第187話 石像の間2、巨人戦
巨人の大広間で、巨人を1体たおしたら、3体目が動き始めた。
俺はその3体目は無視して手負いの2体目に向かって突撃した。
2体目の巨人は持ち手だけになった大剣を俺に投げつけてきたが、俺はサイドステップでその持ち手を避け、さらに接近して巨人の左右の膝の下にシロを振って両足を一度に切断してやった。
そしたら巨人は前後に倒れることなくそのまま縦に床まで落っこち、その衝撃で膝から上の太ももが砕けてしまった。
そこから巨人は仰向けに倒れ始めた。
巨人が両手で倒れていく体を支えようとしていたので、回り込んだ俺はその両手の肘をシロで消してやり、ついでに倒れてきた巨人の後頭部を消してやった。
巨人はそのまま仰向けに床に倒れ、粉々に砕けてしまった。
死んだ後のことはどうでもいいが、死んでしまうと脆くなるようだ。
2体目が死んだことで、4体目が動き始めた。
そこまで俺は真面目に戦ったのだが、あと8体+座像を相手にするのは面倒になってきた。
ここはタマちゃんに巨人の頭部を食べてもらおう。
おいしくはないだろうが、何かの栄養になる可能性も無きにしも
「タマちゃん、巨人の頭を食べてくれ」
背中のリュックがわずかに震えて、リュックから金色の偽足が数本伸びて、まず3体目の巨人の頭部に接触した。
巨人の頭部は綿あめのようにシュルシュルと消えてしまい、巨人はそのまま床に倒れて粉々になってしまった。
その間にタマちゃんの偽足は4体目、そして動き始めた5体目に伸び、順番に頭を吸収してしまった。
頭の無くなった巨人は3体目と同じように床に倒れて粉々になった。
それから先は流れ作業。
残りの巨人もタマちゃんの頭部吸収攻撃を受け、頭を失くした後は床に倒れ込んで粉々になってしまった。全部で1分もかかっていない。
さーて、残るは座像のみ。
大広間の中は巨人の残骸が散らばってひどい有様だ。
そんな中、俺の予想通り椅子に座っていた巨人が立ち上がった。
立ち上がったそいつはこれまでの巨人と比べ1.5倍ほどの大きさがあった。大巨人だ。
そいつは右手にバトンのような短い棒を持っている。
バトンの両端が尖っているので、
俺が観察していると、大巨人はバトンを上げて俺にその先端を向けた。
何か仕掛けてくる。
俺はとっさだったがアイスウォールをできるだけ厚く展開した。
氷の壁の厚さが1メートルほどでき上った時、氷の壁が爆発して粉々に砕けた。
氷の小さくもない破片がバシバシと俺の体に当たったが、俺自身何ともなかったし、防刃ジャケットを含め、防具に異常はないようだ。
氷が爆発的に砕けたのは大巨人の遠隔攻撃が命中したためだろうが、俺は氷の陰に隠れていたのでどういった攻撃を受けたのかは分からなかった。
ただ、俺でも直接その攻撃を受けたらかなりヤバそうだ。ということだけ分かった。
それと、物理攻撃なら吸収できるタマちゃんだが、今のは何らかの魔法攻撃なのでいくらタマちゃんでもダメージを受けてしまうだろう。タマちゃんを出撃させない方が良さそうだ。
なので、俺は再度アイスウォールを作り出し、その陰から大巨人の顔に向けて様子見のファイヤーボールを連射してやった。
大広間の中でファイヤーボールの爆発音が数秒続いたあと、俺の防御用アイスウォールが爆発し砕け散った。
射撃を中断して再度アイスウォールを展開。
そして、アイスウォールの横から右手を出してファイヤーボールを再連射。
大巨人の顔にファイヤーボールの白い光球が次々命中するものの、あまりダメージを与えているようではない。かといって、ノーダメージでもないようだ。
もう少し連射速度を上げたいところ。
そう思っていたら、またアイスウォールが破壊された。
俺はアイスウォールを再展開し、またファイヤーボールを連射する。
ファイヤーボールを連射しながら、素早さを増す魔法のことを思い出し、そのことを念じたところ、連射速度は上がらなかった代わりに、アイスウォールがなかなか壊れない。
いままで10数発連射したところでアイスウォールが破壊されていたが、今回は、……。
