第276話 シュレア屋敷6、電気工事
氷川とドライブしたその日の夜。
俺はスマホでちょっとばかり高級な双眼鏡を注文した。
そして円盤プレーヤーとちょっと大きめのスピーカー付きモニター、円盤もそれなりの数購入した。今のところシュレアの気候は温暖のようなので今回はエアコンは注文していない。
配達は4日後の午前中ということになった。
そして翌日。
母さんにゆっくりしてもらおうと、いつものようにうちでは朝食をとらず、シュレア屋敷で朝食をいただこうと転移した。
「おはよう」
「おはようイチロー」「「おはようございます」」
タマちゃんも入れて5人で食事しながら、アキナちゃんの勉強の進み具合を3人に聞いた。
「まだ数日だけどアキナちゃんの勉強はどう?」
「アキナちゃんの勉強のことなら問題ないと思います」とカリンが答えてくれた。
「そうか。それならよかった。
そういえば、いま新館で発電機を作ってるんだ」
「はつでんき?」
「俺の国にあるいろんなものは発電機で作った電気というもので動いてるんだ」
「ふーん」
「それで、発電機ができ上ったらここに据え付けて、俺の国の機械をここに置こうと思っている」
「どんなきかい?」
「この前見た映画はぜんぜん面白くなかったけれど、いろいろな面白い映画なんかがこの屋敷の中で見られるようになるはずだ」
「ほんとう?」
「もちろん本当だ。発電機を据え付けたら配線と言って発電機から紐を伸ばさないといけないし、機械も買わないといけないし、そういった映画も買わないといけないからもう少し先の話になるけどな」
「うれしい」
「その時アキナちゃんも一緒に映画が見られるように日本語の勉強は大事だな」
「しってる」
「仲良く頑張るんだぞ」
「わかった」
朝食を終えた俺は居間のソファーで少し休んでから新館の書斎に転移した。
タマちゃんの入ったスポーツバッグを下ろして呼び鈴でアインを呼ぼうとしたところでアインが部屋の中に入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう」
「マスター、発電機の準備と配線用の資材の用意は終わっています」
思った通り準備完了していたようだ。
「それじゃあ、さっそく荷物を運んでしまおう。作業員も何人か用意できてるんだろ?」
「はい。4名用意しました。
それではこの部屋の前の廊下に運んできます」
アインが部屋を出て行ったので俺も椅子から立ち上がり、タマちゃん入りのスポーツバッグを持って廊下に出てアインが作業員と資材を運んでくるのを待った。
待っている間、自動人形たちが廊下や窓の掃除をしているのを眺めていたら5分ほどしてアインが戻ってきた。
アインの後ろには荷物の載った大型の台車2台を自動人形ふたりずつで押してついてきていた。
「この金属製の箱が発電機でこちらの木の箱には工具と配線用の資材が入っています」
「荷物は台車の上のふたつの箱だけでいいんだな?」
「はい。この4人が作業します」
「了解。
じゃあタマちゃん、荷物を収納してくれ」
「はい」
ふたつの箱はあっというまにタマちゃんの中に消えていった。
「それじゃあ4人は俺の手をどこでもいいから持ってくれるか?」
「マスター。4人は自動人形ですからタマちゃんさんに収納してもらうことができます」
「そう言えばそうか。気付かなかったな」
「わたしも気づいていませんでしたが、複雑な機械をタマちゃんさんが収納できる以上自動人形も収納できると思いました」
「なるほど。
どっちでもいいけど、それじゃあタマちゃんが4人を収納してくれ」
「はい」
あっという間にその4人もタマちゃんの偽足に吸い込まれてしまった。
吸い込まれて行くとき自動人形の顔が間延びしたように見えたんだけど大丈夫だったのだろうか?
シュレア屋敷で全ては分かるが、ちょっと怖いような気がしないでもない。
「アイン、それじゃあ」
「マスター、今の4人ですがそれなりに優秀な4人でミアの国の言葉も話せます。向こうでは発電機のメンテナンスも必要でしょうし、護衛の人数も今の2人では心配ですからそのままあちらに置いて使ってください」
さすがはアインだ。俺の足りないところを補ってくれる。まさに当家の家令だ。
「わかった。それじゃあ行ってくる」
「マスター、昼食はいかがします?」
「12時ごろ食べられるよう用意してくれ」
「かしこまりました」
アインを残して俺はシュレア屋敷の玄関ホールに転移した。
この時間だともうアキナちゃんは屋敷にやってきて勉強中かもしれない。
何となくアキナちゃんの気配がするようなしないような。
「それじゃあ、タマちゃん、まずは4人を出してくれ」
「はい」
目の錯覚かも知れないが4人が現れる時も顔が間延びしていたような。
「4人とも大丈夫か?」
「「はい。大丈夫です」」
4人の声がハモったぞ。4人でコーラスグループを結成したら面白そうだ。
「発電機と資材はどこに置けばいい?
ここの床がしっかりしているから発電機はここに据え付けてしまうか?」
「はい。ここで大丈夫と思います」
今度は4人のうちのひとりが答えた。彼が4人のリーダーなのかもしれない。
「資材も発電気の近くに置いておけばいいんだよな?」
「はい」
「了解。
じゃあタマちゃん、邪魔にならないようなところに発電機と資材を置いてくれるか?」
「はい」
玄関ホールの奥の角に発電機が置かれ、その手前に資材の入った木箱が置かれた。
「マスター。後はわたしたちで作業します。ありがとうございました」
「わかった。何時間くらいで作業が終わる?」
「2時間ほどで完了します」
「じゃあ、そのころ出来上がりを見に帰ってくる」
「了解しました」
時計を見たら8時だったので、10時に戻ってこよう。
「それじゃあ」
「「はい」」
それじゃあ。と、言ったもののどこに行く当てもなかった俺は、電気のテスト用に簡単な電気製品を買おうと、いつものホームセンターの近くに転移した。
そこから歩いて入り口に回り階段を上って2階に上がり、上り口に置いてあったカートにタマちゃん入りのスポーツバッグを置いてから、家電売り場に向かった。
何がいいのか迷ったのだが、電動の鉛筆削り器があったのでそれを買うことにしてカートに入れた。
以前のミアのために買った鉛筆削り器は手動でくるくる回るものだったが、これだとあっという間に鉛筆が削れるはずだ。
今はアキナちゃんも増えて4人で使っているから鉛筆やノートも少なくなっているかもしれないと思いついたので、文房具売り場でそういったものを見つけてカートに入れた。
あと、赤いボールペンもあったので赤いボールペンのほか黒のボールペンもそれなりの数カートに入れておいた。
この際買っておいた方がいい物ってあったかな?
カートを押してホームセンターの中を見て回っていら、ボディーソープ、シャンプー、リンスといったお風呂の必需品を売っていたのでそれもカートに入れておいた。
今はカリンとレンカは食事するようになったからあのふたりも歯磨きした方がいいと思い付いたので、歯ブラシを10本、歯磨きチューブを10個ほどカートに入れておいた。
これだけあれば当分補充なくてもいいだろう。
カートを押してレジに並んでいたら、すぐに順番が来たので現金で精算してもらった。
その後は今まで通りで、カートを押してエレベーターに乗り、屋上に出てタマちゃんに荷物を収納してもらった。
今までホームセンターの近くに転移していたんだけど、この屋上の方が転移先としても良さそうなので次はここを転移に使わせてもらおう。
カートを駐車場のカート置き場に返して転移。
まだ時間は早かったが行き先はシュレア屋敷の居間だ。
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