53.家を作ろう!(2)

 家造り一日目、今日は一日農業がお休みの日。やることは決めている、丸太を大量に作ることだ。材料がないと家造りなんてできないからね、とりあえず今日一日出来る限りの丸太を作る。


「さて、やりますか」


 目の前に広がる、森。その端から木を魔動力で抜いていく。抜くのは数分で終わるんだけど、この木を丸太にするまでが時間がかかる。


 まずは木の根元の切断。次に葉のついた細い枝の切断、これに結構な時間がかかってしまう。葉のついた枝を全て切り落とすと、今度は太い枝の切断。ここは捨てるのは勿体ないので、薪用に細かく裁断していく。


 そこまでしてから、丸太になるように余分な所を切ると、丸太の完成だ。この行程を何度も繰り返して、大量の丸太を作っていく。一人黙々と木を抜き、余分なところを切り落とし、丸太へと変えていく。


 夕方近くになると、一度丸太作りから離れて夕食作り。肉の下ごしらえをして、パンを捏ねて、発酵している間に丸太の作業。発酵が終わるとパンの形を整えて、二次発酵中にまた丸太の作業。


 そんな風に細切れに作業を続けていった。夕方になる頃には、丸太の山が出来上がっていた。とりあえず丸太を作る作業はここで終わりにして、足りなくなったらまた作ろう。


 今日の作業は終わりだ、夕食の準備をしなくっちゃ。


 家造り二日目、今日は農作業の日。いつものように小麦を作って、納品してきた後に作業を開始する。今日は家の基礎づくりだ、ここは大事なところだからしっかりと作っておかないといけない。


 設計図を見ながら、メジャーで家の大きさを測り、角に杭の代わりに薪を突き刺す。それを四方向やり終えると、今度は地魔法の番だ。地魔法で基礎になる石を出す。


 設計図を見て、基礎の形を頭に叩きこむと、地魔法を発動させる。すると、基礎となる石が地面からせり上がってきた。上手く形を調節して、設計図通りの基礎の形に成形する。基礎があっという間に完成した。


 次に石造りの部分を作る、暖炉とかまどと石窯だ。三つとも火を使う場所だから、その周辺も火事にならないように石で作っておきたい。


 まずはかまどから。かまどに接している床の部分は石で作って、余裕をもって周りの床も石にしよう。基礎の部分と融合してかまどの床を作った。


 今度はその床の上にかまどを作る。二つのかまどが融合しているようなイメージで地魔法を発動させる。すると、石がせり上がってきて石のかまどの形になった。形もいい感じにできたし、これでかまどは完成だ。


 次に石窯作り、場所はかまどの隣だ。かまどと同じように石の床を作ってから、その上に石窯を作っていく。石窯のイメージを頭の中でしっかりしてから、地魔法を発動させた。


 せり上がった石が石窯の形を成していく。石窯の煙突が外に出るように調節をした。後は木工所で買ってきた石窯の鉄の扉を付ければ、新しい石窯の完成だ。


 室内で使える石窯ができたぞ。あとはこの周辺の壁を石にしておけば、よほどのことがない限り火事は起こらないだろう。


 最後に暖炉作り。かまどの時と同じように基礎の部分の上に石の床を作っていく、暖炉の火が飛んでも大丈夫なように広めに床を作った。


 床を作ると今度は暖炉作りだ。頭の中に暖炉をイメージすると、そのイメージを崩さないように地魔法を発動させる。せり上がってきた石が四角い暖炉の形になっていった。


 そこから今度は煙突を作っていく。暖炉から煙突が伸びるイメージをすると、続けて地魔法を発動させる。すると、暖炉から煙突がどんどん伸びていった。丁度いい高さでストップをすると、これで煙突付きの暖炉が完成した。


 これで今日は終了だ、夕食の準備をしなくちゃね。


 家造り三日目、今日は一日中作業が出来るぞ。


 昨日は石の部分を作ったけど、今日からは木の部分を作っていく、まずは家の土台づくりだ。設計図を見ながら必要な木材の数や形を確認。早速、木材への加工に取り掛かる。


 まずは丸太を置く作業台を地魔法で作る。丈夫な石造りの台が出来ると、その上に魔動力で丸太を乗せた。それから丸太に定規とペンを使って線と番号を書いていく。これを土台に必要な数だけこなしていく。


 全ての丸太に線を書き終えると、今度は丸太を木材に加工していく。丸太を魔動力で宙に浮かせて固定する。それから風魔法で線に沿って丸太を切断する。すると、丸太が一気に角材に変わった。