20数発連射したところでアイスウォールが破壊された。
今回アイスウォールが破壊された時の氷の破片の飛び散り方が目で追えた。
体感時間が1.5倍以上伸びている。
これはいい。
すぐさまアイスウォールを展開し、ファイヤーボールを連射する。
大巨人の顔は、かなり
俺は次の狙いを大巨人の持つバトンに切り替えて、ファイヤーボールではなくストーンバレットを連射してやった。
ファイヤーボールと合わせて40発ほど連射したところでアイスウォールが破壊された。
ストーンバレットの発射速度はファイヤーボールの2倍近くあるようだ。
最初からこっちでいけばよかった。
再度アイスウォールを展開してストーンバレットをバトンに向けて連射していたら、バトンそのものにはダメージがほとんど入っていないようだったが、バトンを握っていた大巨人の右手の指が砕けていき、大巨人はとうとうバトンを床に取り落としてしまった。
次のストーンバレットの狙いは大巨人の左手だ。
これで、床に落ちたバトンを拾うことはできないだろう。
それでも、大巨人は床に落ちたバトンを拾おうと左手を下げて前かがみになった。
左手に次々ストーンバレットが命中していき、大巨人の左手の指がどんどん削られて行く。
よーし。時間はかかるがこのままストーンバレットを撃ち続ければ大巨人を仕留められる。勝ったな。
ストーンバレットが大巨人に命中する音が大広間の中に響き続けている。
大巨人の左手は手首から先がなくなった。
次に狙うのはまた元に戻って大巨人の頭部だ。
目から光線とか口から火を噴くとかあり得るので、俺は大巨人の目に向けてストーンバレットを連射した。
大巨人はそれを嫌って手首から先がなくなった両腕で顔を覆った。
それならそれでかまわない。腕ごと持っていってやる!
バトンがなくなり、可能性がある顔からの遠距離攻撃も防いでいるので余裕だ。
俺はストーンバレットを撃ちながらタマちゃんに指示を出した。
「タマちゃん、床に転がってる大きなバトンが分かるか?」
リュックが震えた。
どこから見ているのか分からないがタマちゃんんは状況を完全に把握している。
「バトンを吸収してくれ」
リュックの中から金色の偽足が10数本バトンに向かって伸びていき、バトンが先端から偽足の中に取り込まれていく。
俺の加速された時間の中でもあっという間にバトンはタマちゃんに取り込まれた。
バトンがなくなれば悪あがきもできないだろう。ザマー見ろ。
大巨人の顔をガードする腕も俺のストーンバレットで削られてだいぶ細くなってきた。
もう一息。
とうとう、大巨人の顔をガードしていた前腕がなくなってしまい、ストーンバレットは次々に大巨人の顔に命中し、大巨人の頭部を抉り始めた。
大巨人の顔の造作はすぐになくなり、大巨人のまだ健在だった二の腕、上腕部がだらりと下がった。
さらにストーンバレットを撃ち込み続け、とうとう大巨人の頭部、鼻から上の部分が全消失したところで巨人は仰向けに後ろに倒れていき、後ろにあった椅子もろとも砕けてしまった。
大巨人と巨人が連携していたら、俺もあの何だかわからない攻撃を食らった可能性があるのだが、この部屋にいた巨人たちも大巨人もあまりに戦いに慣れていなかった。
結局のところこの大部屋もダンジョンが用意した
全ての巨人をたおしたのだが、予想に反して大広間の扉は開いてくれない。
自動ドアじゃないんだから、勝手に開かず、押すか引くかすれば開くかもしれない。
そもそも巨人がたおれたことと連動して扉が閉まったと勝手に俺が思っているだけで、扉自体は巨人関係なく元の位置に戻った可能性がないでもない。
転移でいつでも知っている場所に移動できる俺にとって扉はどうでもいいのだが、イベントが進行してくれないと困るぞ。
そう思って部屋の中を見回したら、砕けてしまった椅子の残骸の先で何かが赤く光っていた。
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