第14話 代行者〜蟹座〜
カルキノスは男にこれから行われる戦いについてとそうなった経緯について説明する。自分を含めた残りの十一神の代行者と殺し合いが始まると。
どちらかが死ねば必ずもう片方も死ぬこと。代行者と神は一心同体。相手を裏切ることも見捨てることもできない。
生き残りたければ勝つしか方法がないことを男に話す。
男はカルキノスが話した内容があまりにも現実離れしていた為しばらく黙り込んでしまう。
「つまり、俺の願いを叶えるにはあんたを勝たせないといけないってことか」
男はもうこの化け物に自分の人生を賭けた。なら、絶対この化け物を勝たせてやると心の中で誓う。
「そうだ」
「なら、あんたのその姿も王様からの罰なのかい」
男の問いに「何のことだ」と首を傾げるカルキノス。
「いや、だからその姿…。もしかして、あんたきっいてないのか」
そう言うと部屋から出てどこかに歩いていく男。
「ほら、見てみな」
手の平サイズの鏡をカルキノスに手渡す。
カルキノスは言われた通り鏡をみる。するとそこに映っていたのは化け物だった。
「は?」
カルキノスは困惑した。本来の姿とは似ても似つかない者が鏡に映っていることに。
見間違いかと思い目を閉じてもう一度見るもそこに映っているのはやっぱり化け物。どうしてこんな姿に自分はなったのかカルキノスにはわからなかった。
「おい人間。お前の目には俺がこう見えているのか」
僅かな望みをもってそう聞くも「うん。最初からそう見えてる」と即答する男。
「そうか」
そう言うと暫く黙り込むカルキノス。
神の姿から化け物の姿にされたのを受け入れるのはカルキノスにとって屈辱だった。だが、受け入れるしかないとわかっていても中々受け入れられない。
男は化け物にも事情があるのかと察して一人にしてやろうとベランダにでる。
タバコを取り出して化け物が落ち着くのを待つかと気長に待つことにした。
そろそろ大丈夫かと思い部屋の中に戻る男。
「大丈夫か」
心配などしてないが一応そう尋ねる男。
「ああ、問題ない」
ようやく化け物の姿を受け入れたカルキノス。
「そう。じゃあ、話を戻すよ。これから俺は何したらいいんだ」
さっさと他の代行者を殺してこの戦いを終わらそうと思う男。
「待て。その前にやることがある」
カルキノスがそう言うと男は「(まだ何かあるのか)」と煩わしく思う。
「(アスター。代行者が決まった)」
神力を使って天界にアスターに呼びかける。
「お呼びでしょうか。カルキノス様」
カルキノスの呼びかけに応じ人間界に降りてくるアスター。そんなアスターを目にした男は、こいつの方がよっぽど神っぽいなと思う。
「俺の代行者が決まった。名は蘭子軒(ランズーシュエン)」
カルキノスがアスターに子軒の名前を教える。
「なんで名前知ってんの」
カルキノスに名前教えてないのに何で知っているのかと不審に思う。
「俺は神だぞ。それくらい大したことじゃない」
カルキノスの言葉に確かにと納得する子軒。
「アスター。続けろ」
カルキノスと子軒の話しが終わるのを待っていたアスター。
「かしこまりました。では、これより子軒様には蟹座の代行者としての証を体に刻んでいただきます」
「体にきざむ」
痛い思いをするのかと小声で呟く子軒。
「ご安心下さい。全く痛くありませんので」
子軒の表情で察しそう言うアスター。
その言葉にホッとする子軒。
「どこでもいいのか」
カルキノスが尋ねると「はい。どこでも構いません」と答えるアスター。
「どこがいい」
他人の体に自分の紋章を入れるので本人の好きな所がいいだろうという優しさで子軒に聞く。
「ん?あんたが入れるのか」
「当たり前だろ」
子軒の問いかけに呆れるカルキノス。
「蟹座の紋章は蟹座を司る神にしか入れることはできません。なので、カルキノス様以外が行うことはできないのです」
アスターの説明で納得する子軒。
「じゃあここに」
服をめくって右腰に入れて欲しいと訴える。
「触るぞ」
子軒の腰に手をおき神力を注いでいく。子軒はカルキノスの手にビクッとするが、全く痛くなく寧ろ温かい温もりに包まれ気持ちよくなる。
「終わった。これでいいのか」
子軒の腰に入って蟹座の紋章をアスターに見せる。
「はい。これで子軒様は蟹座の代行者としてアナテマへの参加かが認められました。カルキノス様アナテマが終わるまでは天界には戻れませんのでご注意を。それでは私はこれで失礼します」
そう言って天界へと戻っていくアスター。
「もう後戻りはできないぞ」
アスターが天界に戻ったのを確認して子軒にそう言う。
「戻るつもりはもうないよ。俺はあんたに全部賭けた」
だから覚悟はとうにできていると。
「そうか、ならいい。子軒。最初に言ったように俺の願いを叶えてもらう。その代わり俺もお前の願いを叶える」
「ああ、わかってる。必ず勝つよ」
「これは契約だ。俺の代行者となり縁を切ってほしい」
「いいよ。その代わり神様の力を沢山使わせてもらうよ」
カルキノスと子軒はお互いの利益の為に契約をした。
ギュルルル。子軒のお腹から音が鳴る。
「お腹空いたな」
緊張が解けたからかお腹がすいた。
「あんたも何か食べるか」
子軒の問いかけに首を横に振り「必要ない」と言う。
神は人間と違い食事をしなくても何も問題はない。娯楽として食事をする神もいるがカルキノスにはそんな娯楽必要なかった。
「そうか」
子軒はいつものように一人分のご飯を作る。今日はいろんなことがあって疲れたため手抜き料理になったが、普段は手の込んだ料理をよく作る。
ご飯を食べ終わり片付けをしながら子軒はカルキノスをどうするか悩む。お互いに利益のために契約したとはいえずっと一緒にいる訳にはいかないと思う。
一応化け物の姿をしていても神様だからぞんざいにはできないし、かといってずっといられるのも怖いから嫌だ。
「なぁ、あんたこれからどうするんだ」
考えても埒があかないと思い直球に聞く。
「何がだ」
子軒の言っている意味がわからないカルキノス。
天界にはもう戻れないのでアナテマが終わるまでは子軒の家で過ごそうと思っていた。
「いや、だからあんたずっとここにいるつもりか」
「そのつもりだが」
当たり前だろみたいな態度言うカルキノスに開いた口が塞がらない子軒。
「お前ちゃんと理解してないだろう」
アナテマのルールを理解できていない子軒に呆れてそう言い放つ。
「俺とお前はどちらかが死ぬともう片方も死ぬんだ。もし、アナテマが始まる前にお前が死ねば俺も死ぬことになる。だから、お前の傍から離れられない」
わかったか、とカルキノスが言うと子軒は頷く。
本当かと疑うカルキノスだがこれ以上は面倒くさくなり黙る。
「(つまり、これからそのアマ何とかが終わるまでこいつとずっと一緒にいないといけないのか)」
本来の姿のカルキノスなら子軒も喜んで傍にいただろうが今は化け物の姿。化け物とこれから過ごさないといけない事実に絶望する子軒。
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