 その作業を線を書いた全ての丸太に施していく。集中力がいる作業だけど、切らさずに最後まで作業ができた。作業が終わると辺りには角材と廃材の山が築かれた。今の内に廃材を燃やしておく、掃除も重要なお仕事だ。


 今度は切り出した木材を適切な長さに切り揃える。メジャーを使って長さを測りながら、さくさくと切断していった。この作業は簡単に終わる。


 次は木と木を組み合わせるために必要な凹凸の溝を掘っていく。設計図と木に書いた番号を確認しながら、その木材に必要な溝を掘っていった。


 魔法があれば掘るのは時間はかからないけれど、とにかく掘る溝の数が多い。それに設計図通りにやらないといけないので確認作業も多かった。今日の一日の大半は溝掘りに時間を取られてしまう。


 地道に溝掘りを続けていくと、ようやく作業が終わった。大事な土台の部分だから失敗は許されない、出来るだけ丁寧に作業をしたお陰で今日の作業は溝掘りまでになってしまう。


 家造り四日目、小麦の収穫と納品を終えて帰ってきた私は昨日の続きを始めた。今日は昨日作った加工済みの木材を基礎に組み込むところからだ。


 設計図を見ながら土台の枠を基礎に設置していき、器具をはめ込んで土台と基礎を合体させる。枠の合体が終わったら、枠の内側に残りの土台を凹凸を合わせてはめ込んでいく。


 魔動力があるから重い木材を自由に移動できてとても楽だ。はめ込む力も魔動力で済むし、本当に良い魔法を習得したなぁって思う。


 全ての木材を土台として組み込んだところで今日の作業は終了した。一日中作業できない日はこれくらいの作業量しかできないね。


 家造り五日目、一日中作業できる日だ。今日は柱と梁の木材を加工して、出来れば土台に組み合わせられたらいいな。


 土台の木材作り同様に、設計図を見ながら丸太に線と番号を書いていく。全ての丸太に書き終わると、今度は丸太の切断に入る。丸太を宙に浮かせて、線に沿って切っていく。


 失敗しないように神経を集中してどんどん丸太を木材に加工していった。終わる頃には大量の角材と廃材の山が出来て、邪魔になる廃材を燃やしておく。


 次に木材を適切な長さに切る。この作業はそんなに時間がかからずに終わった。


 その次の作業が時間がかかる溝掘り作業だ。設計図と木材に書いた番号を確認しながら、慎重に溝を掘っていく。やっぱりこの作業が一番時間がかかる。地道に丁寧に木材に溝を一日がかりで掘っていった。


 家造り六日目、今日は昨日の続きからだ。溝は全て掘り終えたので、今度は柱と梁を組み立てていく。


 魔動力で柱を浮かせて、土台の溝にはめ込んでいく。はめ込んだ後は鉄の器具を魔動力で打ち込んで固定する。その作業を全ての柱を建てる時にやった。


 柱を全て建て終えると、今度は柱と梁の溝をはめ込んで合体させる。ここでも両方を固定するために、鉄の器具を魔動力で打ち込んでいく。柱と同じ作業を梁にもしていった。


 黙々と梁と柱を繋げていき、なんとか作業を終えることができた。


「ふー……なんとかできた。って、夕食作るの忘れてた!」


 しまった、作業に夢中になりすぎて忘れてしまった。今から作っても間に合わないし……仕方がない、今日は宿屋で夕食にしよう。二人が帰ってくるのを待っていると、二人が戻ってきた。


「おー、なんか立ってる」

「まだ家には見えませんね」


 二人は建てたばかりの柱を見てそんな感想を零した。まだまだ、家の骨組みだけだからね、家になるのはこれからだ。


「ごめんね、今日は作業に集中して夕食を作り忘れたの。宿屋に食べに行こう」

「ノアが作り忘れるなんて珍しいですね。それだけ大変な作業なんですね、お疲れ様です」

「ウチは全然構わないぞ! さぁ、宿屋に行こう!」


 二人の優しさが身に染みる。


「今日の宿屋の料理はなんだろうな、楽しみだぞ!」

「まだまだ、暑いですからね。さっぱりとしたものが食べたいです」

「冷たい料理とかあれば、喜んで行くんだけどね」

「そういう料理があるなら食べてみたいですね」

「氷みたいに冷たいものか? どんな味がするんだろうなぁ」


 冷たい料理か……その内挑戦できればいいな。今は家造りを頑張るしかない!

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