第12章 夏の忘れ物

第286話 日本へ帰って来た彼ら


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。










 フランスから日本へと長時間のフライトを経て帰って来た国内のUー19日本代表。


 国際大会優勝を持ち帰った彼らに待っていたのは取材の嵐だ。


「この度の日本の優勝素晴らしかったです、チームの強さの秘訣はなんでしょうか?」


「そうですね…意思疎通が過去で1番しっかりしてる、でしょうかね」


 記者からの質問にマッテオは少し考える素振りを見せてから質問に答えていた。


 他にも色々強さはあったがこの場では伏せておく、余計な情報はあまり与えない方が良いだろうとマッテオは考えているようだ。


「照皇君、MVPおめでとうございます。今のお気持ちはどうでしょうか?」


「日本が国際の舞台で強さを見せられたのは嬉しい事ですが、この先にすぐ高校の総体があるので浮かれてばかりではいられません。そこへと目指してまずは休みつつ切り替えて行きたいと思います」


 照皇は既に八重葉学園の一員として自校を総体連覇へ導く為の戦いへとスイッチを切り替えていた。


「八神君、コスタリカ戦のスコーピオンによるゴールお見事でした!あれ狙ってやりました?」


「いや完全なまぐれですわー、自分でもよう分からん間にゴール決まってましたんでね」


 コスタリカ戦の事を掘り下げられ想真は苦笑いを浮かべつつ答える。


 それぞれがインタビューに答える中で弥一達の姿は無い、立見の3人はファーストクラスで一足早く日本に帰国。


 これで取材陣の日本チームに合わせての到着よりも早く空港に着いてインタビューを回避していたのだ。





 弥一と優也は大門の実家である中華料理店、飛翔龍に来ていた。時刻は既に夕方を回っている。


 大門が飛行機で戻る時間を家に伝えると重三から「家で優勝祝いをするから連れてくるよう言われ、飛翔龍の炒飯が大好きな弥一は迷わずOK。優也も久々に行こうと賛成して同行。


「日本を勝利へと導いたヒーロー達よ!今日は存分に食べていくといい!」


「わー♪いっただっきまーす♪」


 中華テーブルの上に用意された数々の中華料理がドンと置かれており弥一は真っ先に特製の炒飯へと目を付け、レンゲで米をひとすくいすればそれを食す。


 弥一が愛してやまない飛翔龍の炒飯、変わらず米と卵とチャーシューの相性がそれぞれ抜群であり美味しさのマリアージュを互いに奏で合っていた。



「優勝した後の炒飯は格別だぁ〜♡最高過ぎる〜♡」


 大好物を口にして弥一は幸せの世界へ誘われて美味しさの余韻に浸る。


 その横で優也は立江が作った天津飯を食べていた。


「フランスで良いの食べた後に口に合うか分からないけどねぇ」


「あ、いえ…俺にはフランスの料理はあまり口に合わなかったので、此処のご飯の方が美味しいです」


「まあまあ、嬉しい事言って。どんどん食べてねー」


 フランスより飛翔龍の食事の方が好きと若い子に言われて嬉しい顔を見せる立江。



 大門の方は家族へとフランスの土産を手渡しており弟の龍二にも焼き菓子を渡していた。


「おおー、美味そうな焼き菓子ー。兄ちゃんサンキュー♪」


 初めて見た時と比べて龍二は少し大きく成長、聞けばこの春に中学生となったそうだ。部活は兄と同じサッカー部を選んでいる。


「じいちゃんとばあちゃんにも、これフランスのお菓子でカヌレっていうの」


「知っとるわ!ワシとて若い頃新婚旅行でばあさんとフランスに行っとるからな!」


「ああ懐かしいねぇ、2人でセーヌ川を船で渡ったりしてエッフェル塔を眺めたりと…」


 大門が祖父母にもフランス土産を渡すと2人はフランスに行っていた過去を持つ事を話す。


 孫の方はそこで盗難の被害に遭いかけたが2人の雰囲気を見て話すのは止めた方がいいなと盗難については黙っておく事に大門は決めたのだった。



「しかし皆大変だな、フランスで代表の試合が終わってもインターハイあって忙しそうだし」


「今年の夏はまた特に暑いって聞くから心配だわ…高校サッカー休ませてくれる気ないのかしら」


 大門の父と母は皆のこれからの日程を心配していた。


 今年は去年を超える猛暑と言われている、去年も言われていた気がするがそれが続き暑さは年々酷くなっていた。


 これに運営の方も動かない訳ではない、今年からは福島のJヴィレッジ固定でインターハイ開催との事だ。


 ただ暑さ対策はしても日程の方が相変わらず厳しい事に変わりは無い。



 コンディション維持に関して長けている薫の指導で何処まで疲労を抑えられるかが鍵になってくるかもしれない。





「はあ〜食べた食べた〜♡」


 飛翔龍の絶品中華を堪能した弥一は旅の疲れも忘れ、満足そうだった。



「明日は部活がオフで、あいつらに直に会うのは明後日になる。俺達はしっかり休んで体調整えて立見に合流だな」


「そうだねー、じゃあ明後日に立見で!お疲れー♪」


 途中の道で弥一と優也は明後日に会おうと別れ、それぞれ帰宅への道を歩く。



「(って言いながら僕明日出かける予定あるけどねー)」


 ゆっくり休むと言いながら弥一は明日事前に約束していた予定がある。

 それについては誰にも言っておらずグルチャにも伝えていない。



 輝咲との夏のデートだ。




 ーーーーーーーーーーーーーーー



 フォルナ「ほあ〜」


 弥一「しばらく留守にしててごめんなー、ご飯やおやつ奮発しておくからー」


 フォルナ「ほあ〜♪」


 弥一「相変わらずお前はご飯とおやつ大好きだなぁ♪という訳で次回はデートしてきまーす♪」

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