの人気問題が加熱してしまい。

とても歌コンクールを開催できる雰囲気じゃなくなってしまう。


それを見た崇秀は……(笑)


***


「オイオイ、なんだこりゃあ?なんか知らねぇけど、会場内がエレェ事になってんな」

「あっ、崇秀」


あっ、今日はまた珍しくも遅れてのお出ましだね。


重役出勤ご苦労様です。


でも、会場が3B-GUILDの人気問題で討論中なので……どうやらライブは終了のお知らせ様です。


残念でした。



「よぉ、眞子。……っで、この状況は、一体、なにがどうなってこんな事に成っちまってるんだ?」

「あぁ、あのね。実は、そこにメガネを掛けてる方がね。熱烈な由佳ちゃんのファンの人なんだけどね。なんでか、それが元に成って喧嘩が始まっちゃったみたいなのよ」

「ハハッ……なんだかなぁ。そう言う事情だったのかよ。しかしまぁシゲさん、なにやってんだかね?」

「えっ?なに?その言い方って、あの眼鏡の方って崇秀の知り合いなの?」

「知り合いもなにも、俺に音楽の根本を教えてくれた人だ。それに、今回の俺のメンバーでも有るな」


えっ?えぇ……なにその人?

それってさぁ、崇秀の師匠って事になるんじゃないの?

しかも、その師匠らしき人が、今回の崇秀のバンドのメンバーって……


うわっ……超嫌過ぎるよぉ。

幾らコチラ側に、奈緒ネェ、ステラさん、ミラーさんが居るとは言え、なんか全く勝てる気がしないんだけど。


マジデスカ。



「うわ~~~っ、もぉ帰ろうかなぁ。なんか急に帰りたくなって来ちゃったよ」

「オイオイ、またなんでだよ?」

「いや、だって、それってさぁ。そのシゲさんって人が、崇秀より腕が上って事だよね。そんな人とマトモにやりあえる訳ないじゃん」

「腕が上なぁ。そりゃあ、どうかわかんねぇぞ」

「なんで?」

「確かに俺に音楽の根本を教えたのはシゲさんだがな。けど俺が、いつまでも人の下に居るとでも思ってるのか?……俺は、そんなに間抜けじゃない」

「えっ?それって、まさか……」

「ハハッ、それは対戦してのお楽しみってもんだろ。だから、此処で家に帰っちまったら、それは見れねぇぞ」


あぁ、それは是非見たい光景ですね。

自分の彼氏が、師匠を越える所なんて、絶対に瞼の裏に焼き付けたいもんね。


じゃあ、此処に居る居る♪



「あぁ、でもさぁ。この場が収拾付かないと、コンテスト自体が中止になっちゃうよ」

「そっか。……なら、此処は1つ。ゾウさんチーム&キリンさんチームが協力し合って、この場の収拾を付けてみっか?」

「えっ?なにそれ?そんな事が出来るの?」

「おぅ、その程度の事なら全部俺に任せとけ。……オイ、みんな『Show must go on』だ。俺と一緒に遊ぼうぜ!!」


キタキタキタァ~~~!!

この馬鹿げたドンちゃん騒ぎを一気に収拾させる、私の救世主様!!


行こう行こう!!

もぉコンテストも、ライブも知ったこっちゃないよ。


そんなの何も関係なしに、みんなブッ潰しちゃえ!!



「へっ?あぁ~~~、仲居間さん!!いっ、いつの間に!!」

「よぉ、ミラーじゃん。久しぶりだな。早速で悪いが力貸してくれ」

「出会い頭に、なになに?そんなの嫌に決まってるでしょ!!なんで敵の仲居間さんに、協力しなきゃいけないのよ!!お断り!!」

「あっそ。オマエさんは、そう言う事を言っちゃう訳な。……じゃあまた、シアトルの時みたいな、ステージ上で無様な醜態を晒したいって意味だな」

「えっ?」

「ミラー……此処で俺の言う事きかねぇと、オマエのバンドがアメリカでライブをする度に、直接オイタしに行っちゃうぞ。それでも良いんか?」

「ちょ!!冗談でしょ!!冗談じゃないわよ!!あんな真似、あたしのライブでされて堪りますかっての!!」

「なら、文句を言わずに、今回だけは手を貸せ。手を貸すなら、来年1月に予定してるシアトル・フェスでのメインステージのオオトリをオマエさんのバンドにくれてやる。……たった一回の演奏にしては破格の報酬だろ。悪い条件じゃねぇと思うがな」


