第3話:真珠湾強襲②

 同日同時刻の真珠湾航空基地


 夜空を引き裂く怪獣の咆哮が、真珠湾基地全体に響き渡っていた。

 滑走路にはB-17・25爆撃機やP-40戦闘機がずらりと並び、早朝の離陸準備が進められていた。

 だが、突如として赤黒い閃光が滑走路の端に炸裂した。


 ドォォォォン!!


 轟音とともに爆風が滑走路を薙ぎ、航空機の胴体が吹き飛ぶ。

 格納庫が一瞬で崩壊し、中に駐機していた戦闘機が火を噴きながら爆発。

 巨大な火柱が夜空を赤く染める。


「敵襲! 敵襲!!」

「爆撃じゃない! あれを見ろ!!」


 焦げたコンクリートの亀裂から這い出すように、巨大な黒い影が滑走路を踏み砕きながら進んできた。

 鋼鉄の爪がアスファルトを削り取り、空気を震わせながら怪獣がゆっくりと立ち上がる。


 背中の棘が青白く発光し、口元から燐光が漏れ始める。


「……撃て! 迎撃しろ!!」


 P-40戦闘機が数機、緊急スクランブルをかけた。

 滑走路に残った機体の中からパイロットたちが脱出し、上空に向かって機銃掃射を開始。


「ダメだ! 当たっても効いてない!!」


 機関銃の弾丸が怪獣の鱗に弾かれ、火花を散らすだけだった。


「ならば爆弾を投下する!!」


 運よく離陸できた1機のB-17爆撃機が高度を取ると、500ポンド爆弾を怪獣の背中に向けて投下。


 ドォォォォン!!!


 爆炎が怪獣の背中を包み込む。

 火の粉と煙が空に舞い上がった。


 しかし、煙の中から姿を現した怪獣は、無傷だった。

 鱗の間から青白い光が脈動し、怪獣の目がぎらりと光る。


「……バカな……効いてないのか……?」


 怪獣がゆっくりと首を持ち上げ、B-17に目を向けた。

 その喉奥に再び光が集まる。


「離脱しろ!!」 

 次の瞬間——


 バシュウウウウウッ!!!


 灼熱の光線が放たれた。

 光線は空を切り裂き、B-17の胴体を真二つに引き裂いた。


「ギャアアアアアアッ!!!」


 爆風とともにB-17が空中で粉砕。

 機体の破片が滑走路に雨のように降り注ぐ。


「脱出しろ!! 格納庫を放棄しろ!!」


 パイロットたちが滑走路から次々と逃げ出す。

 だが、怪獣は容赦しない。

 鋭い爪を振り上げ、近くのP-40を捕らえると、

 鋼鉄の翼を握り潰した。


「うわあああ!!」

 パイロットが投げ出され、地面に叩きつけられる。

 怪獣の尾が一閃し、誘爆したP-40の破片が炎とともに飛び散る。


「滑走路が……完全にやられる!!」

 怪獣が再び喉奥に光を溜め始める——

 放たれた灼熱の光線が滑走路を直撃。


 ドォォォォン!!!!!


 アスファルトが溶解し、数機の戦闘機が爆発炎上。

 赤黒い火の手が空に舞い上がる。

 巨大なクレーターが滑走路の中央に刻まれ、瓦礫があたりに散乱する。


「……基地壊滅……」

「全滅……だ……」


 怪獣はなおも進み続ける。

 残っていた最後のP-40が離陸を試みるが——


 ズシャアアアアアッ!!


 巨大な爪が機体を掴み、引き裂いた。

 パイロットの絶叫が夜空に響き、機体は引き裂かれて爆発。


 怪獣の背中の棘が再び発光し始める——


「ダメだ……やられる……」


 怪獣がゆっくりと基地の司令部を見下ろす。

 その口が大きく開かれ、光が脈動する。


「来るぞ!! 逃げろ!!!」


 怪獣が光線を放った——

 司令部が直撃され、巨大な爆発が発生。

 建物が粉々に吹き飛び、瓦礫が炎に包まれる。

 その司令部には太平洋最高司令官『チェスター・ニミッツ』大将がいたのだが瞬時に消え去った。

「これ以上は持たない……!」

「……撤退するしか……」


 怪獣は炎と煙の中からゆっくりと姿を現す。

 無数の目が血のように輝き、背中の棘が静かに光を増していく。

 怪獣は再び歩みを進める。

 その足音が滑走路に響き渡るたびに、地面がひび割れ、瓦礫が崩れる。


 真珠湾航空基地——

 完全壊滅。


「このままでは……世界が終わる……」

 炎の中で崩れゆく基地を背に、怪獣はゆっくりと立ち去った——。


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