第15話 自身の強さ
この力は嫉妬の力、私が嫉妬の感情を抱いていなければ弱まる。
どれぐらい違うか、知識でのカリルは召喚できる数に限りはほぼ無かったが、私は100体ぐらいが限界であり、与えられる能力にも制限がありそうだ。
この辺りは試してみるしか確かめる方法は無い。
基本的な戦い方は強力な回復の能力を持った魚を複数召喚し、自らを回復させながら魚を大量に召喚して物量で攻める。
今の私ではその戦い方は不可能。
そして恐らくカリルの使う最強の戦術、ネットの世界では『クソ害悪シラス戦法』と呼ばれ、どれだけ異常耐性を上げても確定で異なる2種類のデバフを与えられるのに加えてデバフを大量に与えてくる小魚の大群も出せないだろう。
「ん?終わったか。」
命令を出していたナマズが帰って来た。
ベチャッ!
「おぉう……」
確かにナマズは運ぶ用として召喚したが、口の中に入れて運んでくるとは思わなかった。
ちゃんとした生地で作られた黒いローブがヌルヌルの何かで……
流石に申し訳ない気持ちが込み上げてくる、すまない公爵の密偵。
『…………』
「……なんだ。」
ナマズがつぶらな瞳で見つめてくる。
『……!』ビタン!
いや、浮いてた場所から勢いよく地面に落ちても何を伝えたいのかわからないんだが。
『…………』
だからなんなんだその瞳は?!
「うぅ……」
「あっ!」
地面で放置していた密偵の事を忘れていた。
さて、記憶の改竄だが私が召喚した魚達を出した事から記憶を消し、魔法で睡眠を深くして放置だ。
「【メンダコ】」
記憶を改竄する能力を与えたメンダコを2体呼び出す、そのままフヨフヨとゆっくり飛んで倒れている者の頭にくっ付いた。
私はまだ指示を出しては居ないんだが……
「【
『『ピッ!』』
タコって鳴くのか?
まぁ、そんな事はどうでもいいか。
記憶が消えれば自然と離れるだろうし、気絶させてくれたナマズ達を消すか。
「御苦労だった。」
『……!!』
消そうと手を振ると一瞬で消えた。
結局ナマズは何を伝えたかったのか分からなかったな。
『『ピッ!』』
「お前達もよくやってくれた、また呼び出す。」
さっきのナマズ達と同じようにメンダコを消した時に思った。
このヌルヌルの2人を俺が運ぶのかと。
引き摺るか……
明らかにヌルヌルの何かが通ったとわかる湿った道が出来上がったが、なんとか移動させることができた。
「結界を解除して……」
小屋からガタガタと物音が聞こえ始めた。
「準備はできたか?」
「あと少しです。」
護衛とミナは準備は終わっているようだが、ノールは自分よりも大きな風呂敷を広げて何も無かったはずの小屋で何処から出したかわからない荷物を纏めていた。
「カリル様。」
「どうした?」
「その、ナーミス様はどのように移動させるので?」
言われてから気づいた、本当に全く考えていなかった問題。
「お母さんは私が背負っていくよ。」
悩んでいるとノールが運ぶと言い出した。
荷物に関しては私のアイテムBOXに入れればいいとして、ナーミスは小柄な方ではあるがノールが背負えるとは思えない。
「しかし、大丈夫か?」
「体調悪くなってからは私が背負って過ごしてたから大丈夫だよ。」
そこまで自信があるなら任せよう、アイテムBOXがミナ達に露呈するのは仕方ないな。
「なら荷物は私が運ぼう。」
「これ重いよ?多分持ち上げられないと思うし、強がらないでいいんだよ?」
母親が目覚めたおかげか警戒心が無くなり、だいぶフランクになったな。
この場にはミナ達しか居ないから別にいいが、私達に変な噂がたつだろうから、外では絶対に辞めさせよう。
それはそれとして少しイラついた。
「ほら、重いで── え?消えた?!」
風呂敷に触れてアイテムボックスへと収納すると皆が驚いている、ノールは驚愕の表情で完全に固まってしまった。
「さ、行くぞ。」
「いやいや、ちょっと待って?
ちゃんと説明しようか、私とお母さんの荷物は何処にいったの?」
「伯爵領に着いたら説明してやる。」
ワーワー騒ぐノールを適当にあしらいつつ、伯爵家の馬車へと移動を始める。
「そんなにいじけなくても、着いたら教えてくれるって言ってたから頑張りましょう?」
「でも、あれはお母さんから貰ったプレゼントが……」
「もしかして万年筆のこと?」
「うん……」
少し悪い事をしてしまった。
誰でも大切な物が目の前から急に消えたらビックリするし、無事なのかは直ぐに知りたがる。
だが外で話すわけにも行かない。
伯爵家に着いたら謝らなければならないな……
「……」
細道を抜けて大きな道に来るとやはり集まる悪意の籠った視線、それは私達と歩いていたらベルトナ母娘にも向けられていた。
「バーカ!」
「「「ギャハハハハ!!」」」
公爵領に住む子どもが私達に向かって悪口を叫んできた。
「殺したいな……」ボソッ
物騒な事を呟いたミナにわざわざ反応して楽しませる必要などないと注意する。
あの手の者達は反応を楽しんでいる、無反応で過ごしていれば直ぐに飽きるのだ。
そんな感じで歩いていると私達の馬車が見えて来た、既に準備が完了しているのかあとは乗り込むだけになっていた。
「カリル様、お疲れ様です。」
「直ぐに出るぞ。準備は完璧か?」
「もちろんです!」
さてと、乗る馬車は……
病気のナーミスは私が行きに乗っていた馬車がいいだろう、それに従って娘も同じ馬車へ。
私を含む残りはミナと護衛達の乗る馬車へと移動する。
「長旅になる、何かあれば直ぐに声をかけてくれ。」
「かしこまりました。」
「他に何か聞きたいことは?」
「では1つだけ。
ディカマン伯爵様、貴方が居てくれなかったら娘を1人にしてしまう所でした。本当にありがとうございます。」
感謝というのは気持ちが良いな。
この街に来て悪意に晒され、自分でも気付かないうちに疲弊していたのかもしれない。
「あぁ……
馬車を出せ。」
今の私は絶対に顔が赤くなっている、威厳を保つ為にもこんな姿を皆に見せるわけにはいかない!
「カリル様どうしたのですか?」
「……何でもない、ただ疲れが出ただけだ。」
寝たふりをして誤魔化してもいいが、この街を出るまでは起きていないと大きな問題が起こった時に対処できない。
カツン
馬車に何が当たった音がした、音的に小石だろう。
本当に馬鹿な奴らだ。
公爵領に住む者だから私に手を出されないとでも思っているのか?普通なら衛兵に捕まる。
それがないという事は正直に言って公爵領での私の評判は諦めるしかないだろう。
治安を守る衛兵が通常の業務すら実行出来ないのが公爵領に住む人間だ。
そんな者達の評判など気にするだけ無駄だしな。
「正当な理由なく呼び止めようとする声、石を投げる者、暴言を吐く者、全て無視するように。」
「「「了解です。」」」
本当にクソな街だった。
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