うわっ。

本当に悪い方の魔王様が、久しぶりに光臨された。


この条件の突き付け方はマジの魔王だよ。


だって、これってさぁ。

崇秀の条件を受けると、断るとでは雲泥の差。

YES ……GUILDのシアトルフェスでの、メインステージのオオトリ。

NO  ……いつ魔王様の襲撃が有るか解らないドキドキした状態で、毎回ライブをやる羽目になる。

崇秀の実力を知っていたら、こんな酷い選択肢を迫られて『NO』なんて言える勇者は早々にはいない。


まさに『選択肢の無き』魔王の囁きだよ。



「断……」

「ミラー。……その答えを聞く前に、先もってこれだけは言って置くがなぁ。8月12日にしたシアトルのライブの時の俺と、いつまでも同じ実力のままだとは間違っても思うなよ。俺は、あの時と比べ物にならない位……もっと壊れてるぜ」

「えっ?あの時以上だって……」

「あぁ、なんなら、オマエだけをピンポイントに狙って掛けてやろうか?」


なんて酷い脅し方だ。


なにをする気かは知らないけどね。

断っただけで、相当、嫌な事をされそうだね。


だから此処は、私がフォローするところだね。


ミラーさんは性格が少しだけ頑固だから、きっとこの状態にあっても『YES』って言い難い筈だからね。


それにね。

彼氏の意図を汲むのは、彼女の仕事だもんね。


なので此処はコンビプレーだよコンビプレー♪



「あっ、あの、ミラーさん。折角だから、崇秀の話に乗りましょうよ。このまま、お開きになっちゃったらツマンナイですしね。此処は1つ協力して上げて下さい」


どぉ?これ、結構上手い言い回しだと思わない?

だって、基本的にミュージシャンって言うのは目立ちたがりが多い。

その上で、このセリフを聞かされたんじゃ、やめれる筈が無い。


まぁそれ以前にね。

日本公演があるとは言え、アメリカからワザワザ来て貰ってるのに、手ぶらで帰っても貰っちゃあ、誘った奈緒ねぇの面子も丸潰れに成っちゃう。


そこもキッチリ避けて置きたい部分ですしね。



「チッ……眞子が、どうしてもって言うなら、やってあげても良いけど。……本心じゃ、凄い不本意だけどね!!」

「あっ、ありがとうミラーお姉ちゃん!!そう言ってくれると思ったよ!!大好き!!」


咄嗟に抱き付いちゃった。


出会って間無し関係だから、ちょっとこれは馴れ馴れしかったかな?

でも、これは私のクセみたいなものなので許して下さいね……お姉ちゃん♪



「あぁ、コラ、眞子」

「えっ?なに、ミラーお姉ちゃん?」


純真なキラキラ眼での攻撃ですよ。



「うぅ……あぁもぉ協力しますよ。協力すれば良いんでしょ、すれば。それに、ワザワザアメリカから、こんなアジアの辺境の地まで来たって言うのに、このまま終わるのも癪だからね。……仲居間さん!!手伝ってあげるんだから、眞子に感謝しなよ」

「オーライだ。ありがとな眞子。感謝してるぞ」

「あぁ、そんなそんな。私は、皆さんと演奏したかっただけだから。ミラーお姉ちゃん、ありがとうね」

「なんか騙された気分……」


テヘヘ……ごめんね♪


ちょっとだけ騙しちゃいましたね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


この事態を収拾する為に、崇秀が動き出しましたね。

しかも、対戦するっと言う名目を無視して、ミラーさんを自軍に引き入れてしまいました(笑)


……っとは言え。

これで、どうやって、事態を収拾するつもりなんでしょうね?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


あぁ、ちょっと蛇足なんですが。

今回、何故、こんな手法を取って、普通に対戦を開始しなかったのかと申しますとね。

此処で普通に対戦して、その勝敗が決まった所で【物語がマンネリ化】するだけでしょ。


だから趣向を変えてみましたぁ(笑)

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