第7話 麹菌
「おいしい~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」
ふっくらキラキラ炊きあがった赤米。
ちゃんと蒸らして
頭蓋骨一杯に米の香りが膨らんだ。
1000年ぶりに食べた
やっぱりこれがなくっちゃと、思わずガッツポーズをしてしまう。
煮豆も美味しかった。
やはり塩だけの味付けだったが、米に次いで主食と言える大豆の破壊力はそんな芸の無さなどモノともしない。
五臓六腑に染みわたる懐かしい風味が、自然と涙腺を緩めてしまう。
「う……うぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~……」
「だからって本当に泣かなくてもよろしいのですよ?」
「いやいや……もうもう……これはさ~~~~やっぱりさ~~~~~~~~美味いよ~~~~~? 日本人はこうでなくっちゃ~~~~ん~~~~~~~~!!」
ん~~ん~~~~鳴きながら米を頬張る弥生。
そんなに喜んでもらうと
「では私も失礼して。……うん、美味しいです。やはり薪と釜戸で炊いたお米は一味違いますね」
「ね~~~~。たしか1000年前はサーベルタイガーの炊飯ジャー使ってたけどさ、アレよりもおいしいよねぇ~~~~~~~~!!」
さっそくおかわりをする弥生。
今度は煮豆をご飯にかけて豆丼にしている。
「……しかし白米と比べるとモチモチ感が強いですね。……たしか赤米はもち米の一種だったと。それにタンニンも多く、渋みがありますね」
「そ~~~~……う、かな? ……そう言われればそうかも。モチモチ感はたしかに……でも私、お赤飯おにぎり大好きだったし、これも好きよ♪」
「そうですか。ならば良かったです」
「次はいよいよ味噌と醤油を作っていきます」
「いよ!! 待ってました大統領っ!!!!」
あらかじめ作っておいた必要な道具、桶や搾り機をバックに宣言する彭侯。
米と豆ですっかり和食の舌になってしまった弥生は元気いっぱいに喝采を送る。
「弥生様もご存知と思いますが、味噌と醤油は兄弟のようなものです」
「うんうん」
「味噌を作る過程でできる『もろみ』を絞ったものが醤油なのです」
「そうだった、そうだった」
「とはいえ味噌の始まりは古代中国の大豆塩蔵食品である醤(ジャン)を作る途中のもの。未だ醤にならざるもの(未醤)から『みしょう』『みしょ』『みそ』と変化したのが由来と言われており、元々は醤油が先だったのかも――――痛っ!?」
ドスッ!!
彭侯の脇腹に手刀が突き刺さった。
「ウンチクはいいの!! あんたね~~そういうのカッコいいと思ってるかもしれないケド、女子の大半は理屈っぽいの嫌いだから!! もっとザックリ大まかに簡単に、赤ちゃんでもわかるように説明して!! じゃないとモテないわよ!!」
「いや……私は別に……異性などに興味はありませんが……痛たたたた……」
「寂しいこと言うなよ、せっかくハンサムなんだからもっと貪欲に!!」
「私は弥生様だけに嫌われなければそれでよいのです」
「うわやばっ!! あんたも~~~~そんな……。だめよぉ~~~~女の子に気安くそんなこと言っちゃ。もうもうもぉ~~~~~~~~~~~~~~ゔ(怒♡)」
いやんいやん、と体をくねらせる弥生。
そんな忙しい主人を置いて作業を進める。
「……ともかく今回は材料の関係もありますから『
「まかせるわ、好きにして♡」
「豆味噌とは大豆だけを原料にした味噌で、たまり醤油はそれから絞られた醤油でございます。江戸時代ではこちらが主流でした」
「江戸かぁ~~江戸時代は私、寝てたからなぁ……」
弥生は近代人類誕生前から生きていたが、近代人と過ごしていたのは石器時代~縄文時代、平安時代、そして昭和~令和の間だけ。それ以前、他国の人類文明とはほとんど関わっていなかった(なんか怖かったから)
「まずは二つの原料となる
「豆麹?」
「………………………………」
脇腹をさすりながら言葉を選んでいる彭侯。
「簡単に。簡単によ」
「え~~~~っと……つまり
「カビ!? ばっちぃっ!!」
「汚くはありません。食べても問題無い良いカビです。それを豆にまんべんなく植え付けたのが豆麹となります」
「なんで植えるの!?」
「発酵させるためです。麹が豆のタンパク……え~~っと……ともかく味噌や醤油に変化させてくれるのです」
「植え付けまくりなさい!!」
「はい」
んにょにょにょにょ~~~~~~~~。
「それも能力でやるのね」
「麹菌は大気中に普通に存在します。それを集めて、準備した煮大豆と、きな粉に添加します」
「きな粉使うんだ」
「ええ、菌の繁殖をしやすいようにですね。きな粉も大豆ですから」
ほわほわほわほわ~~~~。
「……見た目わからないわね……」
「3日ほど待てば変化してきますよ」
「早送り早送り」
「はい。では無理を言って頑張らせましょう」
んにょにょにょにょ~~~~。
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