第9話 イッシー
ある日、東武市で現金輸送車襲撃事件が発生し、警備員2名が射殺される。被害者となった現金輸送専門の警備会社、綾辻警備は、事件ののちに石川という男を採用する。彼は上野という男と組むことになり、“イッシー”と呼ばれる。
5カ月後、輸送業務の途中で“上野”が犯罪グループに襲われ、人質に取られる。輸送車から現金を奪われそうになった“イッシー”は、冷静沈着な対処と卓越した戦闘スキルを見せ、易々と犯人全員を射殺する。同僚2人と共に無傷で生還したイッシー”は英雄扱いされる。3ヵ月後に再び襲撃に遭うが、“イッシー”の顔を見た襲撃犯のリーダーは途端に襲撃中止を手下に指示して逃げ去ってしまう。“イッシー”の正体は、東武署が25年にわたり追い続ける伝説的なギャングのボス、榎本であり、逃げ出した襲撃犯は偶然ボスと鉢合わせた彼の手下たちだった。
5ヶ月前に発生した現金輸送車襲撃事件は、彼らと別のグループによるもので、犠牲となったのは2名の警備員だけではなかった。現場に居合わせて目撃者となった榎本の息子も巻き添えとなって殺されていた。榎本の一味は、東武署の捜査官から得た情報をもとに襲撃犯である可能性のある人物をしらみつぶしにしていくが、真犯人にたどり着くことができずにいた。被害者の綾辻警備に内通者がいる可能性を部下に示唆された榎本は、経歴を偽装して綾辻警備に潜り込み、密かに社員を調査していたのだった。
現金輸送車襲撃犯の正体は6人の元軍人グループで、榎本の息子を殺害したのはメンバーの1人である岡田という男だった。その後、襲撃犯たちは巨額の現金が警備会社に集められる金曜日に目を付け、警備会社そのものを襲う計画を進める。
金曜日当日、綾辻警備には1億もの現金が集められていた。現金輸送車で車庫へ戻る途中の“イッシー”は、車を運転する“上野”が襲撃犯の協力者であることを打ち明けられ、これから起こる襲撃に協力するか死かの選択を迫られる。“イッシー”は協力することを承諾し、“上野”の手引きで輸送車に乗り込んだ襲撃犯は警備の車庫に侵入する。警備会社内部での銃撃戦が始まる。
拘束されていた“イッシー”は隙を見て襲撃犯の1人に襲い掛かり、拘束を解いた後に一人また一人と襲撃犯を倒すものの、“上野”の弾丸を浴びて倒れる。巨額の現金が輸送車に積み込まれ、リーダーの唐川と岡田、そして“上野”の3人は東武警察やSATの包囲を突破して逃走するが、大金の独り占めを目論んだ岡田が唐川と“上野”を殺害し、警察の捜査を尻目に現金とともに自宅へ帰り着く。
しかし、現金の入ったバッグの1つに紛れ込ませていた携帯電話により、居場所は筒抜けだった。岡田に拳銃を突きつけた榎本は息子の死亡診断書を読み上げさせ、そこに記された遺体の傷跡の通りに肝臓、肺、脾臓、心臓を打ち抜いていく。復讐を終え、榎本は宇都宮の夜の闇に消える。
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