第14話


「どうした、何の音だ?」

「飛行機か?」

 聴覚の鋭いサイレンたちの方が、よっぽど反応が早かった。僕の耳には、遠いかすかなうなり声としかまだ聞こえない。

「そういえば爆雷の音がやんだぞ」

「日本人め、ついにトルクの捜索をあきらめたな」

 ふううっと、リリーは大きなため息をついた。

「時間になったから、やつらは予定通りに作戦を始めたのだろう。合衆国に対する全面的な奇襲攻撃だからな。今さら変更も延期もできまいさ」

「おいトルク」

 と、コバルトが僕めがけてヘルメットを投げてきたのは、この時だった。両手を使って、僕はかろうじて受け取った。

「それをかぶれ。タンクにエアはあるか?」

 さっそく僕のエアタンクを手にしたのはリリーだった。メーターを横目でのぞき込んでいる。

「エアは少し足りぬな」

「なら詰めておけ。私は先に出る」

「私はあんたの部下ではないぞ」

 コバルトをにらみ返しながらも給気管を手にし、口にくわえてリリーは息を吹き込み始めている。

 あのサイズの体の肺活量なのだ。たった数回吹き込むだけで、僕のエアタンクはすぐに満タンになってしまった。

 それをリリーは、僕の背にドスンと乗せた。

「早く準備をなさい。今度こそ逃げ出せるといいですね」

 リリーの肩に乗せられて洞窟を抜け出ると、そこにコバルトが待機していた。

「トルク、水の上を見てみろ。面白いぞ」

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